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金融庁

金融庁が選んだ12社の人的資本開示 ─ 好事例集2026が示す11のポイントと企業データ

2026-04-11

2026年3月公表の金融庁「記述情報の開示の好事例集2026」を解説。投資家が期待する11ポイント、4枠組み評価の偏り、日立・丸井・イズミら先進企業のKPIデータを収録。

1. 金融庁が示した「12社・11ポイント」の意味

2026年3月27日、金融庁は「記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)」を公表した。2025年3月期有価証券報告書から人的資本7社・従業員の状況5社の計12社を好事例として選定し、投資家・アナリスト・有識者が期待する開示ポイントを11項目にまとめている

データ
12

好事例として選定された企業数

金融庁 記述情報の開示の好事例集2026

選定された12社は、製造業(日立製作所、デンソー、日清食品HD)、IT(NTTデータグループ、うるる)、金融(横浜フィナンシャルグループ)、小売(丸井グループ、イズミ)、ゲーム(カプコン)、水産(ニッスイ)、建設(熊谷組)、商社(双日)と業種が多様である。中堅・中小企業の参入も注目点の一つだ。

好事例集2026 選定12社の全リスト

出典:[金融庁「記述情報の開示の好事例集2026」p.2](https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260327/02.pdf#page=2)

セクション企業名主な評価軸
人的資本日立製作所戦略・指標・ガバナンス
人的資本NTTデータグループ戦略・指標
人的資本横浜フィナンシャルグループ戦略・指標
人的資本丸井グループ戦略・指標
人的資本イズミ戦略・指標
人的資本カプコン戦略・指標
人的資本(中堅・中小)うるるガバナンス・戦略・リスク・指標
従業員の状況デンソー戦略・指標
従業員の状況ニッスイ指標
従業員の状況熊谷組指標
従業員の状況日清食品ホールディングス指標
従業員の状況双日指標

2. 4枠組みで読む開示の偏り

金融庁は今回の好事例選定で、人的資本可視化指針の「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4枠組みに注目して各社を評価した

分析の結果、「戦略」と「指標及び目標」でそれぞれ7社が評価を受けた一方、「ガバナンス」は日立製作所とうるるの2社のみ、「リスク管理」はうるる1社のみだった

4枠組み別の評価企業数(好事例集2026)

出典:[金融庁「記述情報の開示の好事例集2026」p.2-4](https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260327/02.pdf#page=6)

枠組み評価企業数代表企業
ガバナンス2社日立製作所、うるる
戦略7社日立・NTTデータ・横浜FG・丸井・イズミ・カプコン・うるる
リスク管理1社うるる
指標及び目標7社日立・NTTデータ・横浜FG・丸井・イズミ・カプコン・うるる

「戦略」と「指標」に集中し、「ガバナンス」と「リスク管理」の開示が手薄という傾向は、日本企業の人的資本開示が整備フェーズから成熟フェーズへ移行する途上にあることを示している

唯一4枠組みすべてで評価されたうるるは中堅・中小企業であり、規模に関わらず体系的な開示が可能であることを実証した事例として注目される

3. 投資家が期待する11のポイント

好事例集2026は、投資家・アナリスト・有識者へのヒアリングをもとに、人的資本開示への期待を11項目に整理した

3-1. 戦略と指標の連動(ポイント①③④⑤)

経営戦略と人材戦略の連動性を明確に示すことが、11ポイント中で最も基本的な要件として位置づけられている。単なる人事施策の羅列ではなく、事業戦略の方向性と人材施策の因果関係を、価値創造プロセスや図表で可視化することが有用とされる

指標については、戦略と指標及び目標の連動が重要で、エンゲージメントスコアなどの数値は増減だけでなく構成要素の変化に着目し、どの課題にどう対応してどう成果につながったかを説明することで意味が伝わりやすくなる

CHROとCFOがそれぞれ管掌するKPIを連動させ、要因→活動→成果(財務)のつながりを明示することは、投資家が人材戦略を評価するうえで有用なアプローチとして挙げられている

