ビジュアルブロック
エーザイ株式会社 価値創造の核心
- 企業理念: human health care (hhc)[1]
患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する。
- 社会善の実現: 健康憂慮の解消と医療較差の是正[2]
- 独自の実践: ビジネス時間の1%を患者様との「共同化」に充当[3]
- 革新的成果: アルツハイマー病治療薬「レケンビ®」[4]、抗がん剤「レンビマ®」[5]、DEC錠25億錠以上の無償提供[6]
- ESG評価: MSCI ESG格付け「AAA」[7]、CDP「気候変動」「水セキュリティ」Aリスト[8]
- 人的資本経営: 人的資本経営銘柄2024に選定[9]、人件費を「投資」と捉えるESG EBIT[10]
序章ー理念が創薬を導くとき
2023年7月6日、世界の医療史に新たな一頁が刻まれた[11]。米国食品医薬品局(FDA)が、エーザイとバイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「LEQEMBI®」(一般名:レカネマブ)をフル承認したのだ[12]。これは、アルツハイマー病の根本原因の一つと考えられている脳内のアミロイドベータ(Aβ)プロトフィブリルを選択的に除去することで、疾患の進行そのものを抑制する世界初の治療薬の誕生を意味した[13]。40年以上にわたるエーザイの認知症研究[14]が、ついに絶望の淵にいた数多の患者とその家族に、確かな希望の光を灯した瞬間だった。
この歴史的偉業は、単なる科学技術の勝利ではない。それは、エーザイという企業が創業以来、一貫して掲げてきた企業理念、「human health care(hhc)」[1]が結実した物語である。患者の「喜怒哀楽」を第一義に考えるという、シンプルでありながら極めて実践の難しいこの哲学が、いかにして困難な創薬を導き、現代経営の潮流であるESGや人的資本経営と分かちがたく結びつき、未来の企業価値を創造しようとしているのか。
本稿では、エーザイの軌跡を「理念」という縦糸と、「事業戦略」「ESG」「人的資本」という横糸で織りなされる壮大なタペストリーとして読み解いていく。それは、利益を目的ではなく「使命を遂行した結果」[15]と位置づける経営思想が、いかにして持続的な成長と社会への貢献を両立させ得るのかを示す、一つの鮮烈なケーススタディとなるだろう。物語は、一人の若者が抱いた国産新薬への情熱から始まる。
第1部 理念の源流ー「患者様」は定款にあり
創業者の情熱と三代目の哲学革命
エーザイの原点は、1936年に創業者・内藤豊次が設立した私的な研究開発機関「合資会社桜ヶ岡研究所」に遡る[16]。福井県の農家に生まれ、独学で薬学を志した豊次は[17]、欧米視察を通じて日本の製薬業界が外国品に依存している現状を憂い、国産新薬の重要性を痛感していた[16]。その情熱は、1938年に日本初のビタミンE剤「ユベラ」の開発として結実し[18]、1941年の日本衛材株式会社設立へと繋がっていく[19]。
創業者の精神は脈々と受け継がれたが、エーザイのアイデンティティを決定的に方向づけたのは、豊次の孫であり、1988年に41歳の若さで社長に就任した現CEOの内藤晴夫である[20]。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得した晴夫は、グローバルな視点から企業の存在意義を問い直した。そして、彼が経営の揺るぎない羅針盤として打ち立てたのが「hhc(human health care)」理念であった[21]。
「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献し、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足する」[22]。この理念は、単なるスローガンではなかった。内藤CEOは、これを企業の存在目的そのものと位置づけた。彼は、フローレンス・ナイチンゲールの「人間とは、たんに病める身体だけでなく、精神や、魂や、感情までもが一体となった存在である」という言葉に深く共鳴し、その精神をhhcに込めたという[23]。企業ロゴがナイチンゲールの直筆サインを基にしているのも、その想いの表れだ[23]。
この理念の真価は、その徹底した実践へのこだわりにある。内藤CEOは、社員が患者の真のニーズを理解するためには、彼らの傍らに寄り添い、言葉にならない想いを感じ取ることが不可欠だと考えた。ここから、エーザイを象徴するユニークな制度が生まれる。「共同化(Socialization)」である。
1%の時間に宿るイノベーションの源泉
「共同化」とは、グローバルで働く1万人を超える全社員が[24]、就業時間の1%を患者や生活者と共に過ごす活動である[25]。食事や作業を共にし、彼らの日常に身を置くことで、データや文献からは決して得られない「生きた知」を得ることを目的としている[26]。年間500件を超えるhhc活動が世界中で展開され[27]、その内容は多岐にわたる。
例えば、日本では約500人の社員が、離島や無医村、都市の障がい者施設など全国約50カ所を訪れ、入浴や食事の介助といった介護体験を行ってきた[28][29]。また、筑波研究所の研究者たちは、毎年がん患者との対話の場である「がんカフェ」を開催し[30]、治療の悩みや希望を直接聞き、それを創薬のモチベーションへと昇華させている。2022年度には緩和ケアに焦点を当て、病院の緩和ケア科や在宅緩和ケアの現場に同席する活動も実施した[31]。
この活動は、経営学の権威である野中郁次郎名誉教授が提唱した「知識創造理論(SECIモデル)」[32]の実践そのものである。患者との対話を通じて暗黙知を共有する「共同化(Socialization)」、そこから得た気づきを言語化・概念化する「表出化(Externalization)」、それを組織内で共有し新たな知識と結合させる「連結化(Combination)」、そして新たな知識を自らのものとして実践する「内面化(Internalization)」。このスパイラルを回し続けることで、エーザイは持続的なイノベーションを生み出してきた[33]。
認知症支援アプリ「ササエル」の開発は、その典型例だ[34]。若年性認知症当事者との対話を通じて[35]、「日々のADL(日常生活動作)の変化を医師にうまく伝えられない」という切実な憂慮を抽出。これを解決するため、約2年間かけて開発されたこのアプリは[36]、言葉では伝えきれない日常を可視化し、医師とのコミュニケーションを円滑にする[34]。共同化から生まれた共感が、具体的なソリューションへと結実したのである。
