価値協創ガイダンス 2.0 を読む:価値観から対話まで、企業価値創造を一枚で通す設計図
2026-07-30
経産省が2017年に策定し2022年に改訂した『価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0』は、企業と投資家の共通言語として6大項目(価値観・長期戦略・実行戦略・成果とKPI・ガバナンス・実質的な対話)を体系化した。SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を経営に落とし込む実践編として、人材版伊藤レポート2.0・人的資本可視化指針とともに一体運用される設計を読み解く
1. 2017→2022:企業と投資家の「共通言語」として育ってきた枠組み
価値協創ガイダンスは、経済産業省が2017年5月29日に策定し、2022年8月30日に 2.0 として改訂した枠組みである。5年3か月ぶりとなる改訂の背景には、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)という経営変革概念の定着がある。
SX は、伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート、2022年8月)で「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを『同期化』させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォーメーション)」と定義された。社会のサステナビリティは持続可能な社会に対する要請への対応、企業のサステナビリティは長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の維持・強化を指す。
この2つの文書は姉妹関係にある。伊藤レポート3.0は SX の要諦を取りまとめた**「理論編」、価値協創ガイダンス 2.0 は SX を経営や対話に落とし込むための「実践編」**として位置づけられており、人材版伊藤レポート2.0・人的資本可視化指針等とも併せて一体的・整合的に活用することが推奨されている。
2. 全体図が示す6要素構造
価値協創ガイダンス 2.0 は、6つの大項目で企業価値創造プロセス全体を記述する構造をとる。
価値協創ガイダンス 2.0 の6大項目
| 章 | 大項目 | 主な問い |
|---|---|---|
| 1 | 価値観 | 自社固有の判断軸・存在意義。何を社会に提供するために存在するか |
| 2 | 長期戦略 | 長期ビジョン/ビジネスモデル/リスクと機会。どのような仕組みで長期価値を生み出すか |
| 3 | 実行戦略(中期経営戦略など) | ESG組込・資本配分・ポートフォリオ・DX・イノベーション・人的資本・無形資産投資の7要素 |
| 4 | 成果(パフォーマンス)と重要な成果指標(KPI) | 財務成果と独自KPIで価値創造の達成度をどう評価するか |
| 5 | ガバナンス | 取締役会と経営陣の役割分担・多様性・実効性・報酬はどう機能しているか |
| 6 | 実質的な対話・エンゲージメント | 対話の原則/内容/手法/対話後のアクションをどう設計するか |
この6要素は、価値観を起点として縦に繋がる価値創造ストーリーを構成し、全体を企業と投資家の「実質的な対話・エンゲージメント」が支える設計になっている。
特に第2章「長期戦略」は、2022年改訂で新設された大項目である。①自社が目指す姿を示す「長期ビジョン」、②長期的かつ持続的な企業価値向上の基盤となる「ビジネスモデル」、③短・中・長期のリスク要因や事業機会を整理する「リスクと機会」の3サブ項目から構成される。
第3章「実行戦略」は、中期経営戦略の整理枠として7要素に分解される。3.1 ESG・SDGs組込/3.2 経営資源・資本配分戦略/3.3 事業ポートフォリオマネジメント/3.4 バリューチェーン影響力強化・DX推進/3.5 イノベーション実現のための組織的プロセス/3.6 人的資本への投資・人材戦略/3.7 知的財産を含む無形資産投資戦略。3.6 が独立項目として位置づけられている点が、人的資本経営との連動を明確化している。
第6章「実質的な対話・エンゲージメント」は、6.1 対話の原則/6.2 対話の内容/6.3 対話の手法/6.4 対話の後のアクション の4節構造で体系化されている。対話を「開示の後工程」ではなく経営プロセスそのものとして位置づける設計である。
3. 2022年改訂の5機軸
2017年版から2022年版への改訂は、次の5つの機軸に沿って行われた。
SX の意義を全項目に明示
持続可能な社会の実現に向けて企業が長期的かつ持続的に価値を提供することの重要性と、それを踏まえた対応の方向性を全ての項目に明記した
『長期戦略』大項目を新設
長期ビジョン・ビジネスモデル・リスクと機会の3項目を統合し、長期時間軸での経営・事業変革を強調する構造へ再編した
TCFD 4本柱との整合性確保
『ガバナンス』『戦略』『リスク管理』『指標と目標』の開示構造と対応する章立てにした。ISSB(IFRS S1/S2)・SSBJ とも互換的に使える設計
人的資本への投資・人材戦略を強調
人的資本を『価値の起点となる重要な無形資産』と再定義し、実行戦略内で独立項目(3.6)として位置づけ直した
『実質的な対話・エンゲージメント』項目を新設
対話の原則/内容/手法/対話後のアクションを4節で体系化し、対話を経営プロセスそのものとして扱えるようにした
