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総合分析
2024〜2025年度
社会 イノベ

日立製作所

日立、変革の円環ー社会イノベーションはいかにして100年の理念を未来へ繋ぐか

ミッション:社会イノベーション事業でハーモナイズドソサエティの実現に貢献 社会イノベーション事業でハーモナイズドソサエティの実現に貢献

<div style="border: 1px solid #ddd; padding: 20px; text-align: center; background-color: #f9f9f9; border-radius: 8px;">

日立製作所

製造業
2026年3月7日

他社の理念 × 出典付き

他社の理念は、どう言語化されているか。

この記事で触れた理念を、業種横断で。主要企業のミッション・ビジョン・バリューを 逐語・種別・業種・出典PDF(ページ直リンク)付きでCSVに。理念の策定・改定のベンチマークにそのまま使える。

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<div style="border: 1px solid #ddd; padding: 20px; text-align: center; background-color: #f9f9f9; border-radius: 8px;"> <h3 style="font-family: 'Minion Pro', serif; color: #333;">日立の価値創造サイクル</h3> <p style="font-style: italic; color: #555;">社会課題を起点に、テクノロジーとビジネスモデルの革新を通じて、環境・経済・社会の三つの価値を創造する。生み出されたキャッシュフローは、成長への再投資と株主還元に繋がり、企業価値の向上を促す。このサイクルを回し続けるために、ポートフォリオ強化とガバナンス深化が不可欠な両輪となる。</p> <div style="display: flex; justify-content: space-around; align-items: center; margin-top: 20px;"> <div style="width: 22%;"> <strong>起点</strong><br>プラネタリーバウンダリー[REF:concept_planetary_boundaries_2025]<br>ウェルビーイング[REF:concept_wellbeing_2025]<br>経済成長[REF:concept_economic_growth_2025] </div> <div style="font-size: 24px; color: #005bac;">&rarr;</div> <div style="width: 22%;"> <strong>価値創造</strong><br>テクノロジーとビジネスモデルの革新[REF:value_creation_cycle_elements_2025]<br>環境・経済・社会価値創造[REF:value_creation_cycle_elements_2025] </div> <div style="font-size: 24px; color: #005bac;">&rarr;</div> <div style="width: 22%;"> <strong>財務成果</strong><br>CF拡大・ROIC向上[REF:value_creation_cycle_elements_2025]<br>WACC低減[REF:value_creation_cycle_elements_2025] </div> <div style="font-size: 24px; color: #005bac;">&rarr;</div> <div style="width: 22%;"> <strong>価値循環</strong><br>成長への再投資[REF:value_creation_cycle_elements_2025]<br>株主還元[REF:value_creation_cycle_elements_2025]<br>企業価値向上[REF:value_creation_cycle_elements_2025] </div> </div> <div style="margin-top: 15px; font-size: 14px; color: #666;"> <strong>支える基盤:</strong> ポートフォリオ強化[REF:value_creation_cycle_elements_2025] & ガバナンス深化[REF:value_creation_cycle_elements_2025] </div> </div>

序章、巨艦の針路変更

2024年、日立製作所は、かつて多くの人が抱いていたであろう「総合電機メーカー」という姿からは、もはや遠い場所にいる。連結売上収益9兆7,833億円、調整後EBITA(利払い・税引き・償却前利益)1兆835億円という数字が示すのは、単なる規模ではない。その事業ポートフォリオは、デジタルシステム&サービスが32%、コネクティブインダストリーズが27%、モビリティが25%、エネルギーが11%と、社会インフラとデジタル技術が複雑に絡み合った様相を呈している。海外売上比率は61%に達し、その針路が明確にグローバル市場へと向いていることを物語る。

この巨大な企業体は、今、歴史的な転換点の渦中にある。執行役社長兼CEOの小島啓二が掲げる旗印は明快だ。「コングロマリットからデジタルセントリックな社会イノベーション企業へ成長機会をつかみ、企業価値向上へと進化を加速」させること。これは単なるスローガンではない。10年以上にわたる、痛みを伴う事業ポートフォリオ改革と、絶え間ない自己変革の旅路の到達点であり、新たな航海の始まりを告げる号砲でもある。

日立の変革物語を読み解く鍵は、三つの円環にある。第一に、創業以来100年以上にわたって受け継がれる企業理念が、いかにして現代の経営戦略へと昇華され、未来への羅針盤として機能しているかという「理念の円環」。第二に、環境(Planet)、社会(People)、ガバナンス(Governance)というESGの要請を、事業成長の機会として取り込み、社会価値と経済価値を両立させる「価値創造の円環」。そして第三に、全世界で28万人を超える多様な従業員一人ひとりの力をいかにして引き出し、イノベーションの源泉へと変えるかという「人的資本の円環」である。