事業戦略ごとの必要人材数やスキル構成を定量的に開示し、育成・採用計画がどのように収益予測に結びつくかを説明することも、企業価値評価に資する情報として期待されている

3-2. 定量情報・ベンチマーク・時系列(ポイント②⑥⑦)

人的資本が他社との差別化において重要な要素となる事業では、定量情報を積極的に開示することが有用とされる。時系列での変化と継続的な取組を開示することも、長期的な改善の軌跡を示すうえで重要で、企業文化の変革度合いを評価できるとされる

投資家が期待する定量開示の3要素

出典:[金融庁「記述情報の開示の好事例集2026」p.2-1〜2-2](https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260327/02.pdf#page=3)

要素期待される内容参考企業
定量情報非財務と財務の連動を数値で示す横浜FG、カプコン
時系列長期改善の軌跡(単年度でなく複数年)日立・丸井・イズミ
ベンチマーク出所・算出方法付きで業界標準と比較NTTデータ・デンソー・ニッスイ

ベンチマーク数値の開示にあたっては、指標の出所や算出方法を記載し、目標値の妥当性と改善余地を説明することが望ましい。他社比較や業界標準との関係を明示することで開示の信頼性が高まる

3-3. 多様性指標の深化(ポイント⑧⑨⑪)

多様性指標については、女性管理職比率・男性育休取得率・男女間賃金格差の数値開示に加え、海外・国内出向や駐在経験の割合など、管理職登用に必要なキャリア形成の実態を理解できる「質の指標」の開示も期待されている

男性育休取得率は、単なる取得率ではなく、具体的な取得日数や取得による効果を開示することで、企業文化への定着度が評価できる。取得率が100%であっても1日取得では実質的な意味が乏しいという投資家の問題意識が反映されている

海外子会社を含めた連結ベースでの多様性指標開示も有用とされ、異なる定義や計算方法を用いる場合は内容を具体的に記載することが重要とされた

3-4. 弱みを含めた誠実な開示(ポイント⑩)

投資家が最も注目する開示姿勢:「都合の悪い数字も開示する」

多様性指標において、都合のよくない数字であっても開示し、自社の弱みを含んだ原因について客観的に分析を行い、解消のための対応策を示すことは、企業の人事戦略の進捗を把握するうえで有用とされる。

  • 弱みの原因を客観的に分析する
  • 解消のための具体的な施策を明示する
  • 施策→成果のつながりを継続的に開示する

デンソーと双日の取組が参考開示事例として挙げられている。ネガティブ情報の開示が投資家からの信頼性向上につながるという視点は、従来の「ポジティブ情報中心の開示」からの転換を示している

4. 先進企業のKPI達成データ

日立製作所:3つのKPIを中期経営計画目標以上に達成

日立製作所は2024中期経営計画において人的資本に関する3つのKPIを設定し、2025年3月期有報でその達成状況を開示した

デジタル人財の確保・育成は中経計画目標9万7千人を超え10万7千人を達成、従業員エンゲージメントスコアは中経目標68.0%を前倒しで達成後にストレッチ目標71.0%も超え71.5%を記録、役員の女性比率15.9%・外国人比率26.1%でいずれもKPI15%を達成した。デジタル人財は2021年の6万7千人から2024年に10万7千人へと3年で1.6倍に成長した

デジタル人財数
人的資本
107,000
2024年度
中経目標9.7万人を超過達成(国内5.6万+海外5.1万)
従業員エンゲージメント
人的資本
71.5%
2024年度
+13.1%
ストレッチ目標71.0%も超過達成
役員女性比率
人的資本
15.9%
2024年度
KPI 15%を達成
役員外国人比率
人的資本
26.1%
2024年度
KPI 15%を大幅超過達成

