非上場3,594社に、初めての政府指針 ─ ファミリーガバナンス・ガイダンスを読む
2026-07-30
2026年6月5日、経済産業省がファミリーガバナンス・ガイダンスを策定した。上場企業にはコーポレートガバナンス・コードがあったが、非上場の中堅ファミリービジネスに政府指針は存在しなかった。その空白に何を置き、何をあえて置かなかったのかを読む。
1. 上場にはコードがあった、非上場にはなかった
2026年6月5日、経済産業省は「ファミリーガバナンス・ガイダンス」を策定・公表した。2025年2月に策定された「中堅企業成長ビジョン」で、ファミリービジネスの中堅企業等が長所を生かしつつ短所となるリスクに対処しながら成長を目指すための規範を策定することとされたのを受けたもので、2025年3月に「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」が立ち上げられ、計4回の議論を経ての公表である。
この文書の位置づけは、成長ビジョンの一文がそのまま説明している。上場企業についてはコーポレートガバナンス・コード等の指針類が一定程度整備されてきた一方、ファミリー等がファミリービジネスに関する意思決定を行う仕組みに関する政府指針は存在せず、ノウハウが十分に浸透していない、というのがガイダンス策定前の状況だった。
空白が生じた構造も同じ資料が示している。中堅企業は中小企業に比して財務健全性が高いために金融機関からのデットガバナンスが働きづらく、大企業に比してエクイティガバナンスも働きづらい。独立型中堅企業の過半は非上場で、上場していてもアナリストカバレッジが低い。さらに創業者一族の自己資金のみで事業運営を行う企業では、金融機関や投資家からの関与が薄く、外部からの牽制機能が働きにくい。借入でも株式でも外から見られない領域が、そのまま指針の空白と重なっていた。
埋まった空白
同じ問いに、片方だけ答えがあった
上場企業
後継者計画は取締役会が主体的に関与し監督する(CGコード補充原則4-1③)
非上場中堅
同じ問いに答える公的文書がなかった
2026年6月5日、ガイダンスがここに置かれた
上場企業
株主・投資家によるエクイティガバナンス
中堅企業
財務健全性が高く、デットもエクイティも効きにくい
独立型中堅企業の過半は非上場
上場企業
コーポレートガバナンス報告書という定型の器
ファミリービジネス
外から見られる機会そのものが少ない
自己資金経営では牽制機能が働きにくい
上場企業側の規定と並べると差は具体的である。コーポレートガバナンス・コードでは、取締役会が経営理念等や経営戦略を踏まえてCEO等の後継者計画(サクセッションプラン)の策定・運用に主体的に関与し、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう監督を行うことが求められてきた(2026年4月3日公表の改訂案では改訂補充原則4-1③。同年7月21日に確定した改訂版では補充原則が廃止され原則単位に再編された)。「後継者を誰がどう決めるか」という同一の問いに対して、非上場の中堅ファミリービジネスには参照先がなかった。今回のガイダンスは、その参照先を初めて用意したものと読める。
2. あなたの会社は対象か ── 3,594社、921社、そして「自認する企業」
ガイダンスは主対象を明示している。主に、非上場の中堅規模のファミリービジネスを念頭に置いており、ただし上場・非上場を問わず、規模の大小に関わらず全てのファミリービジネスにとっても重要であり、特に事業承継時等の節目においてより重要になる、という書き方である。
具体的な母数も参考資料に置かれている。中堅企業約9,000社(非上場中堅約7,300社、上場中堅約1,700社)のうちファミリービジネスに該当するのが非上場中堅3,594社と上場中堅921社で、これが「ファミリーガバナンスの主な想定活用対象」と名指しされている。参考として大企業は約1,300社、中小企業は約336万社(者)。より広く見れば、2022年版ファミリービジネス白書では我が国企業の96.5%がファミリービジネスを営む企業とされている。
もっとも、この母数は「適用対象」ではない。パブリックコメントで議決権割合や経営関与度による複数類型を示すよう求められた際、経済産業省は、記載内容はファミリービジネスの定義に該当する全ての企業が適用すべき性質のものではなく、ファミリービジネスであると自認する企業において導入を検討してもらうものとして策定しており、あえて定量基準による定義を示していない、と回答している。線引きは自己申告に委ねられた。
立場別に見た、このガイダンスとの距離
| 立場 | 判定の目安 | 関心の置きどころ |
|---|---|---|
| 非上場の中堅ファミリービジネス | 従業員数2,000人以下(中小企業者を除く)。該当は3,594社 | 主対象。5つの柱とチェックリストがそのまま設計図になる |
| 上場している中堅ファミリービジネス | 上場中堅約1,700社のうちファミリービジネスは921社 | CGコードとの二層構造。コードが扱わないファミリー内の合意事項が補完される |
| 中小企業・大企業のファミリービジネス | 規模の大小は問われない | 「事業承継時等の節目」で参照される文書として位置づけられている |
| 金融機関・弁護士・税理士・公認会計士・コンサルタント | 支援者として第3章に明記 | 第三者の立場で助言する役割。研修等での活用が今後検討される |
出典:ファミリーガバナンス・ガイダンス p.4 / 同 第3章(支援者の役割)p.17 / 参考資料 p.1 / パブリックコメント結果 別紙 p.1
3. 理念は「ある」、書いていない ── 明文化24%、家族への伝達11%
ガイダンスが第2章の筆頭に「理念・価値観・ビジョン等」を置いた背景には、日本のファミリービジネスに固有のギャップがある。本文は、日本では諸外国と比べてファミリーのパーパス・価値観を明文化し定期的かつ意識的に伝達しているファミリービジネスが少なく、ガバナンスポリシーが整備されておらずガバナンスルールの文書化も進んでいない傾向にある、と記している。
数字で見ると、この差は「持っているかどうか」ではなく「書いているかどうか」に集中している。PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025(日本127者、世界1,325者)では、株主家族がファミリービジネスとしての価値観を有する割合は日本62%・世界83%だが、価値観が明文化され、あるべき姿が定義されている割合は日本24%・世界64%、定義された行動規範が存在する割合は日本20%・世界64%、文書化された家訓が存在する割合は日本10%・世界57%まで開く。
さらに際立つのがパーパスの扱いである。明確なパーパスがある割合は日本80%・世界80%で完全に同率。そのうち定期的に社内で積極的に伝達されている割合は日本69%・世界64%、社外では日本52%・世界45%と、いずれも日本が上回る。ところが定期的に家族に積極的に伝達されている割合だけが日本11%・世界38%と逆転する。パーパスは持っているし、社内にも社外にも語っている。語っていない相手が、株式と経営権を将来受け取る家族だけ、という構図である。
理念は「ある」が「書かれていない」──日本と世界のギャップ
ガイダンスが理念等に与えた役割は、経営理念一般の話にとどまらない。理念等はファミリービジネスの企業文化や経営方針に強い影響を与え、日々の判断の拠り所となるばかりでなく、関係するすべての者が一つの方向を向く「羅針盤」となる、として、明確にし、文書化したうえで共有することが推奨されている。同時に、明文化された理念等に固執することなく、事業環境や時代の変化に対応して経営者が戦略的に新たな理念等を打ち出せる柔軟性を確保することも推奨されており、過度に保守的にならない姿勢が重要とされる。「書け、ただし縛られるな」という二段構えになっている。
