CGコード83原則が30に ─ パブコメ前に押さえる改訂案の構造変化
2026-04-11
2026年4月パブリックコメント開始。原則の大幅削減と「解釈指針」新設がもたらす企業実務への影響を読み解く
原則数の大幅削減(改訂案)
コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(2026年4月3日)
1. 何が起きたのか ─ パブコメ開始の意味
2026年4月3日、金融庁と東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」の第3回会合で改訂案を概ね了承し、4月中旬からパブリックコメント(意見募集)を開始する方向が示された[REF:cg_pubcom_expert_meeting_schedule]。
有識者会議の経緯
出典:[金融庁 有識者会議](https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/index.html)
| 回 | 開催日 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 第1回 | 2025年10月21日 | 論点整理・改訂の方向性議論 |
| 第2回 | 2026年2月26日 | 改訂案初版(28原則)提示 |
| 第3回 | 2026年4月3日 | 修正案(30原則)了承→パブコメへ |
CGコードの改訂は2015年の制定以来3回目(2018年、2021年に続く)となる。今回の改訂はコードの構造自体を変える点で、過去の「規定の追加・強化」型の改訂とは性質が異なる。
上場会社は、遅くとも2027年7月までに改訂コードに基づくコーポレートガバナンス報告書を提出することが求められる方向である[REF:cg_pubcom_cg_report_deadline_2027_july]。
パブコメは上場会社・投資家の双方にとって、改訂案の最終形に意見を反映できる唯一の機会となる。特に改訂案が企業実務に与える影響を検討するうえで、以下の構造変化を理解しておくことが重要である。
2. 構造変化の全体像 ─ 83原則が30になった理由
改訂案の最大の特徴は「プリンシプル化」「スリム化」にある。現行コードの83原則(基本原則5、原則31、補充原則47)が30原則に集約された[REF:cg_pubcom_principle_count_83_to_30]。
改訂案の構造変化
出典:[CGコード改訂案 p.1-3](https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20260403/03-1.pdf#page=1)
| 項目 | 現行コード | 改訂案 |
|---|---|---|
| 基本原則 | 5 | 4(基本原則5を第1章に統合) |
| 原則 | 31 | 30(スリム化+格上げ) |
| 補充原則 | 47 | 大幅削減→解釈指針に移管 |
| 合計 | 83 | 30 |
| 解釈指針 | なし | 新設(C-or-E対象外) |
| 章構成 | 5章 | 4章 |
「消えた」のではなく「移管された」
ここで重要なのは、原則数の削減が対応義務の軽減を意味しないことである[REF:cg_pubcom_slim_down_not_reduce_obligation]。改訂案は「解釈指針に移管された記載やコードから削除された記載についても、当該改訂前における対応の重要性が失われたものではない」と明記している。
つまり、形式的なコンプライ・オア・エクスプレインの対象は30原則に絞られるが、実質的な対応水準は維持される構造である。解釈指針に移管された多様性目標や取締役会構成の開示は、引き続きガバナンス報告書の実質的な開示対象となることに変わりはない。
解釈指針の新設 ─ 第三のカテゴリ
改訂案で新設された「解釈指針」は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないが、各原則の背景となる考え方やベストプラクティスを示す役割を担う[REF:cg_pubcom_interpretation_guideline_new_role]。現行の補充原則の多くがこの解釈指針に移管された。
企業実務者にとっての影響は、「エクスプレインが不要になった」ことよりも、「実質的な対応の判断を自社で行う裁量が広がった」ことにある。
3. 章構成の再編 ─ 株主との対話を第1章に
改訂案では現行の5章構成が4章に再編された[REF:cg_pubcom_chapter_restructure_5_to_4_plus_dialogue]。
章構成の変更
出典:[CGコード改訂案 p.6](https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20260403/03-1.pdf#page=6)
| 章 | 現行コード | 改訂案 |
|---|---|---|
| 第1章 | 株主の権利・平等性の確保 | 株主の権利・平等性の確保、**株主との対話** |
| 第2章 | 株主以外のステークホルダーとの適切な協働 | (同左) |
| 第3章 | 適切な情報開示と透明性の確保 | (同左) |
| 第4章 | 取締役会等の責務 | (同左) |