理念の進化ー「hhceco」と定款への刻印
時代が変化する中で、hhc理念もまた進化を遂げる。2022年6月、エーザイは株主総会の特別決議を経て、定款を改訂した[37]。これは単なる文言の修正ではない。企業の根幹を成す目的規定そのものに、新たな哲学を刻み込むという画期的な試みであった。
第一に、hhc理念の主役を従来の「患者様とそのご家族」から「日常と医療の領域で生活する人々」へと再定義し、貢献対象を拡大した[38]。第二に、企業の目的として「健康憂慮の解消と医療格差の是正という社会善を効率的に実現する」ことを明記した[39]。そして第三に、その実現手段として、他産業との連携による「hhcエコシステム」を通じて人々の「生ききるを支える」ことを追加した[37]。
ここに、エーザイの新たなビジョン「hhceco(hhc理念+エコシステム)」[40]が明確に示された。医薬品の提供という従来の枠組みを超え、デジタル技術や他産業の知見を融合させ、人々の健康な状態から発症、治療、予後までの全ステージを包括的に支えるプラットフォーマーになるという宣言である[41]。
重要なのは、これが株主との共有された「企業の目的」として定款に明記されたことだ[15]。エーザイにとって、売上や利益は目的ではなく、あくまで「使命を達成した結果としてもたらされるもの」[15]である。この「使命と結果の順序」[42]は決して変わらないという原則を、最高法規である定款に刻むことで、短期的な利益追求の圧力に屈することなく、長期的な視点で社会善と企業価値の向上を両立させるという強い意志を示したのである。この揺るぎない理念こそが、次に述べる数々の困難な挑戦を支える原動力となった。
第2部 理念の結実ー三大領域への挑戦
hhc理念という羅針盤は、エーザイをどこへ導いたのか。その航路は、現代社会が抱える最も困難な医療課題、「認知症」「がん」「グローバルヘルス」という三大領域へと真っ直ぐに向かっている。これらはアンメット・メディカル・ニーズが極めて高く、同時に事業としての成功が保証されない茨の道でもある。しかし、だからこそ「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」[43]を掲げるエーザイが挑むべき領域なのだ。
40年の執念が生んだ光ーアルツハイマー病治療薬「レケンビ」の衝撃
エーザイの認知症との闘いは、1983年に筑波研究所でプロジェクトが開始されて以来、40年以上にわたる[44]。その最初の金字塔は、1997年に発売された世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」である[45]。開発者の杉本八郎が会社から2度の開発中止命令を受けながらも執念で創製したこの薬は、ピーク時の世界売上が約3,200億円に達するブロックバスターとなった[45]。
しかし、「アリセプト」はあくまで症状の進行を抑制する対症療法薬であり、病気の根本原因に作用するものではなかった。エーザイは、疾患修飾薬、すなわち病気の進行そのものを止める、あるいは遅らせる治療薬の開発という、さらに高い頂きを目指した。それは失敗の連続だった。多くの製薬企業が巨額の投資の末に撤退していく中、エーザイは諦めなかった。なぜなら、共同化活動を通じて、認知症当事者とその家族が抱える絶望的なまでの憂慮を、誰よりも深く理解していたからだ。
そして2023年、その執念は「レケンビ」として結実する。大規模フェーズIII試験(Clarity AD)において、「レケンビ」はプラセボ群と比較して、18カ月時点で臨床症状の悪化を27%[46]、日常生活機能の低下を37%抑制するという画期的な結果を示した[47]。この成果は世界に衝撃を与え、米国[11]、日本[48]、中国[49]、韓国[50]、そして欧州[51]など、世界44の国と地域で承認されるに至った[52]。
「レケンビ」の登場は、単なる新薬の上市ではない。それは、エーザイが提唱する「hhceco」の始まりを告げる号砲だった。
価値に基づく価格設定と社会的インパクトの可視化
エーザイは「レケンビ」の価格設定において、製薬業界の常識を覆すアプローチを取った。それは、創出する「社会的価値」を基軸に価格を決定するという、世界でも類を見ない試みである。
同社は、疾患シミュレーション研究(AD ACEモデル)を用い、「レケンビ」が当事者にもたらすQALY(質調整生存年)の改善や、介護者負担の軽減、医療費の削減などを総合的に評価し、米国における当事者1人あたりの年間社会的価値を37,600ドルと算出した[53]。そして、この価値の約6割を患者、家族、医療システムといった社会に還元し[54]、残りの約4割を自社の製品売上として受け取る[55]という考え方に基づき、実際の年間薬価を26,500ドルに設定したのである[56]。
これは、薬の価値を透明性高く社会に示し、その上で持続可能なイノベーションとアクセスの両立を図ろうとする野心的な挑戦だ。エーザイは、この社会的インパクトを具体的な金額目標として経営計画に組み込んでいる。米国における社会的インパクト創出目標は、2025年度に約800億円[57]、そして2030年度には約1.8兆円[58]という壮大なスケールで描かれている。
認知症エコシステムの構築ー「治療」から「共生」へ
「レケンビ」は治療の選択肢をもたらしたが、エーザイが見据えるのはその先にある「認知症と共生する社会」の実現である。そのための具体的な戦略が「認知症エコシステム」の構築だ[59]。
これは、健常な状態から高リスク、発症・治療、予後に至るまで、あらゆるステージの人々をシームレスに支える仕組みである。その中核を担うのが、デジタル技術だ。ブレインパフォーマンスのセルフチェックツール「のうKNOW®」[60]は、世界55カ国以上で活用され[61]、認知機能低下の早期の気づきを促している。また、2025年5月には高齢者施設向け見守りシステムを提供するエコナビスタ株式会社を完全子会社化し[62]、ケア領域への基盤を強化した。