NTTデータグループ:人財戦略3方針×KPIの目標・実績・翌年度目標を三列開示

NTTデータグループは「Advanced Training」「Promote DEI」「Future Workplace」の3方針に紐づく指標を、目標・実績・翌年度目標の3列で開示する形式を採用している。プロフェッショナル人財CDP新規認定者数は目標1,500名に対し実績1,850名、グローバル経営人財GLP新規修了者数は目標20名に対し実績32名、男女育休取得率は男女とも100%(男性105%)を達成した

NTTデータグループ 人財戦略KPI(2025年3月期)

出典:[NTTデータグループ 2025年3月期有価証券報告書 p.34](https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260327/02.pdf#page=14)

指標目標実績
CDP新規認定者数1,500名1,850名
GLP新規修了者数20名32名
女性管理職比率(2025年)30%11.9%(中長期目標)
男性育休取得率100%105%
女性育休取得率100%100%
障がい者雇用率2.5%以上2.5%

横浜フィナンシャルグループ:人材×収益の因果関係を数値化

横浜FGは、営業人員数(人材のQuantity)×一人あたりソリューション収益(Quality)×従業員意識(Engagement)の3軸で人的資本戦略を可視化する好事例として評価された。一人あたりソリューション収益は2024年度実績97百万円から2027年度計画153百万円(1.5億円)への成長を目標とし、人的資本投資と財務アウトカムの連動を明確に示している

丸井グループ:10年超の時系列で企業文化変革を可視化

丸井グループは、女性リーダー比率が2014年3月期の20%から2025年3月期に39%、2026年3月期に40%へ改善した軌跡を開示した。社員エンゲージメント「自分が仕事のうえで何を期待されているかが分かっている」は2012年の46%から2024年に81%へと35ポイント改善している

女性リーダー比率
人的資本
40%
2025年度
+2.6%
2014年20%から10年で2倍に成長
エンゲージメント(役割認識)
人的資本
81%
2024年度
「自分が何を期待されているか分かっている」
女性の上位職志向
人的資本
75%
2025年度
2026年3月期目標
人的資本投資額
人的資本
190億円
2025年度
継続的な投資拡大

イズミ:人的資本ROIという独自指標を開示

イズミは人的資本ROIという独自指標を算出して開示している企業として好事例集に選定された

データ
44.8%

人的資本ROI(2025年度)

45
2022年度
57.5%
2024年度
42.0%
2030年目標
68.0%

2030年度目標 68.0% ─ 2024年度42.0%から反転上昇

イズミ 2025年2月期有価証券報告書

イズミ大学参加人数(累計)
人的資本
103
2025年度
2030年度目標 250名
生鮮技能ライセンス取得率
人的資本
60%
2025年度
2030年度目標 70%

5. 開示プロセスの工夫:3社が示すアプローチ

1

日立製作所:外部評価を活用した指標選定

他社ベンチマーク・外部投資家の評価を通じて開示項目を選定。サステナビリティ部門との協働PJ体制を構築し、人財部門幹部の目標設定に人的資本指標を反映。グローバル連結データの取得プロセスも確立した。

課題:投資家要望に基づく開示拡充・内閣府令・CSRDへの対応

2

NTTデータグループ:価値創造プロセスの1枚図で可視化

副社長をトップとするタスクフォース型の検討体制でトップダウンとボトムアップ両面から議論を推進。人財への投資と企業価値への関連・アウトカムを1枚の図で明確に表現した。

有価証券報告書と統合レポートの整合性を取る方針で開示を整備

3

デンソー:弱みの原因分析→改善策の可視化に転換

「女性管理職比率」「男女賃金差異」が低い事実を開示するだけでなく、女性入社者の少なさ→女性採用強化、昇格上限のある職種の女性比率→一般職と総合職の統合、という具体的な改善プロセスを開示する方針に転換した。

人的資本責任者(副社長)・サステナビリティ統括責任者(執行役員)が積極的に関与

デンソーのケースは、2023年3月期の「法定要件を満たす最低限の開示」から転換し、原因分析と改善策の可視化に踏み込んだ点が評価された。「都合のよくない数字の開示」が投資家の信頼獲得につながることを示す好事例とされる

