MVV策定の5ステップ
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定方法を5つのステップで解説。実際の企業事例を交えながら、自社のMVVを作り上げるプロセスを具体的に紹介します。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は企業経営の羅針盤です。しかし、「何となく良さそうな言葉を並べる」だけでは、組織を導く力を持ちません。当サイトで分析した企業の事例からわかるのは、優れたMVVは「創り込む」プロセスから生まれるということです。本記事では、実際に機能するMVVを策定するための5つのステップを、企業事例を交えて解説します。
データベース:日本の上場企業31社以上のIR/ESGレポートを分析中
掲載企業:31社(随時追加)
抽出ファクト:70,816件
更新頻度:月次更新
ステップ1: 現状分析
MVV策定の第一歩は、自社の「今」を正確に理解することです。創業の原点に立ち返り、なぜこの事業を始めたのか、どのような価値を社会に提供してきたのかを振り返ります。
具体的には、創業理念・社史の振り返り、現在の事業ポートフォリオと強みの整理、ステークホルダー(顧客・従業員・株主・社会)の期待の把握、競合他社のMVVベンチマーク調査の4つの作業を行います。
この段階で重要なのは、自社の「独自性」を見つけることです。他社でも言えるような汎用的な表現ではなく、自社だけが持つ歴史・技術・文化を反映した要素を抽出します。
エーザイ株式会社
エーザイは創業以来の「患者様のために」という原点を掘り下げ、「human health care(hhc)」という独自の理念体系を構築しました。
hhceco企業への進化
hhc理念+エコシステムモデルによる社会善の実現
エーザイは創業の原点である「患者様のために」を掘り下げ、hhcという独自の理念体系を構築。さらにエコシステムモデルへと進化させています。MVV策定は一度で完成するものではなく、継続的に深化させるプロセスです。
hhc活動のグローバル年間実施数
500件以上
策定したMVVを年間500件以上の活動に落とし込むことで、理念が「言葉」から「行動」に変換されています。策定段階から浸透施策を設計することの重要性を示しています。
ステップ2: 将来像の設定
現状分析の次は、5年後・10年後・30年後の「ありたい姿」を描きます。ビジョンは単なる売上目標ではなく、「自社がどのような存在になりたいか」「社会にどのようなインパクトを与えたいか」を言語化するプロセスです。
将来像を設定する際には、社会課題との接点を見つけることが重要です。SDGsや業界固有の課題と自社の能力がどこで交わるかを検討します。
事業環境の変化を見据えた長期的な視点も欠かせません。デジタルトランスフォーメーション、脱炭素、人口動態の変化など、自社を取り巻く環境がどう変わるかを踏まえた将来像を描きます。
キリンホールディングス
キリンホールディングスは「よろこびがつなぐ世界へ」というビジョンのもと、ビール会社から「食から医」にわたる価値創造企業への変革を実現しました。発酵技術という共通基盤を活かした事業ドメインの拡張は、ビジョンに支えられた戦略的選択です。
ヘルスサイエンス商品の社会的インパクト目標
12,500万人
「よろこびがつなぐ世界へ」というビジョンが、1.25億人への健康貢献という定量目標に変換されています。ビジョン策定時に「測定可能な成果指標」を同時に設計した好例です。
ステップ3: 言語化ワークショップ
分析と将来像の設定ができたら、いよいよMVVの「言葉」を紡ぐ段階です。経営層だけでなく、幅広い階層の従業員を巻き込んだワークショップ形式が効果的です。
ワークショップでは、「自社が社会からなくなったら、誰が困るか?」「10年後、自社の新聞記事の見出しは?」「自社らしい判断とは何か?」といった問いを投げかけ、参加者の言葉を引き出します。
複数の候補案を作成し、社内の異なる部門・階層でテストすることも重要です。「自分の仕事にどう関係するか説明できるか」「覚えやすいか」「誇りを持てるか」という3つの基準で評価します。
ステップ4: 体系化
言語化されたMVVを、ミッション・ビジョン・バリューの3層構造に整理します。ミッション(不変の存在意義)→ビジョン(中長期の目指す姿)→バリュー(日常の行動指針)という階層が基本です。
バリューは3〜5つに絞り、現場の従業員が覚えられる数に制限します。各バリューには具体的な行動例を紐づけ、「何をすればバリューを体現したことになるか」を明確にします。
MVV体系全体の一貫性を確認することも重要です。ミッションから論理的にビジョンが導かれ、ビジョンの実現のためにバリューが必要であるという因果関係が成立しているかをチェックします。
ステップ5: 浸透施策
MVVは策定して終わりではありません。組織全体に浸透させ、日常業務で活用される状態を作ることが最も重要なステップです。
効果的な浸透施策としては、人事評価制度にMVVの要素を組み込むこと、経営会議でMVVに基づいた判断を明示すること、採用面接でMVVへの共感度を評価すること、新人研修やマネジメント研修にMVVセッションを組み込むことが挙げられます。
浸透の効果測定も忘れてはなりません。従業員エンゲージメント調査にMVV関連の質問を含め、定点観測を行うことで、施策の効果を検証し改善につなげます。
エーザイ株式会社
エーザイは「ビジネス時間の1%を患者との対話に充てる」という具体的な制度をMVVに紐づけています。理念を日常業務に組み込む仕組みとして、MVV浸透の模範的な事例です。
hhceco企業への進化
hhc理念+エコシステムモデルによる社会善の実現
エーザイは創業の原点である「患者様のために」を掘り下げ、hhcという独自の理念体系を構築。さらにエコシステムモデルへと進化させています。MVV策定は一度で完成するものではなく、継続的に深化させるプロセスです。
hhc活動のグローバル年間実施数
500件以上
策定したMVVを年間500件以上の活動に落とし込むことで、理念が「言葉」から「行動」に変換されています。策定段階から浸透施策を設計することの重要性を示しています。
関連するガイド
よくある質問
- MVV策定にはどのくらいの期間がかかりますか?
- 企業規模にもよりますが、一般的に3〜6ヶ月程度です。現状分析に1〜2ヶ月、言語化ワークショップに1〜2ヶ月、体系化と浸透計画策定に1〜2ヶ月が目安となります。
- MVV策定は誰が主導すべきですか?
- 経営トップのコミットメントが不可欠ですが、策定プロセスには幅広い階層の社員を巻き込むことが重要です。経営企画部門が事務局となり、外部ファシリテーターを活用する企業も多くあります。
- MVVのミッション・ビジョン・バリューの順番は重要ですか?
- 概念上はミッション(存在意義)→ビジョン(将来像)→バリュー(行動指針)の順に策定するのが自然ですが、企業によってはビジョンから始める場合もあります。重要なのは3要素の一貫性です。