書き方についても具体的な指摘がある。策定・明文化プロセスに関与したファミリーメンバーと関与していないメンバーの間では理解度・共感度に差が生じやすいため、多くのメンバーが参加し、完成前に承継する側(次世代等)の意見を十分に考慮することが推奨される。加えて、成功体験や理念だけでなく、過去の経営危機や創業時の苦労といった歴史をあえて次世代に伝えることで、承継への責任感や覚悟を醸成し慢心を防ぐという選択肢も挙げられている。参考資料はその実例として、月桂冠に大正10年から伝わる「注意帳」──「失敗を繰り返さざるよう注意すべき事項」「失念しやすき件」「将来改善を要する件」を率直に記入する帳面──を挙げている。
理念を外に出すこと自体が装置として働いた事例も収録されている。理念(家訓)を自社ホームページ等で公開することで自らを律することにもつながり、結果として社会的信用の確保にもつなげている、という食品製造業の例である。透明性の確保についてガイダンスは、社会から「見られている」という意識がガバナンスを高めることにつながる、と端的に書いている。
4. 「うちは揉めない」88%という前提が、備えを不要にしていた
文書化が進まない理由を、参考資料はもう一段掘り下げている。家族の紛争が「全く発生しない・ほとんど発生しない」と回答した割合は日本88%・世界52%。「定期的に発生する・時々発生する」は日本12%に対し世界は48%である。ビジネスに影響を与える主な課題として「ガバナンス」を挙げた割合は日本20%・世界29%、「紛争管理」に至っては日本5%・世界22%にとどまる。
この認識は、備えの薄さと表裏で対応している。ガバナンスポリシーの整備状況は、家族憲章が日本9%・世界26%、株主契約が9%・48%、家族の入社・退社のルールが8%・22%、紛争解決メカニズムが2%・18%、家族の雇用方針が9%・25%。そして「いずれのポリシーもない」が日本39%・世界15%である。
ガバナンスポリシーの整備状況──「いずれもない」が39%
紛争が起きないから備えがないのか、備えがないから紛争が見えていないのか。ガイダンス本文の説明はどちらでもなく、時間軸の問題として整理している。ファミリービジネスは「家族」「所有」「経営」の3つの要素で特徴付けられ、創業期には三者が一体化しているが、企業が成長する過程で徐々に分離し、関係性が複雑化するためガバナンス上のリスクが顕在化しやすくなる、というスリーサークルモデルの説明である。内包される構造的リスクとして挙げられているのは、経営者の独善的行動や成長意欲の減衰(エントレンチメント)、お家騒動、後継者の経営能力不足の3つ。いずれも創業期には存在せず、成長の副産物として現れる。
自己認識のずれも指摘されている。競争優位性として「長期的な視点」を挙げる割合は日本65・世界63、「柔軟性・機敏さ」は52・57、「共有された価値観・カルチャー」は51・58で、上位3項目は日本と世界でほぼ一致する。ところが非ファミリービジネスと比較した自社の信頼性を「高い・やや高い」とする割合は日本50%・世界74%、ファミリービジネスの役割として「持続可能なビジネス社会をリードする」を挙げる割合は日本34%・世界50%にとどまり、参考資料は日本ではファミリービジネス自身がその特長・競争優位性を十分に認識できていない可能性を指摘している。
5. 5つの柱と、語尾で決まる優先度
第2章の構成は5つの柱で、順序に意味がある。前提となる理念・価値観・ビジョン等(2.1)を明確にしたうえで、ファミリーとしての意思決定の仕組み(2.2)を整え、ファミリービジネスへの関与方針(2.3)を定める。所有と経営の承継にあたっては早期に承継計画を策定し計画的な後継者選定・育成を行い(2.4)、従業員や地域社会等のステークホルダーへの情報発信(2.5)で信頼基盤を構築する、という流れである。
この文書を読むうえで最も実務的な鍵は、優先度が語尾で表現されている点にある。特に重要な事項は「~推奨される」、重要な事項は「~重要である」、取組の選択肢となり得る事項は「~考えられる」と書き分けられている。番号や記号による優先度表示はなく、文末を読まないと重みが分からない設計になっている。
優先度は語尾で表現される
| 取組事項 | 本文の表記 | チェックリストのラベル | 本文での例 |
|---|---|---|---|
| 特に重要な事項 | 「~推奨される」 | 推奨 | 理念等を明確にし、文書化したうえで共有する/ファミリーの範囲を定義する/早期に承継方針を定める |
| 重要な事項 | 「~重要である」 | 重要 | 法的な仕組みの導入可否を検討する/ファミリー集会等の運用ルールを予め策定する/人事的な処遇に関する公私の整理を行う |
| 取組の選択肢となり得る事項 | 「~考えられる」 | 選択 | 種類株式・株主間契約・信託を用いる/社外取締役や社外監査役を置く/ファミリー株主に議決権行使の教育を行う |
出典:ファミリーガバナンス・ガイダンス p.5 表:本ガイダンスにおける取組事項に関する整理 / チェックリストのラベルはチェックリスト
チェックリストは、この5分類と3段階のラベルをそのまま一覧に落としたもので、各項目が「~している」という完了形で書かれ、自社の整備状況を点検できる形式になっている。
ただし全項目の整備は求められていない。ガイダンスは、これらの項目すべてについて整備する必要はなく、各社の株主構成やステークホルダーとの関係等を総合的に勘案し、自社に最適な形を検討することが推奨される、と明記する。さらに、制度の前段にある条件として、ファミリー内での信頼関係の構築が前提であり、日ごろからの対話・交流、とりわけ世代間(親子間)のコミュニケーションが重要であるとも書かれている。定めたルールや取組は、時代や環境の変化に応じて不断の見直しが必要とされる。
6. 憲章の中身は「年4回」「1家族1議決権」まで降りている
ガイダンスの特徴は、抽象的な原則の提示にとどまらず、運用の粒度まで事例が降りている点にある。
まずルールの形式が二層で整理される。ファミリー内のルールには、ファミリー憲章等のソフトなルールと、株主間契約や信託契約等の法的拘束力を有するハードなルールがあり、両者の利点・欠点と活用の目的を考慮して適切な形式を選択することが推奨される。法的な仕組みは実効性が高まる一方、硬直的になる可能性がある点に留意が必要とされる。ファミリー憲章等(ファミリー宣言、ファミリー協定を含む)は、ファミリーの理念、ファミリーメンバーの行動規範、株式承継の方針等を文書化したものと定義されている。
憲章に書く項目の例も列挙されている。用語の定義(ファミリーメンバーの範囲、「ファミリー集会」の定義等)、制定目的、ファミリーのイベント、ファミリー集会等の役割・開催頻度・運営方法・決議方法、議決権行使方針、役員選解任・入社方針、教育方針、株式承継方針、株式売却ルールである。
運用例はさらに具体的である。ファミリー集会を年4回(3月・6月・9月・12月)開催する。各家代表者で構成されるファミリー評議会を年4回開催して重要事項を協議し、全メンバーが参加する年2回のファミリー総会で最終決定する。決議方法は全員一致を原則とし、至らない場合は議長が決定する。多数決の際は持株数に関わらず1家族1議決権とする。ファミリー憲章に関する決議は全員の同意、ファミリー株主間契約の内容に関する決議は3分の2超の同意を要する。持株比率と議決権を意図的に切り離す設計が、事例として明記されている点は目を引く。
こうした設計が実名で公開されている数少ない例が、参考資料に収録されたオタフクホールディングス佐々木家の家族憲章である。株は8家が均等に持つ、8家族から1人ずつ後継者(社員・株主)を選出、給与は「基本給(平等)+役職給(公平)」、退職金は「基本額(平等)+貢献給(公平)」、65歳で現役を退き顧問・相談役に就任、年4回のファミリー会を開催、多数決で決議しない(全員が納得するまで議論)、グループ企業の取締役会の半数以上を佐々木家出身者以外とする、後継者は世間が決める(基準は「何を変えたか」「何を始めたか」「誰を育てたか」)という9項目である。
関与方針の側では、境界の引き方が繰り返し問われる。ファミリーが経営にどこまで関与し、どこから関与しないのか、その範囲と役割を明確に定めることが重要とされ、特にファミリーメンバーが関わらない範囲を設定することが挙げられている。入退社のルールとして、一世代内において入社することができる人数を定めたり、入社に一定の要件を課したりすること、役員登用に追加の要件を課すことも選択肢として示され、ファミリー従業員と他の従業員との間に不合理な処遇差が生じないようにすることが貢献意欲と長期的な成長につながるとされる。事例では、1ファミリーから各世代1名のみとする、入社希望時にファミリー集会の承認を要する、入社後の処遇・人事にファミリーは関与しない、といった運用が挙げられている。取締役の選任では、ファミリー以外の者を含む選定委員会で候補者を最終決定する(ファミリーメンバー内のみで決定しない)、取締役会の半数以上をファミリー以外の者から構成する、という例が示されている。