さらに、診断のハードルを下げるため、血液バイオマーカー(BBM)による確定診断の社会実装も目指している[63]。これが実現すれば、PETや脳脊髄液検査といった大掛かりな設備がなくても、かかりつけ医レベルで早期診断が可能になる道が開ける[64]。治療薬(創薬)と、診断・ケア・生活支援(非創薬)の両輪でアプローチすることで[65]、エーザイは認知症を「治療可能な病気(curable disease)」[66]へと変えようとしているのだ。
がん領域における「治癒」への挑戦
エーザイのがん領域における歴史も40年に及ぶ[67]。ここでもhhc理念は、創薬の原動力として息づいている。主力製品である分子標的抗がん剤「レンビマ®」は、甲状腺がん、肝細胞がん、子宮内膜がんなど5がん種6適応を取得し[68]、これまでに世界で50万人以上の患者の治療に貢献してきた[69]。2024年度のグローバル売上は3,285億円に達し[5]、エーザイの最大製品となっている。
「レンビマ」の開発・販売で得られた10,000例を超える豊富な臨床データ[70]は、次のイノベーションの源泉となる。エーザイはこれを「Deep Human Biology Learning (DHBL)」[71]と名付けた新創薬体制の中核に据え、がんの根本原因に迫る研究を加速させている。
その目標は、単なる延命ではなく、難治性がんの「治癒」[72]である。抗体薬物複合体(ADC)であるMORAb-202やBB-1701[73]、Wnt/β-カテニン阻害剤であるE7386など、次世代のパイプラインが着々と開発を進めている。患者の憂慮を解消したいという想いが、サイエンスの最前線を切り拓いている。
利益なき貢献の先にーグローバルヘルスという「未来への投資」
エーザイの理念経営を最も純粋な形で体現しているのが、グローバルヘルス領域への取り組みだろう。ここは、低中所得国に蔓延する「顧みられない熱帯病(NTDs)」[74]など、市場原理だけでは解決が難しい課題が山積する分野である。エーザイは、これを「未来への先行投資」[75]と位置づけ、長期的な視点でコミットし続けている。
その象徴が、リンパ系フィラリア症(LF)治療薬「DEC錠」の無償提供だ。2010年に世界保健機関(WHO)とパートナーシップを締結して以来[76]、エーザイは蔓延国に対してDEC錠をプライスゼロで提供し続けてきた。その累計供給量は、2025年4月時点で25.2億錠[77]という驚異的な規模に達する。この活動により、これまでに8カ国がリンパ系フィラリア症を制圧した[78]。
エーザイはこの活動がもたらす社会的インパクトを定量化している。LFの感染・重症化予防による労働時間回復や医療費削減効果を金額換算し、2024年度までの累計で約4,780億円の社会的インパクトを創出したと試算[79]。2025年度には年間約5,200億円のインパクト創出を目指す[80]。
さらに、スーダンではDNDi(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)と共同で、世界初となる真菌性マイセトーマ患者を対象とした治験を実施[81]。政情不安やインフラの未整備といった数々の困難を乗り越え、新薬開発を進めている。2025年2月には、社員がインドの村を訪れ、LF患者8名と対話し、彼らの苦悩を直接聞き取った[82]。こうした現場での共同化が、利益を超えた貢献を続ける原動力となっているのだ。
三大領域への挑戦は、hhc理念が単なる美辞麗句ではなく、事業戦略そのものであることを雄弁に物語っている。そして、この理念に基づく事業活動を支え、持続可能にするための経営基盤こそが、ESGと人的資本経営なのである。
第3部 理念を支える経営基盤ーESGと人的資本の統合
エーザイの経営において、ESG(環境・社会・ガバナンス)や人的資本は、近年注目され始めたから取り組むという性質のものではない。むしろ、hhc理念を実践してきた結果、その活動が自然とESGや人的資本経営の要請と合致してきたと言うべきだろう。同社は、これらの非財務資本こそが将来の財務価値、すなわち「本源的企業価値」[83]を創出する源泉であると確信している。
人件費を「投資」と捉え直すESG会計革命
その思想を最もラディカルに表現しているのが、エーザイ独自の経営指標「ESG EBIT」[10]である。これは、通常の営業利益に、研究開発費(知的資本への投資)と、生産・営業活動に関わる人件費(人的資本への投資)を足し戻して算出される。2024年度のESG EBITは3,744億円[10]であり、同年度の営業利益544億円[84]を大きく上回る。
この計算式の背後には、会計基準の常識を覆す哲学がある。従来、費用として扱われてきた研究開発費や人件費を、将来の価値創造に向けた「投資」として再定義しているのだ。2024年度の研究開発費1,716億円[85]、生産・営業活動に関わる人的資本投資1,484億円(1,299億円[86]+185億円[87])は、コストではなく、未来の社会的インパクトと財務的価値を生み出すための原資と見なされる。
この考え方は、執行役の報酬制度にも反映されている。賞与や株式報酬の評価指標の一部にESG EBITを用いることで[88]、経営陣に短期的な利益だけでなく、長期的な価値創造に向けた非財務資本への投資を促すインセンティブ設計となっている。
地球環境へのコミットメントー理念実現の土台
hhc理念は、人々の健康だけでなく、その人々が生きる地球環境の持続可能性なくしては実現できない。エーザイは「エーザイ環境経営ビジョン」[89]を策定し、気候変動対策、持続可能な水利用、資源循環などを重点分野と定めている。
その取り組みは着実に成果を上げている。2024年度には、Scope1およびScope2の温室効果ガス排出量を2019年度比で51.6%削減[90]。外部から購入する電力における再生可能エネルギーの導入率は98.7%に達した[91]。こうした実績が評価され、国際的な非営利団体CDPからは、「気候変動」および「水セキュリティ」の両分野で最高評価である「Aリスト」に選定されている[8]。さらに、MSCI ESG格付けにおいても、2025年7月時点で最高評価の「AAA」を獲得[7]し、グローバルでトップクラスのサステナビリティ企業として認知されている。
PBRを動かす人的資本ーデータが示す「働きがい」の価値
エーザイの人的資本経営の根幹には、「社員一人ひとりのエナジーを解き放ち、組織のシナジーを生み出し、社会的インパクトを最大化する」[92]というグローバルHRパーパスがある。hhc理念の担い手である社員が、その能力を最大限に発揮できる環境を整えることこそが、企業価値向上の最短距離であるという考え方だ。