6. 中堅・中小企業でもできる:うるるの示すこと

うるる:中堅・中小企業唯一の選定、4枠組みすべてで評価

うるるは12社中唯一の中堅・中小企業として選定され、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4枠組みすべてで評価を受けた唯一の企業でもある。大企業に比べリソースが限られる中でも、4枠組みを網羅した体系的な人的資本開示が可能であることを示している。

  • 4枠組み全評価(12社中唯一)
  • 中堅・中小企業として唯一の選定
  • ガバナンス・リスク管理の開示が手薄な大企業を超えた体系性

好事例集2026が中堅・中小企業の事例を明示的に取り上げた意義は大きい。「大企業の義務」として受け止められがちな人的資本開示が、規模を問わず質の高い情報開示として成立しうることを金融庁が明確にメッセージとして発信したと読み取れる

出典(21件)
  1. 好事例集2026:人的資本7社+従業員の状況5社=計12社(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.4)
  2. 好事例評価:「戦略」「指標」は充実、「ガバナンス」「リスク管理」は未発達(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.4)
  3. うるる:中堅・中小で唯一選定、4枠組み全評価(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.4)
  4. 投資家期待①:経営戦略と人材戦略の連動(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.3)
  5. 投資家期待③:戦略と指標・目標の連動(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.3)
  6. 投資家期待④:財務アウトカムへの接続(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.3)
  7. 投資家期待⑤:人材ポートフォリオの定量開示(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.4)
  8. 投資家期待②:定量情報の積極的開示(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.3)
  9. 投資家期待⑥:時系列開示による変革の可視化(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.4)
  10. 投資家期待⑦:ベンチマーク数値の開示(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.4)
  11. 投資家期待⑧:多様性は量だけでなく質の指標も(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.4)
  12. 投資家期待⑨:育休は取得率だけでなく日数・効果も(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.5)
  13. 投資家期待⑪:多様性指標の連結ベース開示(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.5)
  14. 投資家期待⑩:弱みも含めた誠実な開示(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.5)
  15. 日立:デジタル人財10.7万人、エンゲージメント71.5%達成(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.11)
  16. 日立:デジタル人財6.7万人→10.7万人(3年で1.6倍)(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.11)
  17. NTTデータ:CDP認定1,850名、育休取得率男女100%(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.14)
  18. 横浜FG:一人あたりソリューション収益97百万円→153百万円目標(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.16)
  19. 丸井:女性リーダー比率20%→40%、エンゲージメント46%→81%(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.17)
  20. イズミ:人的資本ROI 44.8%(2030年目標68.0%)(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.19)
  21. 好事例:デンソーの弱みを含む誠実な開示(記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況), p.8)