人的資本の観点で見落とせないのは、この境界設計が採用市場に接続されている点である。ガイダンスは、ファミリービジネス特有の強みとファミリーガバナンスが機能していることを労働市場にも示すことで、優秀な人材の確保・定着につながると述べる。従業員・役員に対しては、ファミリーメンバーとそれ以外の者との間で不合理な待遇差が生じていないことや、登用方針が妥当であることを示すことが挙げられ、役員登用方針を明示したことで登用の機会が確保されていることが明確になりモチベーション向上につながった、という機械製造業・不動産業の事例が収録されている。
7. 承継は3年目から効いてくる ── 16.8歳の若返りと+2.1ポイント
ガイダンスが承継を急ぐ理由は、参考資料の実証データが説明している。
事業承継による経営者の交代後、経営者の年齢は平均16.8歳若返る(交代前平均71.2歳→交代後平均54.4歳)。東京商工リサーチのデータベースに登録された約157万社のうち、2023年から2024年に代表者が交代した6万6,862社を対象とした分析である。そして経営者の年齢は行動と相関する。「新しい取組を行っていない」と回答した割合は70歳以上の経営者で28.8%と最も高く、59歳以下では17.2%。「新たな販路開拓・取引先拡大」は59歳以下42.1%に対し70歳以上34.8%、「新商品・新サービスを開発」は59歳以下28.8%に対し70歳以上20.7%である。
承継とファミリー経営をめぐる4つの数値
ただし承継の効果はすぐには出ない。事業承継を実施した企業の承継後9年間の売上高成長率を同業種平均値との差分で見ると、1年後-0.2ポイント、2年後-0.2ポイントと下回り、3年後に+0.1ポイントで転じ、以降4年後+0.4、5年後+0.7、6年後+1.0、7年後+1.2、8年後+1.7、9年後+2.1と拡大していく。
承継後の売上高成長率(同業種平均値との差分)
回収に3年かかる投資は、期限が迫ってからでは始められない。ガイダンスが、事業承継の遅れや不確実性そのものがファミリービジネスの成長を阻害する大きな要因になると述べ、早期に方針を定めることを推奨しているのは、この時間差と対応している。承継方針の選択肢も、ファミリー内で所有と経営の両方を承継するのか、経営を外部人材に任せて所有のみを維持するのか、経営のみを維持して株式を外部に移すのか、上場をめざすのか非上場を維持するのか、という形で並列に提示されている。後継者選定に際しても、候補をファミリー内から選ぶことと、優れた能力を持つ他の従業員を含めることの双方を有力な選択肢として検討することが重要とされる。
承継後の設計にも踏み込む。先代と後継者が「適度な距離感」を保つために、承継後の先代の役割を、先代への敬意を根底にあらかじめルール化することが推奨される。事例では、経営方針や投資判断等の次世代に影響がある事項には先代は口を出さず後継者に一任し、地域社会での要職といった関係性が重要な活動では承継後も協力する、あるいは65歳で現役(社長)を退き経営から離れる方針を事前に決めている、といった運用が挙げられている。
所有の側では、株式の集約と分散がトレードオフとして提示される。適度な分散はファミリービジネスへの参画意識を醸成し経営者を監視する役割を担い得る一方、過度な分散は経営の不安定化を招くリスクがあるとされ、最適な株主構成を不断に検討することが推奨されている。その前提として、株式は単なる経済的価値を持つ「財産」であると同時に会社の支配に関わる「経営権」でもあり、後継者だけでなく将来株式を保有する可能性のあるメンバーにも会社の歴史や理念、株主としての役割や責任について対話を重ねる機会を持つことが挙げられている。理念の共有が、そのまま持株構造の安定装置として位置づけられている。
8. 政府があえて引かなかった線 ── 定義せず、義務化せず、拘束力なし
このガイダンスの性格を最も鮮明に示すのは、本文よりもパブリックコメントへの回答である。
意見募集は2026年3月30日から4月30日まで実施され、提出意見数は21。別紙「ご意見の概要と回答」には81項目の意見と回答が整理されており、結果の公示日はガイダンス本体の公表と同じ2026年6月5日である。
寄せられた要望の多くは「もっと踏み込め」という方向だった。そして経済産業省は、そのほとんどを引き受けなかった。法的位置づけを明記するよう求められた際には、第2章冒頭の記述を引いたうえで「拘束力はありません」と明言している。形式的なガバナンス整備を避けるため第三者レビューを義務化すべきという意見には、各社の事情により最適な形が異なる(百社百様である)ことから義務化は検討していないと回答した。独立した監督機関や第三者評価の導入を必須事項として明記すべきという意見にも、必須事項とはせず、透明性確保等の観点から外部人材の活用を事例として示すにとどめている。用語の定義集を設けるべきという意見にも、各用語の使用方法は各社の事情により異なることから定義を設けず、各社の事情等に応じて読み替えてほしいと答えている。
線引きの基準として繰り返し使われたのが「ファミリービジネスに特有か」である。ESGの独立章化、デジタル・AI等の技術変化への対応、レピュテーションリスクの評価枠組み、経営層の任期制、データ・根拠に基づく意思決定、外部人材の登用基準や比率目標といった要望に対して、経済産業省は一貫して、本ガイダンスはファミリー内およびファミリーとステークホルダーとの間で合意する事項を中心に整理しており、ファミリービジネスに限定されない企業経営に関する事項は対象外である、と回答した。目的の範囲も絞られている。「ファミリーのためのガバナンス」という視点を補足すべきという意見には、政府の経済産業政策の一環として企業の維持・成長を目的として策定していることから、ファミリーの持続・繁栄の観点は対象としていないと明示した。
一方、実際に反映された要望もある。海外ガイドラインとの比較を付録として追加すべきという意見に対して、参考資料の16〜18頁に海外の事例を追加した、と回答している。追加された内容は、ドイツが2004年に策定した世界初の規範「GOVERNANCE CODE FOR FAMILY BUSINESSES」(現在第4版)、シンガポールのスチュワードシップ・アジアが2018年に策定した「ファミリービジネス・スチュワードシップ原則」(7原則)、世界銀行グループIFCのFamily Business Governance Handbookなどである。日本の指針は、この系譜からは20年以上遅れて登場したことになる。
パブリックコメント81項目
引き受けた要望と、「百社百様」で断った要望
受け入れ・反映された
- 海外ガイドラインとの比較 → 参考資料16〜18頁に海外事例を追加
- チェックリストの作成 → ガイダンスと同時公表
- 事例の充実・ガイダンスの改訂 → 今後の検討事項として明記
- 支援者団体と連携した研修 → 普及促進策として検討
「百社百様」を理由に見送られた
- 定量基準によるファミリービジネスの定義(議決権割合等)
- 章冒頭の用語定義集
- 第三者レビューの義務化/独立監督機関の必須化
- 外部人材の登用基準・比率目標の提示
- ESG・AI・レピュテーションリスクの章立て
- 「ファミリーの持続・繁栄」を目的に含めること
ここから読み取れる設計思想は一貫している。定義を与えれば対象外の企業が生まれ、義務を課せば形式的な整備を招く。だから政府は、線を引く代わりに語彙と選択肢を配った。名称の選択にもそれは表れていて、「ファミリービジネス」「ファミリーガバナンス」という言葉を用いたのは、同族企業がこれまでネガティブなイメージを持たれることも多かったことから、よりポジティブな印象とする観点による、と回答されている。実際、ガイダンス本文も冒頭で、稀な負のケースのみに着目した報道の結果としてネガティブなイメージを持たれることもあった、と書き起こしている。