特筆すべきは、この考えを精神論で終わらせず、データに基づいて企業価値との相関を可視化しようとする試みである。エーザイは、人的資本に関連する様々な指標とPBR(株価純資産倍率)との関係性を重回帰分析によって解明した。
その結果は驚くべきものだった。例えば、人件費投入を1割増やすと、5年後のPBRが13.8%向上する[93]。女性管理職比率を1割改善させると、7年後のPBRが2.4%向上[94]。さらに、育児短時間勤務制度の利用者を1割増やすと、9年後のPBRが3.3%向上する[95]という相関関係が示されたのだ。
これらの分析は、ダイバーシティの推進やウェルビーイングの向上が、単なる社会貢献や福利厚生ではなく、明確な企業価値創造に繋がる「戦略的投資」であることを雄弁に物語っている。この実証研究に基づき、エーザイは具体的な目標を設定し、施策を推進している。女性管理職比率は2025年度までに15%[96]、将来的には30%レベルを目指す[97]。社員のエンゲージメントスコアは90%以上を目標とする[98](2024年度実績は85%[98])。
こうした取り組みが評価され、経済産業省の「人的資本経営銘柄2024」[9]や、女性活躍推進に優れた「なでしこ銘柄2025」[99]、従業員の健康管理を経営的視点で考える「健康経営銘柄2025」[100]にも選定されている。
hhc理念に共感する社員の割合は95%[101]に達し、高いエンゲージメントを維持している。理念が社員の働きがいを生み、その働きがいがイノベーションを創出し、最終的に企業価値を高めていく。エーザイは、この価値創造の好循環を、理念とデータ、そして実践によって力強く回しているのである。
第4部 未来への航路ーガバナンスと残された課題
エーザイが描く壮大なビジョンは、いかにして未来へと継承され、実現されていくのか。その鍵を握るのが、hhc理念を永続させるための強固なコーポレートガバナンスである。同時に、その航路には乗り越えるべき課題やリスクも存在する。
理念を護るガバナンス体制
エーザイは、経営の監督と業務執行を明確に分離する「指名委員会等設置会社」[102]の形態を採用している。取締役会は経営の監督に専念し、業務執行の権限は執行役に大幅に委任される[103]。この体制の要は、取締役会の独立性にある。
2025年6月18日現在、取締役会は11名で構成され、そのうち過半数を超える7名が社外取締役である[104]。議長も社外取締役が務めており[105]、執行側から独立した客観的な視点で経営を監督する体制が構築されている。さらに、取締役の選任を決定する指名委員会、役員報酬を決定する報酬委員会は、全員が社外取締役で構成されている[106][107]。
特に重要なのが、CEOサクセッションプランに対するガバナンスの関与である。内藤CEOの在任期間が30年を超える中[108]、後継者の育成と選定は最重要課題の一つだ。このプロセスを公正かつ円滑に進めるため、社外取締役7名全員で構成される「hhcガバナンス委員会」が設置されている[109]。委員会は年2回、CEOから提案されるサクセッションプランについて議論を重ね[110]、これまで累計16回に及ぶ議論を行ってきた[111]。社外の第三者による候補者の客観的評価も取り入れるなど[112]、hhc理念を正しく理解し、未来へと導くリーダーを育成・選定するための仕組みが整えられている。
課題とリスクー光の裏にある影
輝かしい成果を上げる一方で、エーザイは複数の課題やリスクにも直面している。
第一に、事業環境の厳しさである。各国政府による薬剤費削減策の推進に伴う薬価引き下げ圧力は、収益性を脅かす恒常的なリスクだ[113]。特に「レケンビ」のような高額な新薬は、その社会的価値が正しく評価され、医療保険制度の中で持続可能な形で患者に届けられるかどうかが大きな課題となる。
第二に、サイバーセキュリティのリスクである。グローバルに事業を展開し、機密性の高い研究開発データや個人情報を扱う製薬企業にとって、サイバー攻撃は深刻な脅威だ。事実、エーザイは2023年にクラウドプラットフォームへの不正アクセス[114]やランサムウェア被害[115]を経験している。これらのインシデントを教訓に、情報セキュリティ体制の強化が急務となっている。
第三に、hhc理念の継承と深化という組織的な課題である。グローバルに社員数が拡大し、事業が複雑化する中で、創業以来の理念を形骸化させることなく、全社員一人ひとりの行動にまで浸透させ続けることは容易ではない。エンゲージメントサーベイにおける「リスクテイク」のスコアが伸び悩んでいる点[116]は、挑戦を促す風土のさらなる醸成が必要であることを示唆しているのかもしれない。
結論ー「社会善」を追求する企業の未来像
エーザイの物語は、一つの製薬企業の成功譚にとどまらない。それは、「企業の目的は何か」という根源的な問いに対する、一つの力強い回答である。
創業者の情熱に端を発し、内藤晴夫CEOによって哲学として体系化された「hhc理念」。それは、単なる社会貢献活動ではなく、イノベーションの源泉であり、事業戦略そのものであった。患者との「共同化」を通じて真のニーズを掘り起こし、40年の歳月をかけて認知症治療に光明をもたらした「レケンビ」の誕生は、その何よりの証左だ。
そして今、エーザイはその理念を「hhceco」へと進化させ、ESGや人的資本経営といった現代的な経営手法を完全に統合し、未来の価値創造へと突き進んでいる。人件費を「投資」と見なす「ESG EBIT」、人的資本とPBRの相関をデータで証明する分析力、社会的価値に基づく価格設定。これら一つひとつが、社会善の実現と企業価値の向上は二律背反ではなく、むしろ相互に強化し合うものであるという同社の信念を裏付けている。
もちろん、その航路は平坦ではない。薬価制度の壁、サイバー攻撃の脅威、そして理念継承の難しさなど、乗り越えるべき荒波は多い。しかし、エーザイは「患者様」という揺るぎない羅針盤を持っている。定款に刻まれた「社会善を効率的に実現する」という約束は、いかなる嵐の中でも進むべき方向を見失わないための、強力な錨となるだろう。
エーザイの挑戦は、すべての企業に問いかける。あなたの会社は、誰の、どのような「喜怒哀楽」に応えるために存在するのか。その使命を遂行した結果として、どのような価値が社会と企業にもたらされるのか。患者と共に歩むこの百年企業の物語は、その答えを探す旅路の、一つの確かな道標となるに違いない。
▶出典(116件)