第一機軸は、本ガイダンスにおいて SX の意義を明示することであった。2017年版では SX の概念はまだ存在しておらず、2.0で全項目に SX の意義を織り込み、全体を「価値創造ストーリーの協創+経営・事業変革」の枠組みへと再編した。
第二機軸は、長期時間軸での経営変革の重要性を強調するため、長期ビジョン・ビジネスモデル・リスクと機会の3項目から構成される「長期戦略」の大項目を新設することだった。2017年版ではビジネスモデル・リスクと機会が独立項目として並列だったところを統合した構造転換である。
第三機軸は、TCFD 提言以来定着しつつある「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という開示構造との整合性確保である。TCFD→ISSB(IFRS S1/S2)→SSBJ と続くサステナビリティ開示の国際標準と互換的に使える整理であり、1つのファクトで複数フレーム対応が可能になる。
第四機軸は、人的資本が企業の生み出す価値の起点となる重要な無形資産として、企業価値を構成する様々な要素とも密接に関連しており、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの両立を図る観点からも重要な要素であるとの認識が広がっていることを受け、実行戦略において人的資本への投資や人材戦略の重要性をより強調する構成へと組み直すことだった。人的資本を「単なるコスト」ではなく「価値の起点となる無形資産」と再定義する転換である。
第五機軸は、企業と投資家が建設的・実質的な対話を通じて価値創造ストーリー全体を磨き上げて協創することの重要性を明確化するため、「実質的な対話・エンゲージメント」の項目を新設することだった。2017年版では対話は暗黙の前提に過ぎなかった部分を、大項目として独立させたことになる。
4. 各要素の本質 ─ 6章を貫く3つの論点
6要素を縦断して読むと、ガイダンス全体に3つの論点が通底していることが見えてくる。
一つ目は、価値観を単なる理念でなく「価値創造ストーリーの出発点」として位置づけることである。企業は持続可能な社会への要請や事業環境の変化を見据え、企業理念等を拠り所とし、短・中・長期の時間軸でそれをどのように事業や仕組みで体現するかを、投資家や社員を含むステークホルダーに示し、理解を得ることが重要であるとされる。価値観は長期戦略→実行戦略→KPI→ガバナンス→対話へと流れる一連のストーリーの起点として位置づけられる。
二つ目は、ビジネスモデルを「設計図」として扱うことである。ビジネスモデルは、単なる事業の概要や儲けの構造ではなく、競争優位を確立し維持するための仕組みや方法が、企業の長期ビジョンと価値観に基づき、長期的かつ持続的な価値創造の基盤となる設計図(青写真)として描かれるものと定義される。投資家は、ビジネスモデルの将来性・持続可能性を判断する際、競争優位の鍵となる要素を認識し、企業がそれらを維持・強化するためにどのような資源配分や投資を行っているかを理解する必要がある。
産業構造や事業環境の急速な変化、技術革新の加速の中で、企業が捉えるべきリスクと機会は、気候変動、人権、ルール環境の変化、サプライチェーンリスク、サイバーセキュリティ、経済安全保障関連課題まで複雑化している。特に第四次産業革命下での破壊的イノベーションはビジネスモデルの技術を陳腐化させ、競争優位や持続可能性、さらには企業の存続を脅かすリスクになる。こうしたリスクを事業機会として捉え返す力が、長期戦略の核心に置かれている。
三つ目は、対話を一方向の開示でなく「情報・認識ギャップを埋める双方向プロセス」として再定義することである。投資家は、企業の競争条件に関わる機密情報そのものよりも、それらの情報がビジネスモデルや戦略の中でどのように位置づけられ、どのような視座や事実に基づき成果が評価され、経営判断と連動するのかを重視する。また、長期投資家が求める ESG 情報の多くは、企業が社会との関係を価値創造のリスクや事業機会として捉え、戦略的に行動しているかに関わるため、この点を統合的に伝えることが重要とされる。
経営陣についても同じ論理が働く。投資家は、業務執行を担う経営陣が求められる資質や能力を備えていること、そして意思決定した事項を着実に実行することを求めており、取締役会や経営陣全体としての機能発揮のため、属性・経験・能力等の多様性(ダイバーシティ)が確保されていることも重視される。経営の質を個別要素ではなく「構造」として把握する視点が貫かれている。
5. 人的資本・人材版伊藤・可視化指針との連動
価値協創ガイダンス 2.0 は単独で動くフレームではない。2022年を通じて公表された複数の文書群と組み合わせて運用されることが、策定側の設計思想として明記されている。
ガイダンス 2.0 と関連文書群
| 文書 | 公表 | 位置づけ | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| 伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート) | 2022年8月 | 理論編 | SXの要諦・インベストメントチェーンの構造論を提示 |
| 価値協創ガイダンス 2.0 | 2022年8月30日 | 実践編 | SXを経営・対話に落とし込む6要素フレーム |
| 人材版伊藤レポート 2.0 | 2022年5月 | 人材戦略の実践論 | 経営戦略と人材戦略の連動・As is-To beギャップ把握 |