裏を返せば、この文書には遵守を測る仕組みがない。コーポレートガバナンス・コードのコンプライ・オア・エクスプレインに相当する外形的な説明義務も、報告先も存在しない。実効性を担保するのは、チェックリストを開いて自社の欄を埋めるかどうか、という各社の判断だけである。
9. 次に動くのは事例集と税制 ── 何を見ておくか
拘束力を持たない文書が実務を動かすとすれば、それは今後の追加施策を通じてになる。パブリックコメントの回答には、その手がかりが残されている。
公表後に見ておくポイント
このガイダンスが実務に効くとしたら、どの経路か
事例集の作成とガイダンス改訂
国内外の成功・失敗事例の対比、更新頻度の明記、ガバナンス導入効果の定量的説明──いずれも「事例の収集等を行った上で、ガイダンスの改訂または事例集の作成等を検討」と回答された。現行版は事例が業種名(【食品製造業】等)までの匿名記載にとどまる
事業承継税制・相続税制との連動
実効性を高める観点から事業承継税制や相続税制度等との政策的連動を求める意見に対し、「必要に応じ制度設計を検討」と回答。中堅企業成長ビジョンも、企業価値向上のディスインセンティブとなる制度の見直しに言及している
支援者団体を通じた浸透
金融機関、弁護士・税理士・公認会計士、コンサルタント等の団体と連携した研修等を検討するとされた。第3章は支援者に、第三者の立場でファミリーガバナンスを提案する役割を明記している
上場ファミリービジネスでの二層運用
上場中堅921社は、CGコードのコンプライ・オア・エクスプレインとこのガイダンスの両方が視野に入る。コードが扱わないファミリー内の合意事項をどちらの文書で説明するかは、各社の整理に委ねられている
現時点で確かなのは、需要側の温度が示されていることである。PwCサーベイでは、ファミリーガバナンスに関する規範・ガイドラインの導入について「喫緊の課題であるため早期に導入されるべき」16%、「中長期的視点で定着されるべき」33%と約半数が導入に前向きで、「税制面等のインセンティブがあれば前向きに考える」が45%、「日本のファミリービジネスには必要ない」は7%にとどまる。規範に盛り込むべき内容の第1位は承継プラン(全体68%、非上場71%、上場54%)で、公私混同の防止が45%(非上場40%、上場67%)、家族内の意思決定の場が40%と続く。
公表された文書は、この要望とおおむね対応している。承継プランには2.4が、意思決定の場には2.2が、公私混同の防止には2.3の「公私を整理し、法令遵守は当然のこととした上で、社会通念に照らして公正・公平な経営」という記述が充てられた。一方で、回答者の45%が条件に挙げた税制面のインセンティブは、今回の公表物には含まれていない。
ガバナンスの整備が最終的に何のためかという点について、ガイダンスの答えは明快である。ファミリーガバナンスは、コーポレートガバナンスを踏まえた上で、ファミリー内における協働、およびファミリーとステークホルダーとの協働を促し、結果として事業を継続・承継し、持続的に成長するための仕組みである。その出発点に置かれたのが、羅針盤としての理念の明文化だった。日本のファミリービジネスの80%はすでにパーパスを持っている。書いていないだけである。
出典(61件)
- 2025年2月に策定された「中堅企業成長ビジョン」において、ファミリービジネスの中堅企業等が、長期志向や迅速な意思決定といった長所を生かしつつ、短所となるリスクに適切に対処しながら成長を目指すためのファミリーガバナンスを構築するための規範を策定することとされました。 規範策定の根拠は2025年2月策定の「中堅企業成長ビジョン」(「ファミリーガバナンス・ガイダンス」の公表について(経済産業省ニュースリリース))
- こうした背景を踏まえ、ファミリービジネスが、その長所を活かしつつ、課題となり得るリスクに適切に対処することで、持続的な成長、社会的信頼の醸成、日本経済・地域経済への貢献につなげることを後押しすべく、2025年3月に「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」を立ち上げ、計4回の議論を経て、本ガイダンスの策定に至った。(策定日:2026年6月5日) 2025年3月に研究会を立ち上げ、計4回の議論を経て2026年6月5日に策定(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.5)
- ガバナンスを整備する上で、上場企業については、コーポレートガバナンス・コード等の指針類が一定程度整備されてきたが、ファミリー等がファミリービジネスに関する意思決定を行う仕組み(以下「ファミリーガバナンス」という。)に関する政府指針は存在せず、ファミリーガバナンスのノウハウが十分に浸透していない。(中堅企業成長ビジョンより抜粋) 上場にはCGコードがあったが、ファミリーガバナンスの政府指針は存在しなかった(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.3)
- 中堅企業の多くは、中小企業に比して財務健全性が高いために金融機関からのデットガバナンスが働きづらく、また、大企業に比して株主・投資家からのエクイティガバナンスも働きづらく、ガバナンスの機能不全が顕在化する事例も見られる。(脚注:独立型中堅企業の過半は非上場企業であり、上場企業であってもアナリストカバレッジが低い。)(中堅企業成長ビジョンより抜粋) 中堅企業はデットガバナンスもエクイティガバナンスも働きにくい(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.3)
- ファミリービジネスの中には、創業者や創業者一族の自己資金のみで事業運営を行うことで、金融機関や投資家からの関与が薄い企業もあり、外部からの牽制機能が働きにくく、結果としてガバナンスの機能不全に陥る事例も見られる。 自己資金経営ゆえに外部からの牽制機能が働きにくい(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.4)
- 改訂補充原則4-1③では、取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(サクセッションプラン)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきとした。 CEO後継者計画(サクセッションプラン)への取締役会の主体的関与(コーポレートガバナンス・コード(改訂案), p.15)
- 本ガイダンスは、主に、非上場の中堅規模のファミリービジネスを念頭に置いている。ただし、本ガイダンスの内容は、上場・非上場を問わず、また、規模の大小に関わらず、全てのファミリービジネスにとっても重要である。特に、事業承継時等のファミリーやファミリービジネスにとっての節目において、より重要となる。 主対象は非上場の中堅規模。ただし上場・非上場を問わず重要(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.6)
- ファミリーガバナンスの主な想定活用対象は、中堅企業約9,000社(非上場中堅約7,300社、上場中堅約1,700社)のうちファミリービジネスに該当する、非上場中堅3,594社と上場中堅921社である。参考として、大企業は約1,300社、中小企業は約336万社(者)。中堅企業は従業員数2,000人以下の会社・個人(中小企業者を除く)、大企業は従業員数2,000人超の会社・個人。 想定対象は非上場中堅FB 3,594社+上場中堅FB 921社(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.2)
- 日本の全企業のうち、9割以上がファミリービジネスであると言われている。2022年版ファミリービジネス白書(後藤敏夫他)では、我が国企業の96.5%がファミリービジネスを営む企業とされている。 日本企業の96.5%がファミリービジネス(ファミリービジネス白書2022年版)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.3)