- 患者様のベネフィット向上を目指す企業理念(hhc理念)(Eisai Value Creation Report, p.10)
- 社会善の実現に向けた使命(Eisai Value Creation Report, p.4)
- ビジネス時間に占める「共同化」の時間の割合(Eisai Value Creation Report, p.14)
- アルツハイマー病の根本病理に関わる薬剤の開発(Eisai Value Creation Report, p.30)
- 抗がん剤「レンビマ」(レンバチニブ)(会社概要 - エーザイ株式会社)
- リンパ系フィラリア症(LF) DEC錠累計無償提供(Eisai Value Creation Report, p.24)
- MSCI ESG格付け(2025年7月現在)(Eisai Value Creation Report, p.74)
- CDP「気候変動」「水セキュリティ」評価(Eisai Value Creation Report, p.70)
- 人的資本経営銘柄2024(Eisai Value Creation Report, p.74)
- 2024年度のESG EBIT(Eisai Value Creation Report, p.56)
- レケンビ®の米国におけるフル承認取得(Eisai Value Creation Report 2024, p.34)
- LEQEMBIの米国FDA承認(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.14)
- レカネマブ(レケンビ)世界初のアルツハイマー病原因治療薬(会社概要 - エーザイ株式会社)
- 認知症領域における研究開発の歴史(Eisai Value Creation Report, p.3)
- 定款第2条に定められた企業の目的とhhc理念の明文化(Eisai Value Creation Report, p.10)
- 桜ヶ岡研究所の設立(1936年)
- 創業者 内藤豊次の生涯
- 日本初のビタミンE剤「ユベラ」の開発(1938年)
- 日本衛材株式会社の設立(1941年)
- 内藤晴夫CEO(3代目創業家社長)
- 企業理念「hhc (human health care)」の掲示(Eisai Value Creation Report 2024, p.19)
- エーザイの企業理念 (hhc)(Eisai Value Creation Report, p.8)
- エーザイの企業理念(Eisai Value Creation Report 2024, p.2)
- 世界中のエーザイ社員数(Eisai Value Creation Report, p.2)
- ビジネス時間の1%を「共同化」に充当(Eisai Value Creation Report 2024, p.19)
- 「共同化」に充てる就業時間の割合(Eisai Value Creation Report, p.2)
- 年間のhhc活動数(Eisai Value Creation Report, p.11)
- 介護体験活動に参加した社員数(Eisai Value Creation Report, p.9)
- 介護体験活動の実施場所数(Eisai Value Creation Report, p.9)
- 2024年度の「がんカフェ」開催(Eisai Value Creation Report, p.39)
- 2022年度のhhc活動テーマ(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.21)
- SECIモデルに基づく知識創造理論の実践(Eisai Value Creation Report 2024, p.19)
- 知の創造活動のフレームワーク(Eisai Value Creation Report, p.14)
- エコシステムモデル構築の要となる新会社設立(Eisai Value Creation Report 2024, p.10)
- 2023年度の若年性認知症当事者との対話(Eisai Value Creation Report 2024, p.31)
- 認知症プラットフォーム・アプリの開発期間(Eisai Value Creation Report 2024, p.20)
- 定款の改訂によるhhcエコシステムの追加(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.8)
- 2022年の定款進化と理念の再定義(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.3)
- 定款における社会善の効率的な実現の明記(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.7)
- 2022年に宣言された「hhceco企業」への進化(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.2)
- 認知症領域における最終目標(Eisai Value Creation Report 2024, p.30)
- 使命遂行による経済価値の創出原則(Eisai Value Creation Report, p.4)
- エーザイのhhc理念に基づく使命(Eisai Value Creation Report, p.18)
- アルツハイマー病治療薬の研究開発期間(Eisai Value Creation Report 2024, p.31)
- 世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」
- レカネマブ投与による臨床症状の悪化抑制効果 (CDR-SB)(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.16)
- レカネマブ投与による日常生活機能の悪化抑制効果 (ADCS-MCI-ADL)(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.16)
- アルツハイマー病治療薬レケンビの日本承認日(Eisai Value Creation Report 2024, p.11)
- アルツハイマー病治療薬レケンビの中国承認日(Eisai Value Creation Report 2024, p.11)