| 人的資本可視化指針 | 2022年8月 | 開示側の実務ガイド | 4視点19項目の人的資本開示整理 |
第四機軸が示したとおり、人的資本への投資と人材戦略は実行戦略の中に独立項目(3.6)として位置づけられた。人材版伊藤レポート2.0 は経営戦略と人材戦略の連動を論じる実践論として、人的資本可視化指針は開示側の実務ガイドとして、ガイダンス 2.0 と接続する構造になっている。
国際的なフレームワークとの接続については、人的資本可視化指針が別の側面から整理している。可視化指針では、価値協創ガイダンスと IIRC(国際統合報告評議会)のフレームワークが相互補完的に活用することが可能であり、両者を組み合わせて活用することも有用であるとされた。IIRC は2021年6月に SASB と統合して価値報告財団(VRF)を設立、2022年8月には VRF が IFRS 財団に統合され、その成果は ISSB のサステナビリティ開示基準へ継承されている。TCFD→ISSB→SSBJ の軸と、日本政策由来の人的資本可視化指針・人材版伊藤レポートの軸を、1つの開示物の中で統合的に運用できる土台になっている。
6. 手引き・共通言語としての機能
価値協創ガイダンスは、3つの機能を果たすことが期待されている。企業経営者の手引・投資家の手引・使われ進化する共通言語、の3つである。
企業経営者にとっては、統合思考に基づくマネジメントツールとして位置づけられる。経営者が、自らの経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等を一連の価値創造ストーリーとして投資家に伝えるための手引であり、直接的には情報開示や投資家との対話の質を高めることが目的だが、それを通じて経営者が企業価値創造に向けた自社の経営の在り方を整理し、振り返るとともに、経営の効率化・強化を確実に実行して SX を実現するためのマネジメントツールとして活用することが期待される。単なる開示整理のガイドではなく経営変革のツールとして設計されている点が核心である。
投資家にとっては、スチュワードシップ活動のための参照枠である。投資家が中長期的な観点から企業を評価し、投資判断やスチュワードシップ活動に役立てるための手引であり、投資家やアナリストは企業側から本ガイダンスの項目が一方的に開示・説明されることを待つのでなく、企業との情報・認識ギャップを埋めていくために本ガイダンスを参照して企業と対話を行い、自らの投資判断等に必要な情報を把握することが期待されている。受け身の読者ではなく、能動的な対話の担い手として参照する設計である。
そして全体としては、使われ進化する「共通言語」としての機能である。本ガイダンスが企業の情報開示や投資家との対話の質を高めるための共通言語として機能するためには、これが有効に使われ、実務を通じてより用いられるものにしていくことが必要とされる。企業による優良事例や投資家の評価実態等を把握・分析し、より良い内容や活用方法を模索し不断の見直しを行っていくことも重要であり、開示や対話といった手段が目的化することなく、企業の持続的な価値創造、それに向けた企業と投資家の協創がいかに達成されるかということに常に焦点が当てられることが必要である。2017年から2022年への改訂自体、この「進化する共通言語」の設計思想を体現している。
価値協創ガイダンス 2.0 が示す6要素の枠組みは、MVV(価値観)→長期戦略→実行戦略(人的資本を含む)→成果とKPI→ガバナンス→対話、という一気通貫の価値創造ストーリーの設計図である。当サイトが MVV/ESG/人的資本経営の各ガイドを横断的に整備しているのは、この6要素を順に読み解けば企業価値創造の全体像に到達できるという、ガイダンス 2.0 の設計思想と同じ骨格に基づいている。
出典(24件)
- 価値協創ガイダンスは 2017年5月29日に策定、2022年8月30日に 2.0 として改訂された。 策定日・改訂日(PDF表紙)(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.1)
- SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)は、「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを『同期化』させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォーメーション)」と定義される。社会のサステナビリティは持続可能な社会に対する要請への対応、企業のサステナビリティは企業が長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の維持・強化を指す。 SXの定義(伊藤レポート3.0再整理版)(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.3)
- 伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート、2022年8月)は、SXの要諦を取りまとめた「理論編」として自らを位置づけている。一方、価値協創ガイダンス 2.0 は、SXを経営や対話に落とし込んでいくための「実践編」として位置づけられており、人材版伊藤レポート2.0・人的資本可視化指針等とも併せて参照しつつ一体的・整合的に活用することが推奨されている。 伊藤3.0=理論編 / ガイダンス2.0=実践編(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.4)