これらの円環は、独立して存在するのではない。互いに深く絡み合い、影響を与え合いながら、日立という巨艦を前進させる強力なエンジンとなっている。本稿では、日立の企業理念、ESG経営、そして人的資本経営を深掘りし、この巨大企業がどのようにして自らのDNAを再定義し、未来を切り拓こうとしているのか、その変革の核心に迫る。それは、一つの企業の物語であると同時に、21世紀の資本主義において企業がいかにして社会的存在意義を問い直し、持続的成長を遂げることができるかという、普遍的な問いへの一つの答えでもある。

第1章 原点回帰と再定義ー創業の精神はいかにして現代の羅針盤となったか

日立の物語は、1910年、茨城県の鉱山町にある小さな修理小屋から始まった。創業者、小平浪平が抱いた志は、当時の日本の産業界が直面していた課題そのものであった。外国の技術や製品に大きく依存していた時代に、彼は「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という強い信念を抱き、モノづくりに挑んだ。その最初の結晶が、国産初の5馬力誘導電動機である。これは単なる製品開発ではなかった。技術的自立を通じて社会を発展させるという、壮大なビジョンの第一歩だった。

この創業の精神は、1世紀以上の時を経て、今なお日立グループの根幹に息づいている。それは「和・誠・開拓者精神」という三つの言葉に集約される。日立の社内では、これらの言葉は単なる飾り文句としてではなく、日々の意思決定の拠り所として語られる。

  • 和(Harmony): 多様な意見を持つ人々が、一つの目標に向かって議論を尽くし、一度決まれば一致協力して実行する。CEOの小島はこれを現代的に「インクルーシブリーダーシップ」と解釈する。多様なバックグラウンドを持つ28万人もの従業員を擁するグローバル企業にとって、この「和」の精神は、組織の求心力を保つ上で不可欠な要素となっている。
  • 誠(Sincerity): 社会の課題に真摯に向き合い、ステークホルダーに対して誠実であること。これは、企業が社会からの信頼を得て存続するための基本原則であり、日立が自らを「社会の公器」と位置づける思想の根底にある。
  • 開拓者精神(Pioneering Spirit): 未知の領域に果敢に挑戦し、イノベーションを追求する姿勢。5馬力誘導電動機の開発から始まったこの精神は、今日のデジタル変革やグリーンテクノロジーへの挑戦へと脈々と受け継がれている。

しかし、理念が不変である一方で、その理念を体現する事業の形は、時代と共に劇的に変化してきた。特に2000年代以降、日立は「コングロマリット・ディスカウント」という長年の課題に直面し、大規模な事業ポートフォリオ改革を余儀なくされた。その中で、創業の精神を現代の事業環境に再接続するキーワードとして生まれたのが「社会イノベーション事業」である。

これは、IT(情報技術)とOT(制御・運用技術)、そしてプロダクトを組み合わせることで、社会インフラが抱える複雑な課題を解決するというコンセプトだ。単にモノを売るのではなく、顧客や社会と共に価値を創造(Co-Creation)する。この事業モデルへの転換は、創業理念である「社会への貢献」を、より具体的かつ体系的な形で実現するための戦略的再定義であった。

この再定義された理念は、「日立グループ・アイデンティティ」として、ミッション、バリュー、ビジョンから成る明確な体系にまとめられた。

  • ミッション(社会において果たすべき使命): 社会イノベーション事業を通じて、人々が安全、安心、快適に暮らせる、持続可能な社会の実現に貢献する
  • バリュー(ミッションを実現するために大切にする価値): 創業の精神である「和・誠・開拓者精神」
  • ビジョン(日立がめざす社会): データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現し、人々の幸せを支える。具体的には、プラネタリーバウンダリーとウェルビーイングが両立する「ハーモナイズドソサエティ」の実現を目指す。

このアイデンティティは、日立の変革の旅路における北極星となった。2015年から2021年にかけての構造改革期には、この羅針盤に基づき、事業の選択と集中が断行された。そして現在、オーガニック成長を目指す新たなフェーズにおいても、全ての戦略はこのアイデンティティから派生している。日立は「変わり続ける」ことを恐れない。なぜなら、その変革の軸となる不変の理念を持っているからだ。創業の精神は、過去の遺産ではなく、未来を創造するための生きた羅針盤として、今まさにその真価を発揮しているのである。

原点回帰と再定義

創業から受け継ぐ理念

ハーモナイズド・ソサエティの実現

日立の企業理念(ミッション)