| 第5章 | 株主との対話 | **第1章に統合** |
第5章「株主との対話」が第1章に統合されたことは、対話がガバナンスの基盤であるとの位置づけが明確化されたことを意味する。
4. 人的資本・多様性 ─ パブコメで注目すべき3つの論点
改訂案の中で人的資本・多様性関連の変更は特に注目に値する。既存記事「CGコード改訂案の全貌」で詳述した内容を、パブコメの論点として整理する。
論点① 基本原則2:人的資本投資の初めての明記
改訂基本原則2の解釈指針で「人的資本への投資等や適切な分配」がステークホルダーとの協働の具体例として新たに明記された[REF:cg_pubcom_bp2_human_capital_investment_explicit]。人的資本投資が基本原則レベルで言及されるのは、2015年のコード制定以来初めてとなる。
これにより、企業が実施する人的資本への投資や従業員への分配は、単なるCSR施策ではなく、基本原則レベルの「ステークホルダーとの協働」として位置づけられることになる。
論点② 原則2-4:多様性確保の格上げ
多様性確保に関する規定が補充原則から原則2-4に格上げされた[REF:cg_pubcom_2_4_diversity_elevated_to_principle]。女性・外国人・中途採用者の管理職登用等における多様性確保の考え方と、自主的かつ測定可能な目標設定が、コンプライ・オア・エクスプレインの対象として明確に位置づけられた。
パブコメで検討すべき実務上の論点
原則2-4の格上げに伴い、エクスプレインの質がこれまで以上に問われる。「多様性確保の目標を設定していない」場合、その理由を合理的に説明する必要が生じる。
論点③ 原則4-1:成長投資としての人的資本
改訂原則4-1では取締役会の役割として、キャピタルアロケーションの説明責任が強化された[REF:cg_pubcom_4_1_capital_allocation_hc_explicit]。解釈指針では投資対象として「人的資本・知的財産等の無形資産への投資」が例示されている。
取締役会が「何に投資するか」を説明する際に、人的資本投資を明示的に検討対象とすることが求められる構造である。
5. 削除された原則 ─ 法令との重複解消
改訂案では、法令・上場規程と重複する原則が複数削除された[REF:cg_pubcom_deleted_principles_reasons]。
削除された主な原則と理由
出典:[CGコード改訂案 p.12-13](https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20260403/03-1.pdf#page=12)
| 現行原則 | 内容 | 削除理由 |
|---|---|---|
| 原則1-5① | 公開買付けへの対応 | 金商法上の意見表明報告書義務と重複 |
| 原則1-6 | 利益を害する資本政策 | 有価証券上場規程の適時開示と重複 |
| 原則1-7 | 関連当事者間取引 | 改訂案4-3と一部重複のため統合 |
これらの削除は「対応不要」を意味するのではなく、金商法や上場規程で既にカバーされていることの整理である。
6. サステナビリティと情報開示 ─ 統合と強化
サステナビリティに関する規定は改訂案4-4に統合された[REF:cg_pubcom_sustainability_consolidation_4_5]。ISSB基準やSSBJ基準の運用が進む中、サステナビリティ開示の国際的動向を踏まえた規定の整理が行われている。
また、補充原則3-1③では引き続き「人的資本や知的財産への投資等」について、経営戦略との整合性を意識した開示が求められている[REF:cg_pubcom_3_1_sustainability_hc_ip_disclosure]。
有価証券報告書の株主総会前開示については、改訂原則1-2で環境整備の重要な例として新たに明記された[REF:cg_pubcom_1_2_securities_report_pre_agm]。解釈指針では「株主総会開催日3週間前」という具体的な目安が示されている。
7. 企業実務者がパブコメで検討すべきこと
パブコメ検討のポイント
出典:[CGコード改訂案](https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20260403/03-1.pdf#page=1) を基に作成
| 論点 | 現行 | 改訂案 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|
| 原則数 | 83(C-or-E対象) | 30(C-or-E対象) | エクスプレインの対象が絞られるが実質対応は継続 |
| 多様性 | 補充原則(2-4①) | 原則に格上げ(2-4) | 目標未設定のエクスプレインが必須に |
| 人的資本 | 言及なし | 基本原則2に明記 | 投資戦略の説明対象として位置づけ |
| 有報開示 | 招集通知の早期発送 | 有報の総会前開示 | 3週間前提出が実質的な目安に |
| CG報告書 | ─ | 2027年7月まで | 準備期間は約1年 |
パブコメの提出は金融庁の意見募集ページから行うことができる。
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