- アルツハイマー病治療薬レケンビの韓国承認日(Eisai Value Creation Report 2024, p.11)
- レケンビ® EUでの承認取得(Eisai Value Creation Report, p.31)
- レケンビ®のグローバル承認状況(2025年5月時点)(Eisai Value Creation Report, p.29)
- 米国におけるレケンビ®の当事者1人あたり年間社会的価値(Eisai Value Creation Report 2024, p.47)
- 社会的インパクトの社会への還元比率目標(Eisai Value Creation Report, p.57)
- 社会的インパクトの当社製品売上としての還元割合(Eisai Value Creation Report 2024, p.47)
- 米国におけるレクンビ®の年間価格設定(Eisai Value Creation Report, p.57)
- 「レケンビ®」の社会的インパクト(米国)目標(Eisai Value Creation Report, p.17)
- レクンビ®の米国における2030年度の社会的インパクト(Eisai Value Creation Report, p.57)
- 認知症との共生社会実現に向けた戦略(Eisai Value Creation Report, p.30)
- データプラットフォームによるソリューション開発(Eisai Value Creation Report, p.35)
- 「のう KNOW」のグローバル活用実績(Eisai Value Creation Report 2024, p.22)
- エコナビスタ株式会社の完全子会社化(Eisai Value Creation Report, p.29)
- BBMによる確定診断に向けた承認取得(Eisai Value Creation Report, p.32)
- 米国におけるPCPアプローチの開始(Eisai Value Creation Report, p.32)
- 認知症領域における価値創造のビジョン(Eisai Value Creation Report, p.30)
- 認知症治療の将来像(Eisai Value Creation Report, p.30)
- がん領域における新薬創出の歴史(Eisai Value Creation Report, p.3)
- 「レンビマ®」の適応がん種数(Eisai Value Creation Report, p.37)
- 2025年度目標:レンビマ®による年間貢献患者数(Eisai Value Creation Report, p.38)
- 臨床試験における投与患者数(Eisai Value Creation Report, p.37)
- トランスレーショナル リサーチを基盤とした新組織体制の始動(Eisai Value Creation Report, p.45)
- 難治性がんの治癒を目指す創薬への挑戦(Eisai Value Creation Report, p.39)
- レンビマに続く新規プロジェクトの推進(Eisai Value Creation Report 2024, p.37)
- グローバルヘルス領域でのSDGsへの貢献(Eisai Value Creation Report, p.3)
- NTDsに対する取り組みの戦略的位置付け(Eisai Value Creation Report, p.42)
- WHOとのパートナーシップ締結(Eisai Value Creation Report, p.42)
- DEC錠の累計供給量(2025年4月現在)(Eisai Value Creation Report, p.41)
- リンパ系フィラリア症を制圧した国数(Eisai Value Creation Report, p.11)
- リンパ系フィラリア症(LF) 社会的インパクト実績(Eisai Value Creation Report, p.24)
- 2025年度 DEC錠無償提供の社会的インパクト目標(Eisai Value Creation Report, p.40)
- スーダンでのマイセトーマ治験の実施(Eisai Value Creation Report, p.43)
- インドにおけるLF患者との共同化活動(Eisai Value Creation Report, p.43)
- 財務戦略の基本方針(Eisai Value Creation Report, p.52)
- 2024年度 営業利益の実績(Eisai Value Creation Report, p.16)
- 2024年度の研究開発費(知的資本)(Eisai Value Creation Report, p.56)
- 2024年度の営業活動に関わる人的資本投資(Eisai Value Creation Report, p.56)
- 2024年度の生産活動に関わる人的資本投資(Eisai Value Creation Report, p.56)
- 2022年度 ESG EBIT(エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023, p.34)
- エーザイ環境経営ビジョンの策定と重点分野(Eisai Value Creation Report 2024, p.76)
- 温室効果ガス排出量 Scope 1+2 削減率(Eisai Value Creation Report, p.17)
- 再生可能エネルギー導入率(外部購入電力)(Eisai Value Creation Report, p.70)
- 2024年度に策定されたグローバルHRパーパス(Eisai Value Creation Report, p.46)
- 人件費投入1割増による5年後のPBR向上率(Eisai Value Creation Report, p.56)
- 女性管理職比率1割改善による7年後のPBR向上率(Eisai Value Creation Report, p.56)
- 育児短時間勤務利用者1割増による9年後のPBR向上率(Eisai Value Creation Report, p.56)
- 2025年度目標:多様性確保に向けた女性活躍の推進(Eisai Value Creation Report, p.25)
- 女性取締役比率の目標(Eisai Value Creation Report, p.66)