出典:日立製作所 統合報告書2025 p.31

第2章 Lumadaというエンジンーデジタル変革が価値創造を加速するメカニズム

日立の変革物語の中心には、「Lumada(ルマーダ)」という名の強力なエンジンが存在する。2016年に発表されたこのブランドは、当初IoTプラットフォームとして紹介されたが、今やその役割を大きく超え、日立のビジネスモデルそのものを再定義し、社会イノベーション事業を具現化するためのオペレーティング・システム(OS)へと進化した。

Lumadaの本質は、「Value Integration(価値の統合)」にある。日立が1世紀以上にわたって電力、鉄道、産業機器などの分野で築き上げてきた膨大なインストールベース(納入実績)と、ミッションクリティカルな現場で培った深いドメインナレッジ(業務知識)。これら有形の「アセット」と無形の「知見」を、デジタル技術、特にAIと融合させることで、新たな価値を創出する。これがLumadaの成長モデルの核心だ。

この成長モデルは、具体的なサイクルとして機能する。まず、送配電機器や鉄道車両、工場の生産設備といった現場の「インストールベースをデジタル化」する。次に、Edge AIや組込ソフトウェアが現場データをリアルタイムに収集・処理し、安全なデータストアに蓄積する。そして、この膨大なデータと、日立が持つドメインナレッジをAIエージェントが融合させることで、予兆診断や保守・運用サービス、業務効率化といった高度なデジタルサービスを提供する。このプロセスから得られた知見は、再びアセットやサービスの改善にフィードバックされ、価値創造のサイクルが回り続ける。

このサイクルを加速させるため、日立は野心的な長期目標を掲げた。それが「Lumada 80-20」である。これは、将来的にLumada事業の売上収益比率を80%、調整後EBITA率を20%にまで高めるという、デジタルセントリック企業への完全な変革を宣言するものだ。

この目標達成に向けた具体的なロードマップが、2025年度から始まる中期経営計画「Inspire 2027」である。この計画では、2027年度までにLumada事業の売上収益比率を50%、Adj. EBITA率を18%に引き上げることを目指す。2024年度の実績がそれぞれ31%、15%であったことを考えると、その成長への強い意志がうかがえる。

Lumadaの進化は、具体的な協創事例によって証明されている。例えば、2024年に提供を開始した鉄道分野向けのソリューション「HMAX」。これは車両や設備のデータをAIで分析し、保守コストやエネルギー消費、CO2排出量を削減するもので、鉄道業界のDXを加速させる。また、ダイキン工業との協創では、2023年から設備故障診断AIエージェントの実用化に向けた試験運用を開始。ダイキンの現場OTナレッジと日立のデジタル技術を融合させ、製造業の生産性向上に貢献している。

Lumadaをエンジンとする成長をさらに加速させるため、日立は戦略的なM&Aを積極的に活用してきた。2019年のJRオートメーション買収、2020年のABB社パワーグリッド事業買収(現・日立エナジー設立)、そして2021年のGlobalLogic買収は、その象徴的な事例だ。特に、デジタルエンジニアリングサービスで世界的な評価を得るGlobalLogicの獲得は、日立のデジタルケイパビリティを飛躍的に高め、Lumadaのサービス提供能力をグローバルレベルに引き上げた。これらの買収は、単なる事業規模の拡大ではなく、LumadaというOSの機能を強化し、価値創造サイクルをより高速に、より広範囲に回すための戦略的な布石なのである。

Lumadaは、もはや日立の一事業ではない。それは、100年以上の歴史を持つ巨大企業が、自らの強みを再発見し、デジタル時代に適応するための変革の思想そのものである。インストールベースという「過去の遺産」を、データとAIという「未来の燃料」で再燃焼させ、社会課題解決という「新たな価値」を生み出す。この壮大なメカニズムこそが、日立の未来を駆動している。

Lumadaというエンジン

コングロマリットからの転換

これまで

コングロマリット

これから

デジタルセントリックな社会イノベーション企業

Lumadaを成長エンジンに

出典:日立製作所 統合報告書2025 p.30

第3章 プラネタリーバウンダリー時代のESG経営ー社会課題解決を事業成長の源泉に

日立の経営陣が頻繁に口にする言葉に、「社会の公器」がある。これは、企業が単なる利益追求の組織ではなく、社会全体の幸福と発展に寄与する存在であるべきだという、創業以来の思想を反映している。この思想は、現代のESG(環境、社会、ガバナンス)経営の潮流と完全に合致し、日立のサステナビリティ戦略の根幹を成している。

日立のESG経営がユニークなのは、それをコストや制約としてではなく、事業成長の源泉と明確に位置づけている点だ。その世界観を象徴するのが、「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」という概念への言及である。気候変動、生物多様性の損失といった地球規模の課題を、人類の生存基盤を脅かす限界点として認識し、その範囲内で持続可能な成長を目指す。これは、守りの姿勢ではなく、むしろこの制約の中にこそ新たなイノベーションと事業機会が存在するという、攻めの思想である。

