ESG経営とは?8社の事例から横断的に解説
ESG経営とは何か。8社の日本企業のESG指標データを横断的に分析し、環境・社会・ガバナンスの取り組み事例、財務パフォーマンスとの相関を解説します。
ESG経営とは
ESG経営とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの観点を経営に組み込み、長期的な企業価値向上を目指す経営手法です。
ESG関連用語の比較
| 概念 | 定義 | 視点 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| ESG | 投資家が企業を評価する際の非財務指標 | 投資家・経営者 | 上場企業 |
| SDGs | 国連が定めた17の持続可能な開発目標 | 社会全体 | 国家・企業・個人 |
| CSR | 企業の社会的責任活動 | 企業 | 全ての企業 |
| サステナビリティ | 持続可能性を重視した経営・活動 | 社会・環境 | 全ての組織 |
ESGの3つの柱
Environment(環境)
環境への配慮
- 気候変動対策(Scope1/2/3)
- GHG排出削減
- 再生可能エネルギー
- 資源循環・廃棄物削減
Social(社会)
社会への貢献
- 人権尊重
- ダイバーシティ・女性活躍
- 労働安全衛生
- 地域社会貢献
Governance(ガバナンス)
企業統治
- 取締役会の独立性
- 情報開示の透明性
- リスク管理体制
- コンプライアンス
データベース:日本の上場企業47社以上のIR/ESGレポートを分析中
掲載企業:47社(随時追加)
更新頻度:月次更新
ESG指標別 企業一覧
当サイトで分析した企業のESG指標を、特徴的な取り組みで分類しました。 各企業名をクリックすると詳細分析ページをご覧いただけます。
CO2削減目標・実績を開示している企業
具体的なCO2削減目標または実績を開示
女性管理職比率を開示している企業
女性管理職比率の数値を開示
- ZOZO(8人)
- 明治ホールディングス(30%)
- エーザイ株式会社(2.4%)
- メルカリ(26.0%)
- ヤマトホールディングス(10名)
- マネーフォワード(58.7%)
- ファーストリテイリング(50%)
- アサヒグループホールディングス株式会社(27%)
- ANAホールディングス(30%)
- サントリー(33%)
- SOMPOホールディングス株式会社(30%)
- SmartHR(23%)
- 花王(29.4%)
- アステラス製薬(17.6%)
- キリンホールディングス(18%)
- オムロン株式会社(18%)
- ソニーグループ(30.0%)
- パナソニックホールディングス(799人)
- バンダイナムコホールディングス(231人)
- 参天製薬(25.8%)
- イオン(50%)
- 本田技研工業(1.7倍 (対2021年3月期比))
- BASE(向上を課題と認識N/A)
ESG×人的資本×財務の相関分析【事例】
ESG経営は単独で存在するものではなく、人的資本経営や財務パフォーマンスと相互に影響し合います。 以下に、複数カテゴリのファクトを横断的に分析した事例を紹介します。
分析の視点: ESG目標の達成が人的資本指標や財務指標にどう影響しているかを追跡
エーザイ株式会社
ESG指標
ESG最高評価と社会的インパクトの定量化が連動しています。hhc理念に基づく途上国支援が外部ESG評価で高く評価され、投資家からの信頼獲得につながっています。
エーザイ株式会社の詳細分析を見る花王株式会社
ESG指標
環境技術への特許投資と健康経営を両立しています。女性管理職比率30%超は消費財メーカーとして先進的であり、ESG経営が「豊かな共生世界の実現」という理念と一貫しています。
花王株式会社の詳細分析を見るオムロン株式会社
ESG指標
グローバルESG評価とイノベーション評価を両立しています。障がい者雇用への先進的取り組みは「ソーシャルニーズの創造」という企業理念の体現であり、R&D投資が持続的競争優位を支えています。
オムロン株式会社の詳細分析を見るキリンホールディングス
ESG指標
CSV経営10年の継続がヘルスサイエンス事業という新たな収益源を創出。適正飲酒啓発は「酒類メーカーとしての責任」と「健康への貢献」を両立させる戦略的ESG施策。
キリンホールディングスの詳細分析を見るESG・人的資本・財務はなぜ連動するのか
環境目標がエンゲージメントを高める理由
環境目標を掲げる企業の従業員エンゲージメントが高いのは、単なる相関ではなく因果関係があります。現代の従業員(特にミレニアル・Z世代)は「自分の仕事が社会にどう貢献しているか」を重視します。カーボンニュートラル目標のような明確な環境コミットメントは、日々の業務に「意味」を与えます。
環境施策を「コスト」ではなく「採用・リテンション施策」として位置づけ直すことで、経営判断が変わります。
女性管理職比率とROEの相関
「女性管理職比率が高い企業はROEも高い」というデータは多くの研究で確認されていますが、「女性を登用すればROEが上がる」と短絡的に解釈するのは危険です。女性管理職比率が高い企業は、意思決定の多様性が高い、優秀な人材プールが広い、変化への適応力が高い、という特徴を持ちます。これらが複合的にROE向上に寄与しています。