- 価値協創ガイダンス 2.0 は、①価値観、②長期戦略、③実行戦略(中期経営戦略など)、④成果(パフォーマンス)と重要な成果指標(KPI)、⑤ガバナンス、⑥実質的な対話・エンゲージメント の6大項目で構成される。価値観を起点に、長期戦略→実行戦略→成果とKPI→ガバナンスへと縦に繋げ、全体を企業と投資家の実質的な対話・エンゲージメントが支える構造になっている。 6大項目の全体構造(map_guidance2.0.pdf 全体図)(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.1)
- 「長期戦略」の大項目は、①長期ビジョン(社会への長期的な価値提供の目指す姿)、②ビジネスモデル(市場勢力図における位置づけ・競争優位を確保するために不可欠な要素)、③リスクと機会(気候変動等のESGリスク・ステークホルダー関係・事業環境変化への対応) の3サブ項目で構成される。 長期戦略 = 長期ビジョン + ビジネスモデル + リスクと機会(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.1)
- 「実行戦略(中期経営戦略など)」は、①ESG・SDGsの戦略への組込、②経営資源・資本配分(キャピタル・アロケーション)戦略、③事業ポートフォリオマネジメント戦略、④バリューチェーン影響力強化・DX推進、⑤イノベーション実現のための組織的なプロセスと支援体制、⑥人的資本への投資・人材戦略、⑦知的財産を含む無形資産等への投資戦略 の7要素で構成される。 実行戦略 3.1〜3.7 の7要素(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.1)
- 新設された「実質的な対話・エンゲージメント」は、①実質的な対話等の原則、②実質的な対話等の内容、③実質的な対話等の手法、④実質的な対話等の後のアクション の4節構造で整理されている。 6. 実質的対話・エンゲージメント 4節構造(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.1)
- 2022年8月改訂の第一機軸は、本ガイダンスにおいて SX の意義を明示することだった。具体的には、全ての項目において、持続可能な社会の実現に向けて、企業が長期的かつ持続的に価値を提供することの重要性と、それを踏まえた対応の方向性を明記することとした。 改訂機軸①SX意義明示(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.5)
- 2022年8月改訂の第二機軸は、昨今の産業構造・事業環境の変化の激化や、持続可能な社会に対する要請の高まりを受けて、長期的かつ持続的な企業価値向上を実現するために長期の時間軸で経営・事業変革を行っていくことの重要性を強調することだった。このため、長期ビジョン・ビジネスモデル・リスクと機会の3項目から構成される「長期戦略」の大項目が新設された。 改訂機軸②長期戦略大項目新設(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.5)
- 2022年8月改訂の第三機軸は、TCFD 提言以来定着しつつある「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という開示構造との整合性を確保することだった。これらに対応する項目として、価値協創ガイダンスの「ガバナンス」「実行戦略(中期経営戦略など)」「リスクと機会」「成果(パフォーマンス)と重要な成果指標(KPI)」の各項目を活用できる構成とした。 改訂機軸③TCFD4本柱整合(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.5)
- 2022年8月改訂の第四機軸は、人的資本が企業の生み出す価値の起点となる重要な無形資産として、企業価値を構成する様々な要素とも密接に関連しており、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの両立を図る観点からも重要な要素であるとの認識が広がっていることや、人的資本への投資が、競合他社に対する参入障壁を高めて競争優位を形成する中核要素となることも踏まえ、「実行戦略(中期経営戦略など)」において、人的資本への投資や人材戦略の重要性をより強調する構成へと組み直すことだった。 改訂機軸④人的資本投資・人材戦略強調(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.6)
- 2022年8月改訂の第五機軸は、企業と投資家が建設的・実質的な対話を通じ、価値創造ストーリー全体を磨き上げて協創することの重要性をより明確化するため、「実質的な対話・エンゲージメント」の項目を新設することだった。 改訂機軸⑤実質的対話大項目新設(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.6)
- 企業は、持続可能な社会への要請や事業環境の変化を見据え、企業理念等を拠り所とし、短・中・長期の時間軸でそれをどのように事業や仕組みで体現するかを、投資家や社員を含むステークホルダーに示し、理解を得ることが重要である。 価値観の体現とステークホルダーへの開示(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.12)