この思想を具体的な戦略に落とし込んだものが、サステナビリティ戦略「PLEDGES」だ。これは、日立が取り組むべき重要課題を体系化したもので、Planet(環境)、Leadership(リーダーシップ)、Empowerment(従業員の成長支援)、Diverse perspectives(多様性)、Engagement(ステークホルダーとの協働)、Governance(ガバナンス)、Sustainability for all(すべての人のためのサステナビリティ)の頭文字から成る。

Planet(環境)ー カーボンニュートラルへの挑戦 日立は、自社の事業活動におけるカーボンニュートラルを2030年度までに、そしてバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを2050年度までに達成するという野心的な目標を掲げている。その進捗は着実だ。事業所(ファクトリー・オフィス)のCO2排出量は、2010年度比で81%削減という高い水準に達している。 しかし、日立の環境戦略の真骨頂は、自社の排出削減に留まらない。日立エナジーの送配電技術や、鉄道システムの高効率化など、自社の製品・サービスを通じて顧客や社会全体のCO2排出削減に貢献することにこそ、最大の価値を見出している。その貢献量は2022~2024年度の3年平均で1.42億トンに上る。これは、環境課題の解決を直接的な事業機会と捉える「攻めの環境経営」の証左である。

Governance(ガバナンス)ー 企業価値向上を支える監督機能 日立のガバナンス改革は、日本企業の中でも先進的な事例として知られる。取締役会12名のうち、独立取締役が9名(75%)、外国人取締役が4名(33.3%)、女性取締役が2名(16.7%)という構成は、多様な視点と独立性を確保しようとする強い意志の表れだ。 特筆すべきは、取締役会の議論の質へのこだわりである。2024年度の取締役会では、議題に対する議論時間の比率が58%と、説明時間を上回った。特に、中期経営計画や事業戦略といった重要事項に多くの時間が割かれており、取締役会が単なる決議機関ではなく、経営の方向性を深く議論する場として機能していることがうかがえる。 さらに、取締役のスキルマトリックスを公開し、企業経営やグローバルビジネスといったコアスキルに加え、デジタルやサステナビリティといった専門分野の知見を持つ取締役を確保している。 この強力なガバナンスは、役員報酬制度にも反映されている。短期インセンティブ(STI)の評価項目には、財務指標だけでなくサステナビリティ評価が組み込まれ、その実行を促進する仕組みが構築されている。ガバナンスを、リスク管理という「守り」の機能に留めず、サステナビリティ経営を推進し、中長期的な企業価値向上を後押しする「攻め」のエンジンへと昇華させているのだ。

Engagement(ステークホルダーとの協働) 日立は、サプライチェーン全体でのサステナビリティ向上にも注力している。調達パートナーに対してサステナビリティ調達説明会やサステナビリティ監査を実施し、GHG排出量削減目標の設定を働きかけている。これは、自社の責任範囲をサプライチェーン全体に広げ、社会課題解決に向けてエコシステムを構築しようとする姿勢の表れである。

日立のESG経営は、社会貢献活動と事業活動を分離しない。プラネタリーバウンダリーという大きな制約の中で、社会課題をイノベーションの種と捉え、強力なガバナンスの下で事業として成立させる。このダイナミックな価値創造プロセスこそが、日立を「社会の公器」たらしめる原動力となっている。

第4章 価値創造の源泉、人的資本ー28万人の「個」をエンパワーする

日立の変革を支える最も重要な資本は何か。CEOの小島は「真のOne Hitachi」の実現には、28万人の従業員の力の結集が不可欠だと語る。社会イノベーション事業という複雑で高度な価値創造は、個々の従業員が持つ多様な知見や強みが有機的に結合して初めて可能になる。日立の人財戦略は、この「個」のエンパワーメントを核心に据えている。

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)ー イノベーションを生む土壌 日立にとって、DEIは社会的要請への対応という次元を超え、イノベーション創出のための経営戦略そのものである。多様なバックグラウンドや視点を持つ人々が本音で議論し、高め合える環境こそが、新たな価値を生み出すと確信しているからだ。 その意志は、経営層の構成に明確に表れている。2025年4月には、外国人役員比率が26.1%、女性役員比率が15.9%に達した。さらに、2030年度までに女性役員比率30%以上という高い目標を掲げる。 重要なのは、これがトップダウンの押し付けではないことだ。2024年には、CEOを含む経営幹部84名がDEIをテーマとしたワークショップに参加。さらに、全従業員の個人目標設定において、目標全体の5%をDEIに関する行動目標に割り当てる取り組みを開始した。経営層から現場まで、DEIを「自分事」として捉える文化を醸成しようとしている。