- 2025年度目標:社員のエンゲージメントの向上(Eisai Value Creation Report, p.25)
- なでしこ銘柄2025(Eisai Value Creation Report, p.74)
- 健康経営銘柄2025(Eisai Value Creation Report, p.74)
- hhc理念に共感した社員の割合 (2024年度)(Eisai Value Creation Report, p.8)
- 企業のガバナンス体制の形態(Eisai Value Creation Report, p.61)
- ガバナンス体制の基本構造(Eisai Value Creation Report, p.60)
- 取締役会の構成(2025年6月18日現在)(Eisai Value Creation Report, p.60)
- 取締役会議長の選定方針(Eisai Value Creation Report 2024, p.64)
- 指名委員会の構成(2025年6月18日現在)(Eisai Value Creation Report, p.60)
- 報酬委員会の構成(Eisai Value Creation Report, p.63)
- 現CEOの経営トップとしての在任期間(Eisai Value Creation Report 2024, p.68)
- hhcガバナンス委員会の構成(2025年6月18日現在)(Eisai Value Creation Report, p.60)
- サクセッションプランの情報共有頻度(Eisai Value Creation Report, p.63)
- サクセッションプランに関する累計議論回数(Eisai Value Creation Report, p.66)
- サクセッションプランにおける外部評価の活用状況(Eisai Value Creation Report 2024, p.68)
- 認知症領域における脅威:薬価引き下げ圧力(Eisai Value Creation Report, p.27)
- 2023年4月のクラウドプラットフォームへの不正アクセス(Eisai Value Creation Report 2024, p.72)
- 2023年6月のランサムウェア被害の発生(Eisai Value Creation Report 2024, p.72)
- リスクテイクに関する設問別スコア(Eisai Value Creation Report 2024, p.51)
使用データ一覧
| コンテキスト | 年度 | 値 | 出典 |
|---|---|---|---|
患者様のベネフィット向上を目指す企業理念(hhc理念) | 2025年 | ヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業 なし | Eisai Value Creation Report p.10 |
社会善の実現に向けた使命 | 2025年 | 健康憂慮の解消と医療較差の是正 | Eisai Value Creation Report p.4 |
ビジネス時間に占める「共同化」の時間の割合 | 2025年 | 1 % | Eisai Value Creation Report p.14 |
アルツハイマー病の根本病理に関わる薬剤の開発 | 2025年 | 成功 なし | Eisai Value Creation Report p.30 |
抗がん剤「レンビマ」(レンバチニブ) | 2024年 | 自社創製の分子標的抗がん剤「レンビマ」(レンバチニブ)は甲状腺癌・肝細胞癌・腎細胞癌等に適応。メルク社との戦略的提携で世界展開を加速。2024年度のグローバル売上は3,285億円でエーザイの最大製品 億円 | 会社概要 - エーザイ株式会社 |
リンパ系フィラリア症(LF) DEC錠累計無償提供 | 2025年 | 25.2 億錠 | Eisai Value Creation Report p.24 |
MSCI ESG格付け(2025年7月現在) | 2025年 | AAA ランク | Eisai Value Creation Report p.74 |
CDP「気候変動」「水セキュリティ」評価 | 2025年 | Aリスト なし | Eisai Value Creation Report p.70 |
人的資本経営銘柄2024 | 2025年 | 選定 なし | Eisai Value Creation Report p.74 |
2024年度のESG EBIT | 2025年 | 3,744 億円 | Eisai Value Creation Report p.56 |
レケンビ®の米国におけるフル承認取得 | 2024年 | 2023/07 月 | Eisai Value Creation Report 2024 p.34 |
LEQEMBIの米国FDA承認 | 2023年 | フル承認 | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.14 |
レカネマブ(レケンビ)世界初のアルツハイマー病原因治療薬 | 2024年 | レカネマブ(商品名:レケンビ)は脳内のアミロイドベータプロトフィブリルを除去する世界初の抗体医薬。2023年に米国・日本で承認。2024年には中国・韓国・メキシコ等10カ国以上で承認を取得。2024年度売上は443億円 億円 | 会社概要 - エーザイ株式会社 |
認知症領域における研究開発の歴史 | 2025年 | 40 年以上 | Eisai Value Creation Report p.3 |
定款第2条に定められた企業の目的とhhc理念の明文化 | 2025年 | 患者様の喜怒哀楽を第一義とし、そのベネフィット向上 なし | Eisai Value Creation Report p.10 |
桜ヶ岡研究所の設立(1936年) | 1936年 | 内藤豊次は欧米視察を通じて国産新薬の重要性を認識し、1936年に東京都荒川区三河島に私的な研究開発機関「合資会社桜ヶ岡研究所」を設立。これが現在のエーザイの原点となった | - |
創業者 内藤豊次の生涯 | 1889年 | 内藤豊次(1889-1978)は福井県の農家に3男坊として生まれ、中学2年で中途退学後、独学で薬学を志した。1911年に英国人経営の薬局タムソン商会に入社し医薬品知識を深め、日本の製薬業界の外国品依存からの脱却を志した | - |