- ビジネスモデルは、単なる事業の概要や儲けの構造ではなく、競争優位を確立し維持するための仕組みや方法が、企業の長期ビジョンと価値観に基づき、長期的かつ持続的な価値創造の基盤となる設計図(青写真)として描かれるもの。 ビジネスモデルの概念(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.21)
- 投資家は、ビジネスモデルの将来性・持続可能性を判断する際、競争優位の鍵となる要素を認識し、企業がそれらを維持・強化するためにどのような資源配分や投資を行っているかを理解する必要がある。 投資家の資源配分評価(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.23)
- 産業構造や事業環境の急速な変化、技術革新の加速の中で、企業が捉えるべきリスクと機会は、気候変動、人権、ルール環境の変化、サプライチェーンリスク、サイバーセキュリティ、経済安全保障関連課題まで複雑化している。 事業環境変化に伴うリスクと機会の複雑化(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.31)
- 第四次産業革命下の急速な技術革新や異業種からの新規参入、特に「非連続的(破壊的)イノベーション」は、ビジネスモデルの技術を陳腐化させ、競争優位や持続可能性、さらには企業の存続を脅かすリスクとなる。 技術変化と破壊的イノベーション(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.30)
- 投資家は、企業の競争条件に関わる機密情報そのものよりも、それらの情報がビジネスモデルや戦略の中でどのように位置づけられ、どのような視座や事実に基づき成果が評価され、経営判断と連動するのかを重視する。 投資家が求める情報の本質(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.41)
- ビジネスモデルの持続可能性・成長性評価において、ステークホルダー関係は重要情報。長期投資家が求めるESG情報の多くは、企業が社会との関係を価値創造のリスクや事業機会として捉え、戦略的に行動しているかに関わるため、この点を統合的に伝えることは投資家との認識共有に重要である。 ESGとステークホルダー関係(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.24)
- 投資家は、業務執行を担う経営陣が、求められる資質や能力を備えていること、そして意思決定した事項を着実に実行することを求めている。さらに、取締役会や経営陣全体としての機能を発揮するため、属性や経験、能力等の多様性(ダイバーシティ)が確保されていること、透明性・合理性の高い意思決定を行う仕組みが担保されていることを重視している。 社長、経営陣のスキル及び多様性(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.50)
- 価値協創ガイダンスとIIRCのフレームワークは相互補完的に活用することが可能であり、両者を組み合わせて活用することも有用である。 フレームワーク間の相互補完性(p.15)
- 価値協創ガイダンスは第一に、企業経営者が、統合思考に基づき、自らの経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等を一連の価値創造ストーリーとして投資家に伝えるための手引である。直接的には企業の情報開示や投資家との対話の質を高めることが目的ではあるが、それを通じて、経営者が企業価値創造に向けた自社の経営の在り方を整理し、振り返るとともに、経営の効率化・強化を確実に実行してSXを実現するためのマネジメントツールとして活用し、具体的なアクションにつなげていくことが期待される。 役割①経営者の手引(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.8)
- 第二に、投資家が、中長期的な観点から企業を評価し、投資判断やスチュワードシップ活動に役立てるための手引である。本ガイダンスが念頭に置くのは、長期的かつ持続的な企業価値向上に関心を持つ機関投資家や個人投資家である。投資家やアナリストは、企業側から本ガイダンスの項目が一方的に開示・説明されることを待つのでなく、企業との情報・認識ギャップを埋めていくために本ガイダンスを参照して企業と対話を行い、自らの投資判断等に必要な情報を把握することが期待される。 役割②投資家の手引(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.8)
- 価値協創ガイダンスは、企業と投資家が情報開示や対話の質を高めるための「共通言語」として機能することが期待されている。企業による優良事例や投資家の評価実態等を把握・分析し、より良い内容や活用方法を模索し不断の見直しを行っていくことも重要である。開示や対話といった手段が目的化することなく、企業の持続的な価値創造、それに向けた企業と投資家の協創がいかに達成されるかということに常に焦点が当てられることが必要である。 役割③共通言語として進化(経済産業省 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0(2022年8月30日改訂), p.9)
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