エンゲージメント向上ー 従業員と企業の成長を同期させる 従業員のエンゲージメントは、企業の持続的成長のバロメーターである。日立は、従業員サーベイを通じてエンゲージメントスコアを継続的に測定し、その向上を経営の重要KPIと位置づけている。2024年のグローバル平均スコアは68.6ポイントであったが、「Inspire 2027」では80ポイントという挑戦的な目標を設定した。 この目標達成のため、日立は従業員と企業の価値向上を同期させる仕組みをグローバルで展開している。その一つが、従業員向け株式購入プラン(ESPP)だ。2027年度までに15万人の従業員に参加機会を提供することを目指し、従業員が株主として経営に参画する意識を高める。また、シニアリーダー層約1,500名を対象に譲渡制限付株式ユニット(RSU)制度を導入し、中長期的な企業価値向上へのコミットメントを促す。これらの施策は、従業員のウェルビーイングを追求することが、結果として企業価値を高めるという信念に基づいている。

未来を担う人材の育成と獲得 デジタルセントリック企業への変革を加速するためには、それを担う人材の育成と獲得が急務である。日立は、デジタル人材を2024年度には9.5万人まで増強し、さらに生成AIプロフェッショナルを2027年度までに5万人育成するという大規模な計画を推進している。 特に注目すべきは、次世代の経営を担うグローバルリーダーの育成だ。日立は、サクセッションプランニングを極めて重要な経営課題と捉え、体系的な育成プロセスを構築している。執行側では、将来の経営者候補を早期に選抜し、困難な課題を与える「タフ・アサインメント」を通じて育成する。一方、監督側である指名委員会は、CEO候補者を継続的に議論・評価し、絞り込みを行う。この両輪によって、リーダーシップパイプラインの構築を目指している。その一環として、2027年度までに1,000人のグローバルリーダーを創出する目標を掲げ、選抜された人材に集中的なリーダーシップ開発プログラムを提供している

日立の人財戦略は、単なる人事制度の集合体ではない。それは、DEIという土壌を耕し、エンゲージメントという水と肥料を与え、次世代リーダーという太い幹を育てる、壮大な生態系(エコシステム)の構築である。この生態系から生まれるエネルギーこそが、日立の価値創造の源泉であり、未来への最大の投資なのである。

価値創造の源泉、人的資本

28万人の「個」をエンパワーする

22.5%

女性管理職比率

26.1%

外国人従業員比率

68.6

従業員エンゲージメントスコア

2030年に80を目標

出典:日立製作所 統合報告書2025(p.4・46)

第5章 価値の統合と未来への挑戦ー「Inspire 2027」が描く成長シナリオ

これまでに論じてきた理念、デジタル(Lumada)、ESG、そして人的資本。これら日立の変革を構成する要素は、2025年度から始動した中期経営計画「Inspire 2027」において、一つの壮大な成長戦略へと統合される。この計画の核心は「Value Integration(価値の統合)」というコンセプトにあり、それは日立がこれまでのM&A主導の成長フェーズから、内なる力を最大限に引き出す「オーガニック成長へのモードチェンジ」を遂げることを意味する。

「Inspire 2027」が描くのは、高い収益性と持続的な成長を両立させる未来像だ。その達成度を測るため、5つの野心的な財務KPIが設定された。2025年度から2027年度にかけての売上収益の年平均成長率(CAGR)を7〜9%、最終年度の調整後EBITA率を13〜15%、ROIC(投下資本利益率)を12〜13%、そしてキャッシュフローコンバージョン率を90%超にまで高める。これらの数字は、単なる財務目標ではない。それは、これまでの変革の成果を、揺るぎない企業価値向上へと結実させるという経営陣の強い決意の表れである。

この成長シナリオの主役は、引き続きLumadaである。計画では、Lumadaを中核に据え、デジタルシステム&サービス、エネルギー、モビリティ、コネクティブインダストリーズという主力4事業の強化を図る。特に、日立の強みが最大限に発揮されるエネルギーやインダストリー分野へのLumadaの適用範囲を拡大し、生成AIとドメインナレッジの融合によって、成長を続けるインストールベースから新たな価値を創出していく。

さらに日立は、次の成長の柱を育てるための新たな仕掛けとして、2025年度からCEO直下に「戦略SIB(Social Innovation Business)ビジネスユニット」を新設した。この組織は、生成AIの普及や脱炭素化の加速といったメガトレンドを捉え、データセンター、eMobility、スマートシティ、ヘルスケアという4つの領域に焦点を当てる。例えば、エネルギー需要とAI活用を両立するサステナブルデータセンターの構築や、電化社会を支えるバッテリーサーキュラーエコノミーの実現など、未来の社会課題を先取りした事業開発をグローバルで加速させる。