使用データ一覧

disclosure_practices(21件)
コンテキスト年度出典
好事例集2026:人的資本7社+従業員の状況5社=計12社
2026年
金融庁好事例集2026が選定した人的資本開示好事例12社:(1)人的資本セクション=日立製作所、NTTデータグループ、横浜フィナンシャルグループ、丸井グループ、イズミ、カプコン、うるる(中堅・中小)の7社。(2)従業員の状況セクション=デンソー、ニッスイ、熊谷組、日清食品ホールディングス、双日の5社。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.4
好事例評価:「戦略」「指標」は充実、「ガバナンス」「リスク管理」は未発達
2026年
金融庁好事例集2026では、好事例の選定にあたって「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの枠組みに注目。12社の人的資本開示事例を分析し、各社がどの枠組みで優れた開示を行っているかを整理。7社が「戦略」で評価、7社が「指標及び目標」で評価。「ガバナンス」で評価されたのは日立製作所とうるるの2社のみ。「リスク管理」で評価されたのはうるるのみ。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.4
うるる:中堅・中小で唯一選定、4枠組み全評価
2026年
うるる(中堅・中小企業)の人的資本開示好事例:12社中唯一の中堅・中小企業として選定。「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4枠組みすべてで評価された唯一の企業。大企業に比べリソースが限られる中でも、4枠組みを網羅した開示が可能であることを示す事例。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.4
投資家期待①:経営戦略と人材戦略の連動
2026年
投資家が期待する開示ポイント①:経営戦略と人材戦略の連動性を明確に示すこと。単なる人事施策の羅列ではなく、事業戦略の方向性と人材施策の因果関係を、価値創造プロセスや図表で可視化することが有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.3
投資家期待③:戦略と指標・目標の連動
2026年
投資家が期待する開示ポイント③:人的資本の指標は、戦略と指標及び目標の連動が重要。エンゲージメントスコアなどの指標は単なる数値の増減だけでなく、数値を構成する要素の変化に着目し改善施策との関連性を示すことが望ましい。どの課題に対してどのような対応を行い、どのような成果につながったかを説明することで、スコアの意味が理解しやすくなるため有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.3
投資家期待④:財務アウトカムへの接続
2026年
投資家が期待する開示ポイント④:人的資本の取組が財務アウトカムにどうつながるかを開示することは重要。CHROとCFOがそれぞれ管掌するKPIを連動させ、要因→活動→成果(財務)のつながりを明示することなどは、投資家が企業の人材戦略の評価を行うにあたり有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.3
投資家期待⑤:人材ポートフォリオの定量開示
2026年
投資家が期待する開示ポイント⑤:事業戦略ごとの必要人材数やスキル構成を定量的に開示することが望ましい。どの事業にどれだけの人材が必要で、育成・採用計画がどのように収益予測に結びつくのかなど、企業の目的意識が理解できるデータを開示することで、データの意味が伝わり企業価値評価に資する情報となるため有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.4
投資家期待②:定量情報の積極的開示
2026年
投資家が期待する開示ポイント②:人的資本に関する非財務情報と財務情報の連動が重要で、人材が他社との差別化において重要な要素となる事業においては、定量情報を積極的に開示することが有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.3
投資家期待⑥:時系列開示による変革の可視化
2026年
投資家が期待する開示ポイント⑥:時系列での変化と継続的な取組を開示することが望ましい。単年度の新施策だけでなく、長期的な改善の軌跡を示すことで、企業文化の変革度合いを評価できるため有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.4
投資家期待⑦:ベンチマーク数値の開示
2026年
投資家が期待する開示ポイント⑦:開示する施策に関連したベンチマークとなる数値を開示することは、企業がその戦略で目指すべき方向を理解するために有用。また、ベンチマーク指標の出所や算出方法を記載し、目標値の妥当性と改善余地を説明することが望ましい。他社比較や業界標準との関係を明示することも、開示の信頼性が高まるため有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.4
投資家期待⑧:多様性は量だけでなく質の指標も
2026年
投資家が期待する開示ポイント⑧:多様性指標(女性管理職比率、男性育休取得率、男女間賃金格差)だけでなく、経験の質を測る指標を開示することが望ましい。例えば、海外・国内出向や駐在経験の割合など、管理職登用に必要なキャリア形成の実態を理解できる情報を示すことが有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.4
投資家期待⑨:育休は取得率だけでなく日数・効果も
2026年
投資家が期待する開示ポイント⑨:男性育休取得率は、単なる取得率ではなく、具体的な取得日数や取得による効果を開示することで、企業文化への定着度が評価できるため有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.5