- 「ファミリービジネスの定義が曖昧であるため、議決権割合・経営関与度などの観点から複数類型を示すべき」との意見に対し、経済産業省は「ファミリービジネスの定義について、議決権保有割合等の定量基準による定義付けが行われることがあると承知していますが、本ガイダンスに記載の内容は、ファミリービジネスの定義に該当する全ての企業が適用すべき性質のものではなく、ファミリービジネスであると自認する企業において、導入をご検討いただくものとして策定しており、あえて定量基準による定義を示していません」と回答した。 定量基準による定義は「あえて」示していない。自認する企業が使うもの(ファミリーガバナンス・ガイダンス(案)に対するパブリックコメントの結果について, p.2)
- 日本では、諸外国のファミリービジネスと比べて、ファミリーのパーパス・価値観を明文化し、定期的かつ意識的に伝達しているファミリービジネスが少ない等、ガバナンスポリシーが整備されておらず、ガバナンスルールの文書化も進んでいない傾向にある。(脚注:「PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025」(回答者数:世界全体1,325社。うち日本127者。)によると、価値観が明文化し、あるべき姿を定義している割合が、世界全体では64%であるのに対し、日本では24%であった。また、明確なパーパス(目標・存在意義)を有する割合は80%(世界全体:80%)であるものの、そのうち、定期的に家族に伝達している割合は11%(世界全体:38%)であった。) 価値観の明文化は日本24%/世界64%、家族への定期的伝達は11%/38%(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.4)
- PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025(日本127者、世界1,325者)における「ファミリーの価値観」の整備状況(日本/世界)は、株主家族がファミリービジネスとしての価値観を有する 62%/83%、価値観が明文化・あるべき姿が定義 24%/64%、定義された行動規範が存在 20%/64%、文書化された家訓が存在 10%/57%。日本では、グローバルと比べて、株主家族が「ファミリービジネスとしての価値観」を有する割合が高いものの、価値観を明文化している割合は低く、行動規範も定義・明文化されていない。 価値観は「持っている」62%だが「明文化」24%・「家訓の文書化」10%(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.12)
- PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025における「パーパスについて」の回答(日本/世界)は、明確なパーパス(目的・存在意義)がある 80%/80%。明確なパーパスがある企業(日本102社、世界1,064社)のうち、定期的に社内で積極的に伝達されている 69%/64%、定期的に社外で積極的に伝達されている 52%/45%、定期的に家族に積極的に伝達されている 11%/38%。日本ではパーパスが(社外)家族に共有されていない。 パーパス保有は世界と同率80%。社内伝達も上回るが、家族への伝達だけ11%(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.12)
- ファミリーの理念・価値観・ビジョン等(以下、「理念等」とする。)は、ファミリービジネスの企業文化や経営方針に強い影響を与え、日々の判断の拠り所となるばかりでなく、ファミリービジネスに関係するすべての者が一つの方向を向く「羅針盤」となる。持続的成長のためには、理念等を明確にし、文書化したうえで共有することが推奨される。 理念等は「羅針盤」。明確化・文書化・共有が推奨される(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.8)
- 明文化された理念等に固執することなく、事業環境や時代の変化に対応し、経営者が戦略的に新たな理念等を打ち出せる柔軟性を確保することが推奨される。長期的な視点での成長を目指し、理念等に込められた想いや中心となる要素を特定したうえで、過度に保守的にならない姿勢が重要である。 明文化した理念に固執せず、新たな理念を打ち出せる柔軟性の確保も推奨(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.8)
- 明文化プロセス:理念等の策定・明文化プロセスに関与したファミリーメンバーと関与していないファミリーメンバーの間では、理解度・共感度に差が生じやすい。より浸透しやすい理念等とするために、策定・明文化プロセスにおいて、多くのファミリーメンバーが参加し、完成前に、承継する側(次世代等)の意見を十分に考慮することが推奨される。 策定プロセスに関与したか否かで理解度・共感度に差が出る(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.8)
- 歴史と苦労:成功体験や理念だけでなく、過去の経営危機や創業時の苦労といった歴史をあえて次世代に伝えることで、事業を承継することへの責任感や覚悟を醸成し、慢心を防ぐことが考えられる。 成功体験だけでなく過去の危機・苦労をあえて次世代に伝える(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.8)
- 日本では、古くから顧客や社会に対する貢献を第一とする経営理念が浸透している。虎屋では、3つの経営の方法論(「いどむ」=市場・競争・技術の変化、経営体制の変革・社内の常識への挑戦、「かかわる」=お客様はもとより取引先・従業員等との互恵的関係を構築・維持、「こだわる」=些細なことであっても当事者として妥協・許容できない一線を守り通す)を統合し、虎屋価値を高度化させつつ進化させることで、5世紀にわたる長期の存続を実現してきた。また、月桂冠では、古くからの「気づきの共有の文化」により、400年近い歴史の中で持続的な成長をしてきた(大正10年の「注意帳」には「失敗を繰り返さざるよう注意すべき事項」「失念しやすき件」「将来改善を要する件」を率直に記入することとされている)。 虎屋の「いどむ・かかわる・こだわる」と月桂冠の大正10年「注意帳」(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.15)
- 理念等の発信を通じ経営陣が自らを律する機会となった事例:理念(家訓)を自社ホームページ等で公開することで、自らを律することにもつながり、結果として社会的信用の確保にもつなげている。【食品製造業】 家訓のHP公開が「自らを律する」装置として働いた事例(食品製造業)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.9)
- 透明性の確保:ファミリー株主をはじめ従業員、地域社会・取引先等のステークホルダーに必要な情報開示を行い、情報の非対称性を解消することで透明性を確保することが重要である。社会から「見られている」という意識が、ガバナンスを高めることにつながる。 社会から「見られている」という意識自体がガバナンスを高める(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.16)
- PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025において、家族の紛争が「全く発生しない・ほとんど発生しない」と回答した割合は日本88%/世界52%、「定期的に発生する・時々発生する」は日本12%/世界48%。また、ビジネスに影響を与える主な課題として「ガバナンス」を挙げた割合は日本20%/世界29%、「紛争管理」は日本5%/世界22%。日本では家族の紛争を想定している割合が低い。 「紛争はほとんど起きない」日本88%/世界52%。紛争管理を課題とするのは5%(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.13)
- PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025における「ガバナンスポリシーの整備状況(一部抜粋)」(日本/世界)は、家族憲章 9%/26%、婚前契約 3%/26%、株主契約 9%/48%、家族の入社・退社のルール 8%/22%、紛争解決メカニズム 2%/18%、家族の雇用方針 9%/25%、いずれのポリシーもない 39%/15%。日本ではガバナンスポリシーが整備されていない。 「いずれのポリシーもない」が日本39%/世界15%(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.13)
- ファミリービジネスは、「家族」、「所有」、「経営」の3つの要素で特徴付けられ、創業期には、家族・所有・経営が一体化しているが、企業が成長する過程で、家族・所有・経営が徐々に分離し、関係性が複雑化するため、ガバナンス上のリスクが顕在化しやすくなる。(図:ファミリービジネスに関するスリーサークルモデル) スリーサークルモデル:成長に伴い家族・所有・経営が分離しリスクが顕在化(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.4)
- ファミリービジネスにおいて、経営者の強いリーダーシップやファミリーの理念・価値観・ビジョン等が企業価値向上に寄与する面がある一方、経営者の独善的行動や成長意欲の減衰(エントレンチメント)、お家騒動、後継者の経営能力不足といった、企業価値を毀損しかねない構造的なリスクを内包している。 エントレンチメント・お家騒動・後継者の能力不足という構造的リスク(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.4)
- PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025において、ファミリービジネスの競争優位性(複数選択可)として挙げられた割合(日本/世界)は、長期的な視点 65/63、柔軟性・機敏さ 52/57、共有された価値観・カルチャー 51/58(単位:%)。日本・グローバルともにこの3つを競争優位性とするファミリービジネスが多い。 競争優位性の上位3つは長期的視点・柔軟性・共有された価値観(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.7)
- PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025における自社評価(日本/世界)は、非ファミリービジネスと比較して「信頼性が高い・やや信頼性が高い」50%/74%、ファミリービジネスの役割として「持続可能なビジネス社会をリードする」34%/50%、「良き企業市民として適正な税金を支払う」53%/44%。日本では、ファミリービジネス自身が、その特長・競争優位性を十分に認識できていない可能性がある。 自社の信頼性を高いとするのは日本50%/世界74%。自己認識のギャップ(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.7)
- ファミリーガバナンスでは、いかに事業を持続的に成長させるかが重要である。そのために、ファミリービジネスの持続的な成長に向けて、前提となる理念・価値観・ビジョン等(2.1)を明確にすることが重要である。その上で、ファミリーとしての意思決定の仕組み(2.2)を整え、ファミリービジネスへの関与方針(2.3)を定めることが求められる。また、ファミリービジネスの所有と経営を承継するにあたり、早期に承継計画を策定し、計画的な後継者選定・育成を行うこと(2.4)は、事業の継続性に深く関わってくる。さらに、従業員や地域社会等のステークホルダーへの情報発信(2.5)を行うことは、ファミリービジネスとしての長所を訴求し、取組の理解を促すことにつながり、ステークホルダーとの信頼基盤を構築する重要なプロセスである。 第2章の5つの柱(理念→意思決定→関与方針→承継→情報発信)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.7)
- 本ガイダンスでは、取組事項の優先度に関して、原則として、以下の表のとおり表記している。特に重要な事項は「~推奨される」、重要な事項は「~重要である」、取組の選択肢となり得る事項は「~考えられる」。 優先度は語尾で表す3段階(推奨される/重要である/考えられる)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.7)
- ガイダンスと併せて公表されたチェックリストは、①ファミリービジネスの持続的成長に向けた理念・価値観・ビジョン等、②ファミリーとしての意思決定の仕組み、③ファミリービジネスへのファミリー等の関与方針、④ファミリービジネスの所有・経営の承継、⑤ステークホルダーへの情報発信の5分類について、各項目を「推奨」「重要」「選択」の優先度ラベル付きで一覧化したもの。各項目は「~している」という完了形の記述で、自社の整備状況を点検できる形式になっている。 チェックリストは5分類・推奨/重要/選択のラベル付き一覧(ファミリーガバナンス・ガイダンス チェックリスト, p.1)
- なお、ファミリーガバナンスに取り組む企業は、これらの項目すべてについて整備する必要はなく、各ファミリービジネスの株主構成、役員・従業員・取引先・地域社会等のステークホルダーとの関係等を総合的に勘案し、自社に最適な形を検討することが推奨される。 全項目の整備は不要。自社に最適な形を検討することが推奨(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.7)
- また、ファミリーガバナンスの整備を円滑に進めるためには、ファミリー内での信頼関係の構築が前提となる。そのために、日ごろからファミリー内での対話・交流を深めておくことが肝要であり、同世代のファミリー内での対話・交流のみならず、世代間(親子間)のコミュニケーションを図ることが重要である。 制度整備の前提はファミリー内の信頼関係と世代間の対話(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.7)
- なお、ファミリーガバナンスとして定められたルールや取組は、時代や環境の変化に応じて不断の見直しが必要である。 定めたルールは不断の見直しが必要(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.6)
- ファミリー内のルールには、ファミリー憲章等のソフトなルールと、株主間契約や信託契約等の法的拘束力を有するハードなルールがある。ファミリーのルールを策定する際には、両者の利点・欠点、活用の目的を考慮し、適切な形式を選択して策定することが推奨される。法的な仕組みにより、実効性が高まる一方、硬直的になる可能性がある点に留意が必要である。 ソフト(ファミリー憲章)とハード(株主間契約・信託)の使い分け(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.10)
- ファミリー憲章等(ファミリー宣言、ファミリー協定を含む)は、ファミリーの理念、ファミリーメンバーの行動規範、株式承継の方針等を文書化したものである。ファミリー憲章等を定める目的としては、ファミリーの一体感の醸成、ファミリービジネスとファミリーの良好な関係の維持等が挙げられる。 ファミリー憲章等の定義(理念・行動規範・株式承継方針の文書化)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.10)
- ファミリー憲章等において規定する項目の例:用語の定義(ファミリーメンバーの範囲、「ファミリー集会」の定義等)、制定目的、ファミリーのイベント、ファミリー集会等の役割・開催頻度・運営方法・決議方法、議決権行使方針、ファミリーメンバーの役員選解任・入社方針、ファミリーメンバーの教育方針、株式承継方針、ファミリーメンバーの株式売却ルール など。 ファミリー憲章に書く項目の例(9項目)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.11)