数値目標だけを追うと「ポジションは与えるが権限は与えない」といった形式的な登用に陥りがちです。真の効果を得るには、意思決定プロセスへの実質的な参画が必要です。
ガバナンスは「攻め」の経営基盤
社外取締役比率が高い企業のESG評価が良好なのは、単に「チェック機能が働いている」からではありません。優秀な社外取締役は、異業種の知見を持ち込む、経営の盲点を指摘する、長期視点の意思決定を促す、という3つの役割を果たします。これらはすべて「攻め」の経営に直結します。
単純な社外取締役比率だけでなく、「社外取締役の専門性の多様性」「取締役会の実質的な議論時間」なども重要な評価ポイントです。
ESGは「良いことをしている企業」の証明ではありません。変化する事業環境において持続的に価値を創出できる組織能力の指標です。環境規制の強化、人材獲得競争の激化、ステークホルダー資本主義への移行—これらすべてに対応できる企業かどうかを、ESG指標は映し出しています。
環境指標データ一覧(E)
日本企業のCO2排出量削減目標、再生可能エネルギー比率などの環境指標データ。データベースから動的に取得しています。
傾向: 日本の大手企業は2030〜2050年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げています。特に製造業では自社事業所(Scope1+2)の早期ゼロ化に注力し、サプライチェーン全体(Scope3)への取り組みも加速しています。
| 企業名 | 指標 | 目標・実績 | 年度 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| エーザイ株式会社 | 温室効果ガス排出量 Scope 1+2 削減率 | 51.6 %削減 | 2024年 | 出典 |
| エーザイ株式会社 | 再生可能エネルギー導入率(外部購入電力) | 98.7 % | 2024年 | 出典 |
| 花王株式会社 | 事業場からの温室効果ガス排出量削減率(2017年比) | 42 %削減 | 2024年 | 出典 |
| 花王株式会社 | 再生可能電力比率実績 | 69 % | 2024年 | 出典 |
| 花王株式会社 | パーム農園までのトレーサビリティ | 88 % | 2024年 | 出典 |
| オムロン株式会社 | カーボンニュートラル達成目標年 | 2,050 年 | 2024年 | 出典 |
| キリンホールディングス | Scope1+2 CO2排出量削減率(2019年比) | 55 %削減 | 2024年 | 出典 |
| アステラス製薬 | カーボンニュートラル達成目標 | 2,030 年(Scope1+2) | 2024年 | 出典 |
| 参天製薬 | 2030年度GHG排出削減目標(Scope1+2) | 50 %削減(2019年度比) | 2024年 | 出典 |
| ソニーグループ | RE100達成目標年(自社事業での再エネ100%) | 2,040 年 | 2024年 | 出典 |
ガバナンス指標データ一覧(G)
社外取締役比率、取締役会構成などのガバナンス指標データ。
傾向: 東証プライム上場企業は社外取締役3分の1以上が求められており、先進企業では過半数を超えています。グローバル企業ほど社外取締役比率が高い傾向にあります。
ESG開示フレームワーク
ESG情報開示に使用される主要なフレームワークと規格を紹介します。
| フレームワーク | 正式名称 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| TCFD | 気候関連財務情報開示タスクフォース | プライム上場企業 | 気候変動リスク・機会の開示 |
| ISSB/SSBJ | 国際サステナビリティ基準 | 上場企業 | 統一されたサステナビリティ開示基準 |
| GRI | Global Reporting Initiative | 全企業 | 包括的なサステナビリティ報告基準 |
| SASB | サステナビリティ会計基準 | 業種別 | 業種固有のマテリアリティ基準 |
| CDP | カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト | グローバル企業 | 環境情報開示・スコアリング |
ESG経営の実践ステップ
- マテリアリティ特定
自社にとって重要なESG課題を特定し、優先順位付けを行う
- 目標設定
科学的根拠に基づいた中長期目標(SBTi等)を設定
- 体制構築
サステナビリティ委員会の設置、役員報酬へのESG指標連動
- 施策実行
CO2削減、ダイバーシティ推進、ガバナンス強化などの具体策を実行
- 情報開示
統合報告書、TCFD開示、サステナビリティレポートでの発信
社会・人的資本指標データ一覧(S)
女性管理職比率、従業員エンゲージメント、ダイバーシティなどの社会・人的資本指標データ。
傾向: 女性管理職比率は業種により大きな差があります。サービス・小売業は高い一方、製造業は相対的に低い傾向にあります。政府目標の30%達成に向け、各社が取り組みを強化しています。