投資家期待⑪:多様性指標の連結ベース開示
2026年
投資家が期待する開示ポイント⑪:多様性に関する指標については、海外子会社を含めた連結ベースでの開示を行うことも有用。また、海外子会社における指標について女性活躍推進法等と異なる定義や計算方法を用いる場合には、その内容を具体的に記載することが重要。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.5
投資家期待⑩:弱みも含めた誠実な開示
2026年
投資家が期待する開示ポイント⑩:多様性指標の開示において、都合のよくない数字であっても開示し、自社の弱みを含んだ原因について客観的に分析を行い、その解消のための対応策について開示を行うことは、企業の人事戦略の進捗を把握するうえで有用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.5
日立:デジタル人財10.7万人、エンゲージメント71.5%達成
2026年
日立製作所の2024中経KPI達成状況(2025年3月期有報):デジタル人財の確保・育成は中経計画目標9万7千人を超え10万7千人を達成。従業員エンゲージメントスコアは中経計画目標の68.0%を2022年度に前倒しで達成しストレッチ目標の71.0%も超え71.5%を達成。多様な視点では役員における女性比率15.9%、外国人比率26.1%で共にKPIの15%を達成。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.11
日立:デジタル人財6.7万人→10.7万人(3年で1.6倍)
2026年
日立製作所のデジタル人財育成実績:2021年29,000人(国内)+38,000人(海外)=67,000人→2022年42,000人+41,000人=83,000人→2024年56,000人+51,000人=107,000人(中経目標97,000人を超過達成)。100コース以上のDX研修体系や実案件での実践経験を通じた育成プログラムを運用。GlobalLogic社のメソドロジーも活用。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.11
NTTデータ:CDP認定1,850名、育休取得率男女100%
2026年
NTTデータグループの人財戦略KPI実績(2025年3月期有報):プロフェッショナル人財CDP新規認定者数は目標1,500名に対し実績1,850名。グローバル経営人財GLP新規修了者数は目標20名に対し実績32名。女性管理職比率は目標30%に対し2025年実績11.9%(2024年度目標15%に対し36.8%)。男女育休取得率は男女とも100%達成(男性105%)。障がい者雇用率は実績2.5%で目標の2.5%以上を達成。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.14
横浜FG:一人あたりソリューション収益97百万円→153百万円目標
2026年
横浜フィナンシャルグループの人的資本KPI(2025年3月期有報):営業人員数は2024年度実績2,395名→2027年度計画2,510名。一人あたりソリューション収益は2024年度実績97百万円→2027年度計画153百万円(1.5億円)。会社の総合的魅力(従業員意識調査)向上し前中計期間中の最高スコア3.40以上を目標。女性管理投稿者比率は2024年度21.6%→2027年度24.6%。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.16
丸井:女性リーダー比率20%→40%、エンゲージメント46%→81%
2026年
丸井グループの企業文化変革指標(2025年3月期有報):女性リーダー比率は2014年3月期20%→2025年3月期39%→2026年3月期40%。女性の上位職志向は2014年3月期42%→2025年3月期58%→2026年3月期75%。男性の育休取得率100%の維持は2014年3月期14%→以降100%維持。「男性は仕事、女性は家事育児」という性別役割分担意識を見直すことに共感する人の割合は2025年3月期55%→2026年3月期50%。社員エンゲージメントは「自分が仕事のうえで何を期待されているかが分かっている」が2012年46%→2024年81%。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.17
イズミ:人的資本ROI 44.8%(2030年目標68.0%)
2026年
イズミの人的資本ROI(2025年2月期有報):人的資本ROIを算出して開示しており、2022年度57.5%→2023年度47.9%→2024年度42.0%→2025年度44.8%→2030年度目標68.0%。戦略で記載した主要課題に対応する指標を時系列の推移で開示。独自指標として「イズミ大学参加人数累計」2024年度78名→2025年度103名→2030年度目標250名、「生鮮技能ライセンス取得率」2024年度52%→2025年度60%→2030年度目標70%も開示。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.19
好事例:デンソーの弱みを含む誠実な開示
2026年
デンソーの人的資本開示好事例:23年3月期から法定要件を満たす最低限の実績値と簡素な補足説明のみで開示していたが、「女性管理職比率」や「男女賃金金差異」が低いことについて会社の考えや取組みがステークホルダーに十分伝わらない可能性があることを課題として捉えた。原因を追究し、要因や改善活動を開示する方針に転換。女性入社者の少なさ→女性社員採用強化、昇格上限のある職種に占める女性比率→一般職と総合職の統合、といった具体的な改善プロセスを開示。
記述情報の開示の好事例集2026(人的資本、従業員の状況)
p.8

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