- ファミリー集会等の運用例。開催頻度・会議体:ファミリー集会を年4回(3月・6月・9月・12月)開催する。各家代表者で構成されるファミリー評議会を年4回開催し、重要事項について協議する。全ファミリーメンバーが参加する年2回のファミリー総会で最終決定する。決議方法:全員一致を原則とし、全員一致に至らない場合は、議長が決定する。多数決で決議する際、持株数に関わらず、1家族1議決権とする。ファミリー憲章に関する決議は、ファミリーメンバー全員の同意が必要。ファミリー株主間契約の内容に関する決議は、ファミリーメンバーの3分の2超の同意が必要。 年4回開催・1家族1議決権・憲章改定は全員同意という具体的運用例(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.11)
- オタフクホールディングスの佐々木家は、株式保有ルールや入社ルールをはじめとする家族憲章を策定している。主な内容は、株は8家が均等に持つ、8家族から1人ずつ後継者(社員・株主)を選出、給与は「基本給(平等)+役職給(公平)」、退職金は「基本額(平等)+貢献給(公平)」、65歳で現役を退き顧問・相談役に就任、年4回のファミリー会を開催、多数決で決議しない(全員が納得するまで議論)、グループ企業の取締役会の半数以上を佐々木家出身者以外とする、後継者は世間が決める(基準は「何を変えたか」「何を始めたか」「誰を育てたか」)。(日経トップリーダー2024年12月号を基に経済産業省が作成) オタフクHD佐々木家の家族憲章9項目(実名公開されている数少ない事例)(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.14)
- ファミリーが経営にどこまで関与し、どこから関与しないのか、その範囲と役割を明確に定めることが重要である。特に、ファミリーメンバーの入退社や役員就任に関して客観的なプロセスや基準等を設けることやファミリーメンバーが関わらない範囲を設定することが重要である。 関与する範囲と「関わらない範囲」の両方を定めることが重要(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.12)
- ファミリーメンバーの入退社・処遇・登用に関するルール:ファミリーの入退社のルールとして、一世代内において入社することができる人数を定めたり、入社に一定の要件を課したりすることが考えられる。また、役員への登用については、追加の要件を課すことも考えられる。ファミリー従業員と他の従業員との間に不合理な処遇差が生じないようにすることが、貢献意欲を高め、長期的な成長につながる。 入社人数の上限・入社要件・役員登用の追加要件と、処遇差の是正(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.12)
- ファミリーメンバーの入退社・処遇・登用ルールの事例:1ファミリーから各世代1名のみとする【食品製造業】。ファミリーメンバーが入社を希望する場合は、ファミリー集会の承認を要する【製造業・小売業】。ファミリーメンバーの入社後の処遇・人事について、ファミリーは関与しない【製造業・小売業】。 各世代1名まで、入社にはファミリー集会の承認、入社後の人事に不介入(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.13)
- 取締役の選任方針(選任の客観性確保)の例:ファミリーメンバーか否かに関わらず、予め定めた取締役就任要件に適合した人材か否かに基づき、ファミリー以外の者を含む選定委員会で、取締役候補者を最終決定する(ファミリーメンバー内のみで取締役候補者を決定しない)。取締役会の半数以上を、ファミリー以外の者から構成する。 選定委員会にファミリー以外を入れる/取締役会の半数以上を非ファミリーに(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.13)
- 労働市場への訴求:ファミリービジネス特有の強み、ファミリーガバナンスが機能していることを労働市場にも示すことで、優秀な人材の確保・定着につながると考えられる。 ファミリーガバナンスの機能を労働市場に示すことが人材確保・定着に効く(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.17)
- 従業員・役員への情報発信:人手不足が深刻化する中で、従業員・役員が、ファミリービジネスに対して共感し、やりがいを持って働くことができる環境を整備することが重要である。そのために、従業員・役員に対して、ファミリーメンバーとそれ以外の者との間で不合理な待遇差が生じていないことやファミリーメンバーの登用方針が妥当であることを示すことが考えられる。 不合理な待遇差がないこと・登用方針の妥当性を従業員に示す(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.17)
- 従業員・役員への情報発信の事例:従業員・役員に対して役員登用方針を明示している。これにより、従業員・役員にも登用の機会が確保されていることが明確になり、モチベーション向上につながっている。【機械製造業・不動産業】 役員登用方針の明示が非ファミリー従業員のモチベーションにつながった事例(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.17)
- 事業承継による経営者の交代後、経営者の年齢は平均16.8歳若返っている(交代前平均年齢71.2歳→交代後平均年齢54.4歳)。年齢差の内訳は、20歳以上30歳未満が25.6%と最多、次いで30歳以上40歳未満17.2%、10歳以上20歳未満15.7%、同年齢・上昇14.2%、5歳以上10歳未満13.7%、1歳以上5歳未満11.8%、40歳以上1.9%。東京商工リサーチの企業データベースに登録された約157万社のうち、2023年から2024年に代表者が交代した企業6万6,862社を対象とした分析。 経営者交代で平均16.8歳若返り(71.2歳→54.4歳)。6万6,862社の分析(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.20)
- 代表者年齢別の事業における新たな取組(複数回答)では、「新しい取組を行っていない」は70歳以上の経営者で28.8%と最も高く、59歳以下では17.2%、60歳代では20.7%。一方「新たな販路開拓・取引先拡大」は59歳以下42.1%、60歳代38.9%、70歳以上34.8%、「新商品・新サービスを開発」は59歳以下28.8%、60歳代25.8%、70歳以上20.7%。日本商工会議所「事業承継に関する実態アンケート」(2024年3月22日公表、4,062社回答)に基づく。 70歳以上の28.8%が新しい取組なし。若い経営者ほど販路開拓・新商品に積極的(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.21)
- 事業承継を実施した企業の承継後9年間の売上高成長率(同業種平均値との差分)は、1年後-0.2%、2年後-0.2%、3年後+0.1%、4年後+0.4%、5年後+0.7%、6年後+1.0%、7年後+1.2%、8年後+1.7%、9年後+2.1%。承継後2年目までは同業種平均値を下回っているが、3年目から徐々に上回ってきており、特に5年目からその傾向が加速する。中小企業庁「2023年中小企業白書」に基づく。 承継後2年はマイナス、3年目にプラス転換、9年後は+2.1pt(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.22)
- 事業承継の遅れや不確実性は、ファミリービジネスの成長を阻害する大きな要因となる。早期に方針を定め、計画的かつ円滑に承継を行うことが推奨される。 承継の遅れと不確実性そのものが成長の阻害要因(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.14)