この壮大な計画を支えるのが、規律あるキャピタルアロケーションだ。日立は、成長投資と株主還元、そして財務健全性のバランスを重視する。Inspire 2027の期間中、研究開発に1.3兆円を投じ、Lumada開発と将来事業の技術開発を推進する。一方で、株主還元も積極的に行う。2025年度には、配当総額約2,000億円に加え、自己株式取得約3,000億円を計画しており、総還元規模は過去最大となる見込みだ。これは、コアFCFまたは当期利益の50%以上を還元するという基本方針に基づくもので、成長によって得られた果実をステークホルダーと分かち合う姿勢を明確にしている。

この成長と還元の両立を可能にするのが、CFOとCRMO(Chief Risk Management Officer)を兼務する体制の下で推進される高度なリスクマネジメントである。トップダウンとボトムアップのアプローチを組み合わせ、グループ全体で網羅的にリスクを管理することで、不確実性の高い経営環境においても、計画の着実な実行を目指す。

「Inspire 2027」は、日立がこれまでに蒔いてきた変革の種を収穫し、次の100年のための新たな種を蒔くための計画である。理念を羅針盤とし、Lumadaをエンジンとし、ESGを事業機会とし、人的資本をエネルギー源とする。これらすべての価値を統合し、オーガニックな成長サイクルを確立すること。それこそが、日立が描く未来への挑戦の核心なのである。

Inspire 2027

構造改革から、オーガニック成長へ

  1. 2015〜21年

    構造改革フェーズ

    事業ポートフォリオを再構築

  2. 2024年

    オーガニック成長へモードチェンジ

  3. 2025年

    「Inspire 2027」始動

    収益成長率7〜9%を目標に

出典:日立製作所 統合報告書2025(p.7・13)

結論、ハーモナイズドソサエティの実現へー日立は「社会の公器」たりえるか

日立の変革の旅路をたどると、そこには一貫した物語が流れている。それは、1910年の創業時に小平浪平が掲げた「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という理念が、1世紀以上の時を超えて現代的な形で再解釈され、実行されているという壮大な物語だ。

巨大コングロマリットが陥りがちな事業のサイロ化と複雑性を乗り越え、日立は「社会イノベーション事業」という明確な旗印の下で、自らの存在意義を再定義した。その変革は、過去の成功体験を破壊し、未来の価値創造へと舵を切る、痛みを伴うプロセスであった。しかし、その根底には常に、社会課題を解決することが自社の成長に繋がるという、揺るぎない信念があった。

  • 理念の円環は、創業の精神を「社会イノベーション事業」へと昇華させ、28万人の従業員が進むべき方向を示す羅針盤となった。
  • デジタルの円環は、「Lumada」という強力なエンジンを生み出し、日立が持つ膨大な物理的アセットと現場知見を、データ駆動型の価値創造へと転換するメカニズムを構築した。
  • ESGの円環は、「プラネタリーバウンダリー」という地球規模の制約を事業機会と捉え、環境価値と経済価値を両立させる「攻めのサステナビリティ経営」を可能にした。
  • 人的資本の円環は、DEIとエンゲージメント向上を通じて、多様な個の力をイノベーションの源泉へと変え、変革を担う次世代リーダーを育成する土壌を育んだ。

そして今、これらの円環は「Inspire 2027」という新たな中期経営計画の下で一つに統合され、企業価値向上のための強力な推進力となっている。日立が目指すのは、環境、レジリエンス、安全安心、そしてウェルビーイングが調和した「ハーモナイズドソサエティ」の実現である。

もちろん、その道のりは平坦ではない。地政学リスクの増大、グローバルでの熾烈な人材獲得競争、そして巨大組織であるがゆえの変革のイナーシャ(慣性)など、乗り越えるべき課題は山積している。オーガニック成長へのモードチェンジが真に成功するかは、まだ未知数だ。

しかし、日立の変革物語が示すのは、巨大企業であっても、明確な理念と一貫した戦略、そしてそれを実行する強い意志があれば、自己変革は可能であるという事実だ。日立は今、創業者が目指した「社会の公器」という理想を、21世紀のグローバル社会において、かつてないスケールで実現しようとしている。その挑戦の行方は、日本企業だけでなく、世界の資本主義の未来をも占う試金石となるだろう。