- ファミリー内で所有と経営の両方を承継するのか、経営をファミリー以外の人材に任せ、所有のみを維持していくのか、経営のみを維持し、株式を外部に移していくのか、あるいは、上場をめざすのか、非上場を維持するのかなどのファミリーとしての承継方針を策定しておくことが推奨される。 所有と経営をどう分けるか──承継方針の選択肢(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.14)
- 計画的な後継者選定・育成:後継者に求められる資質や経験、選定プロセス・基準、育成計画を予め策定することが推奨される。これにより、承継を巡るファミリー内での対立を避け、円滑なバトンタッチが可能となる。企業の持続的成長を促す観点から、後継者選定に際しては、後継者候補をファミリー内から選ぶことと、優れた能力を持つ他の従業員を含めることの双方を、有力な選択肢として検討することが重要である。 後継者候補はファミリー内と他の従業員の双方を有力な選択肢として検討(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.14)
- 承継後の先代の役割のルール化:承継後に先代と後継者とが「適度な距離感」を保つために、承継後の先代の役割について、先代への敬意を根底に、あらかじめルールを定めておくことが推奨される。 承継後の先代の役割を、敬意を根底にあらかじめルール化する(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.14)
- 承継後の先代の役割ルールの事例:経営方針や投資判断等の次世代に影響がある事項については、先代は口を出さず後継者に一任し、地域社会での要職といった、これまでの関係性が重要な活動については、承継後も先代が協力している【機械製造業】。65歳で現役(社長)を退き、経営から離れるという方針を事前に決めている【食品製造業】。 先代の役割分担と、65歳で経営から離れる事前方針(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.15)
- 株式保有方針の策定:中長期的に株式をファミリー内での集約(所有と経営の一致)を目指すのか、適度な分散(所有と経営の分離)を目指すのか、外部株主を増やすか否か、将来的に株式上場を目指すか非上場企業であり続けるか等に関する方針について検討することが推奨される。適度に株式を分散することでファミリービジネスへの参画意識を醸成するとともに、経営者を監視する役割を担い得る一方、過度に株式が分散すると、経営の不安定化を招くリスクがある点に留意が必要となる。 株式の集約と分散のトレードオフ(参画意識・監視 vs 経営の不安定化)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.14)
- 株式保有の意義の共有:株式は単なる経済的価値を持つ「財産」であると同時に、会社の支配に関わる「経営権」でもある。そのため、後継者だけでなく、将来株式を保有する可能性のあるファミリーメンバーに対しても、会社の歴史や理念、株主としての役割や責任について対話を重ね、理解を深める機会を持つことが考えられる。将来の紛争を予防し、安定的な承継につながる。また、ファミリー株主に対して、会社法や事業ビジョン・戦略を理解し、責任ある議決権行使を行えるように教育することも考えられる。 株式は「財産」であり「経営権」。将来の株主に対する教育も選択肢(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.14)
- 「ファミリーガバナンス・ガイダンス(案)」に対するパブリックコメントは、令和8年3月30日(月)から令和8年4月30日(木)まで実施され、提出意見数は21であった。結果の公示日は2026年6月5日で、ガイダンス本体の公表と同日。案の公示日は2026年3月30日。行政手続法に基づく手続ではなく任意の意見募集として実施された。別紙「ご意見の概要と回答」には81項目の意見と回答が整理されている。 意見募集は2026年3月30日〜4月30日、提出意見数21、別紙は81項目(ファミリーガバナンス・ガイダンス(案)に対するパブリックコメントの結果について, p.1)
- 「ファミリー自体をステークホルダーとして明確に位置づけ、『ファミリーのためのガバナンス』という視点を補足すべきである」との意見に対し、経済産業省は「一般的なファミリーガバナンスの目的として、『ファミリーの持続・繁栄』等の観点も含まれる点については承知しております。今回、政府の経済産業政策の一環として、企業の維持・成長を目的としてガイダンスを策定していることから、ファミリーの持続・繁栄の観点については、本ガイダンスの対象としておりません」と回答した。 「ファミリーの繁栄」は目的から外し、企業の維持・成長に限定した(ファミリーガバナンス・ガイダンス(案)に対するパブリックコメントの結果について, p.4)
- 海外のファミリービジネスに関連する規範として、シンガポールでは、スチュワードシップ・アジア(SAC、シンガポール政府系投資会社のテマセクが設立した非営利団体)が2018年に「ファミリービジネス・スチュワードシップ原則」(7原則)を策定した。ドイツでは、ファミリービジネス向けガバナンスとして2004年に世界初の規範「GOVERNANCE CODE FOR FAMILY BUSINESSES」が作成され、現在は第4版。ほかにオーストリア、スイス、世界銀行(IFC Family Business Governance Handbook)にファミリービジネスに関する規範があり、ベルギー、フィンランド、スペイン、欧州理事会連合会には非上場企業に関する規範がある。 ドイツ2004年(世界初・第4版)、シンガポール2018年など海外の先行規範(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.17)
- 他方で、これまで一部のメディアで創業家一族による会社の私物化やお家騒動といった、ガバナンス不全等の稀な負のケースのみに着目して報道された結果、ファミリービジネスに対して社会からネガティブなイメージを持たれることもあった。 稀な負のケースの報道でネガティブなイメージが持たれてきた(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.3)
- PwCグローバルファミリービジネスサーベイ2025において、日本のファミリーガバナンスに関する規範・ガイドラインの導入に対する意見は、「喫緊の課題であるため早期に導入されるべき」16%、「中長期的視点で定着されるべき」33%、「税制面等のインセンティブがあれば前向きに考える」45%、「日本のファミリービジネスには必要ない」7%。規範に盛り込むべき内容(複数選択可、全体/非上場/上場)は、承継プラン 68%/71%/54%、公私混同の防止 45%/40%/67%、家族内の意思決定の場 40%/42%/33%、ファミリーの役員登用方針 20%/21%/17%、投資方針 17%/16%/21%。 規範に期待する内容の1位は承継プラン68%。約半数は早期導入・定着を支持(ファミリーガバナンス・ガイダンス 参考資料, p.16)
- ファミリービジネスが持続的に成長する上では、公私を整理し、法令遵守は当然のこととした上で、社会通念に照らして公正・公平な経営が重要である。例えば、経営における公私の整理を前提とした上で、ファミリーメンバーの人事的な処遇に関する公私の整理を行うことが重要である。 公私の整理、とくに人事的処遇における公私の整理が重要(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.12)
- 本ガイダンスにおいて主眼を置いている「ファミリーガバナンス」は、コーポレートガバナンスを踏まえた上で、ファミリー内における協働、及び、ファミリーと株主をはじめとする従業員・役員・顧客・地域社会等のステークホルダーとの協働を促し、結果として事業を継続・承継し、持続的に成長するための仕組みである。 ファミリーガバナンスの定義(コーポレートガバナンスを踏まえた上での協働の仕組み)(ファミリーガバナンス・ガイダンス, p.5)
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