出典(117件)
  1. プラネタリーバウンダリー コンセプト:プラネタリーバウンダリー(p.13)
  2. ウェルビーイング コンセプト:ウェルビーイング(p.13)
  3. 経済成長 コンセプト:経済成長(p.13)
  4. テクノロジーとビジネスモデルの革新 価値創造サイクル:テクノロジーとビジネスモデルの革新(p.3)
  5. HITACHI 日立製作所のロゴ(p.1)
  6. 9,783,370 百万円 2024年度売上収益(p.45)
  7. 10835 億円 Adj. EBITA (2024年度)(p.4)
  8. 32 % 売上収益におけるデジタルシステム&サービス比率(p.4)
  9. 27 % 売上収益におけるコネクティブインダストリーズ比率(p.4)
  10. 25 % 売上収益におけるモビリティ比率(p.4)
  11. 11 % 売上収益におけるエネルギー比率(p.4)
  12. 61 % 地域別売上収益 海外(p.4)
  13. コングロマリットからデジタルセントリックな社会イノベーション企業へ成長機会をつかみ、企業価値向上へと進化を加速 CEOメッセージ:コングロマリットから成長機会を掴む(p.7)
  14. 10 年以上 社会イノベーション事業のグローバルリーダーを目指す変革の旅(p.8)
  15. 28 万人 日立グループの従業員数(p.13)
  16. 1910 日立製作所創業年(p.5)
  17. 小平 浪平 創業者:小平 浪平(p.5)
  18. ハーモナイズド・ソサエティの実現 企業理念:ハーモナイズド・ソサエティの実現(p.31)
  19. 5馬力誘導電動機 小平浪平氏のもとで開発された最初の製品(p.5)
  20. 和・誠・開拓者精神 日立創業の精神:和・誠・開拓者精神(p.5)
  21. 和・誠・「開拓者精神」 日立のリーダーシップの精神「和・誠・「開拓者精神」」(p.12)
  22. 320000 名 グローバル従業員数(連結)(p.48)
  23. 社会の公器 企業の役割:社会への貢献(p.7)
  24. 日立グループ・アイデンティティ 日立グループ・アイデンティティ(p.5)
  25. 社会イノベーション事業でハーモナイズドソサエティの実現に貢献 ミッション:社会イノベーション事業でハーモナイズドソサエティの実現に貢献(p.3)
  26. ミッションを実現するために大切にしていく価値 バリュー:ミッション実現のために大切にする価値(p.5)
  27. イノベーションで応え、優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします 日立グループ・ビジョン:イノベーションで応え、活気あふれる世界を(p.5)
  28. ハーモナイズドソサエティ コンセプト:ハーモナイズドソサエティ(p.13)
  29. 15~21 中計 構造改革期間(p.7)
  30. 24 中計 オーガニック成長期間(p.7)
  31. 日立は変わり続ける 企業理念の進化:変化への適応(p.7)
  32. LUMADA ブランド:LUMADA(p.13)
  33. Value Integration バリューインテグレーション(p.30)
  34. グローバルに広がる膨大なインストールベース グローバルなインストールベース(p.16)
  35. Lumadaの進化―日立の強みを最大化する成長モデル Lumadaの進化―日立の強みを最大化する成長モデル(p.16)
  36. インストールベースをデジタル化 デジタライズド資産:インストールベース(p.16)
  37. 現場データをリアルタイムに収集・処理 Edge AI・組込ソフトウェア:リアルタイム処理(p.16)
  38. データを安全に管理・運用 データストア:安全な管理・運用(p.16)
  39. データとナレッジを融合 アプリケーション・AIエージェント:データとナレッジ融合(p.16)
  40. 予兆診断、保守・運用サービス デジタルサービス:予兆診断・保守(p.16)
  41. AIエージェントを活用した業務効率化 デジタルサービス:AI活用による効率化(p.16)
  42. アセットへのフィードバック アセットへのフィードバック(p.16)
  43. Lumada 80-20 長期目標「Lumada 80-20」(p.13)
  44. 38 % Lumada売上収益比率(2025年度目標)(p.15)
  45. 16 % Lumada Adj. EBITA率(2025年度目標)(p.15)
  46. Inspire 2027 日立グループ経営計画「Inspire 2027」(p.13)
  47. 23 % Lumada売上収益比率(2025年度見込)(p.20)
  48. 2024 年 HMAXの鉄道分野での提供開始年(p.9)
  49. 20 %削減 車両におけるCO2排出量削減目標(p.23)
  50. 2023 年 設備故障診断AIエージェントの実用化開始年(p.25)
  51. 2019 年 2019年 JRオートメーション買収(p.44)
  52. 2020 年 2020年 日立ABBパワーグリッド(現・日立エナジー)設立(p.44)
  53. 2021 年 GlobalLogic買収(p.6)
  54. デジタルケイパビリティ デジタルケイパビリティ(p.16)
  55. PLEDGES サステナビリティ戦略:「PLEDGES」(p.3)
  56. 100 %削減 事業所におけるCO2排出量カーボンニュートラル目標(p.24)
  57. 2050 年まで バリューチェーンを通じたカーボンニュートラル達成目標(p.25)
  58. 81 % CO2総量削減率 (2010年度比)(p.4)
  59. 1.42 億t CO2排出削減貢献量 (2022~2024年度 3年平均)(p.4)
  60. 75 % 独立取締役比率(p.35)
  61. 33.3 % 外国人取締役比率(p.35)
  62. 16.7 % 女性取締役比率(p.35)
  63. 58 % 2024年度取締役会における議論時間比率(p.42)
  64. 243 時間 中期計画関連に関する議論時間(p.42)
  65. 211 時間 戦略などに関する議論時間(p.42)
  66. 12 名 取締役の経験・識見・スキルマトリックス(p.38)
  67. 12 名 取締役の企業経営経験・識見(p.38)
  68. 12 名 取締役のグローバルビジネス経験・識見(p.38)
  69. 3 名 取締役のデジタル経験・識見(p.38)
  70. 4 名 取締役のサステナビリティ経験・識見(p.38)
  71. 3 サステナブル経営のさらなる進化(p.41)
  72. 具体的指標・目標を設定し、その実行を促進します。 サステナブル経営の指標設定(p.40)
  73. 156 件 サステナビリティ調達説明会(社)(p.46)
  74. 153 件 サステナビリティ監査(社)(p.46)
  75. 700 社 GHG排出量削減目標設定数(p.32)
  76. 持続的成長 真のOne Hitachiによる持続的成長(p.13)
  77. 人財戦略 Inspire 2027のキー ドライバーとしての「人財」戦略(p.31)
  78. 26.1 % 外国人役員比率 (2025年4月)(p.4)
  79. 22.5 % 在籍人員に占める女性比率(管理職)(p.46)
  80. 25.0 % 外国人役員比率目標(p.24)
  81. 268,655 人 従業員数(日立グループ)(p.48)
  82. 5 % DEIに関する行動目標(p.27)
  83. 68.6 ポイント 従業員エンゲージメントスコア(グローバル)(p.46)
  84. 80 ポイント 従業員エンゲージメントスコア(Inspire 2027目標)(p.34)
  85. 150000 人 グローバルでの従業員向け株式購入プラン(ESPP)の提供(p.33)
  86. 1500 名 従業員向け株式購入プラン(ESPP)の対象拡大(p.34)
  87. 1500 人 譲渡制限付株式ユニット(RSU)制度の対象拡大(p.34)
  88. 心身ともに健康で 幸せな生活分野での貢献(p.23)
  89. 9.5 万人 デジタル人材数(グローバル)(p.46)
  90. 50000 人 生成AIプロフェッショナル人数(p.32)
  91. 後継者育成 後継者育成のプロセス(p.43)
  92. 早期育成 執行側の後継者育成(p.43)
  93. CEO候補者絞り込み 監督側の後継者育成(p.43)
  94. 1000 人 成長戦略を実現するグローバルリーダー数(p.32)
  95. 1000 人 次世代グローバルリーダー育成プログラムの対象者数(p.34)
  96. 2025 年 中期経営計画「Inspire 2027」発表(p.8)
  97. Value Integration バリューインテグレーション(p.16)
  98. オーガニック成長へのモードチェンジ オーガニック成長へのモードチェンジ(p.13)
  99. 7~9 % Inspire 2027 目標:売上収益成長率(p.13)
  100. 13~15 % Inspire 2027 目標:Adj. EBITA率(p.13)
  101. 12~13 % Inspire 2027 目標:ROIC(p.13)
  102. 90 %超 Inspire 2027 目標:キャッシュフローコンバージョン(p.13)
  103. Lumada Lumadaをコアに主力4事業を強化(p.13)
  104. 2025 年度 Lumada強化の注力年度(p.9)
  105. 次なる成長の柱 次なる成長の柱(p.10)
  106. 2025 年 戦略SIB設立年(p.10)
  107. データセンター、eMobility、スマートシティ、ヘルスケア 戦略SIBの重点領域(p.10)
  108. エネルギー需要とAI活用を両立するサステナブルデータセンター データセンター市場の概要(p.10)
  109. 電化・電動化社会を支えるバッテリーサーキュラーエコノミー eMobilityの概要(p.10)
  110. 1.3 兆円 研究開発投資計画(2027年度まで)(p.17)
  111. 2000 億円 配当総額計画(2025年度)(p.11)
  112. 3000 億円 自己株式取得計画(2025年度)(p.11)
  113. 5000 億円 総還元規模計画(2025年度)(p.11)
  114. 50 %以上 コアFCFに対する配当(p.11)
  115. デジタルセントリック企業への変革 デジタルセントリック企業への変革(p.30)
  116. トップダウンアプローチ リスクマネジメントにおけるトップダウンアプローチ(p.30)
  117. リスクマネジメント One Hitachiのリスクマネジメント(p.30)
他社の理念 × 出典付き

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