日本初のビタミンE剤「ユベラ」の開発(1938年) | 1938年 | 桜ヶ岡研究所は1938年、小麦胚芽油から抽出した日本で初のビタミンE剤「ユベラ」を開発。球形でチョコレート色のコーティングが特徴で、田辺元三郎商店より発売された。エーザイの製薬メーカーとしての第一歩 | - |
日本衛材株式会社の設立(1941年) | 1941年 | 1941年12月6日、埼玉県本庄町(現・本庄市)に資本金18万円の日本衛材株式会社を設立。社名は「衛生材料」の略で、絆創膏や包帯を意味する。1955年に「呼びやすく、書きやすく」との考えから「エーザイ株式会社」に改称 | - |
内藤晴夫CEO(3代目創業家社長) | 1988年 | 内藤晴夫(1947年生)は創業者・内藤豊次の孫。慶應義塾大学商学部卒、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院MBA修了。1975年入社、1988年に41歳で社長に就任。hhc理念を経営の軸に据え、認知症・がん領域に注力 | - |
企業理念「hhc (human health care)」の掲示 | 2024年 | hhc (human health care) | Eisai Value Creation Report 2024 p.19 |
エーザイの企業理念 (hhc) | 2025年 | hhc (human health care) なし | Eisai Value Creation Report p.8 |
エーザイの企業理念 | 2024年 | 患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え そのベネフィット向上に貢献し 世界のヘルスケアの多様なニーズを充足する | Eisai Value Creation Report 2024 p.2 |
世界中のエーザイ社員数 | 2025年 | 10000 人 | Eisai Value Creation Report p.2 |
ビジネス時間の1%を「共同化」に充当 | 2024年 | 1 % | Eisai Value Creation Report 2024 p.19 |
「共同化」に充てる就業時間の割合 | 2025年 | 1 % | Eisai Value Creation Report p.2 |
年間のhhc活動数 | 2025年 | 500 超 | Eisai Value Creation Report p.11 |
介護体験活動に参加した社員数 | 2025年 | 500 人 | Eisai Value Creation Report p.9 |
介護体験活動の実施場所数 | 2025年 | 50 カ所 | Eisai Value Creation Report p.9 |
2024年度の「がんカフェ」開催 | 2025年 | 開催 なし | Eisai Value Creation Report p.39 |
2022年度のhhc活動テーマ | 2023年 | 実施 なし | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.21 |
SECIモデルに基づく知識創造理論の実践 | 2024年 | SECIモデル | Eisai Value Creation Report 2024 p.19 |
知の創造活動のフレームワーク | 2025年 | SECIモデル | Eisai Value Creation Report p.14 |
エコシステムモデル構築の要となる新会社設立 | 2024年 | 完全子会社として設立 | Eisai Value Creation Report 2024 p.10 |
2023年度の若年性認知症当事者との対話 | 2024年 | 日本の若年性認知症当事者様との対話を中心に共同化 なし | Eisai Value Creation Report 2024 p.31 |
認知症プラットフォーム・アプリの開発期間 | 2024年 | 約2 年間 | Eisai Value Creation Report 2024 p.20 |
定款の改訂によるhhcエコシステムの追加 | 2023年 | 2022年6月 年月 | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.8 |
2022年の定款進化と理念の再定義 | 2023年 | hhc理念の主役を「日常と医療の領域で生活する人々」と再定義 なし | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.3 |
定款における社会善の効率的な実現の明記 | 2023年 | 社会善の効率的な実現 なし | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.7 |
2022年に宣言された「hhceco企業」への進化 | 2023年 | hhceco (hhc理念+エコシステム) 企業へと進化 | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.2 |
認知症領域における最終目標 | 2024年 | 認知症エコシステムを構築し、そのプロデューサーの役割を果たす なし | Eisai Value Creation Report 2024 p.30 |
使命遂行による経済価値の創出原則 | 2025年 | 使命と結果の順序 | Eisai Value Creation Report p.4 |
エーザイのhhc理念に基づく使命 | 2025年 | 「健康憂慮の解消」と「医療較差の正」 なし | Eisai Value Creation Report p.18 |
アルツハイマー病治療薬の研究開発期間 | 2024年 | 40 年以上 | Eisai Value Creation Report 2024 p.31 |
世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」 | 1997年 | 1997年に世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」(一般名:ドネペジル)を発売。開発者・杉本八郎は会社から2度の開発中止命令を受けながらも5年以上かけて創製。ピーク時の世界売上は約3,200億円に達した 億円 | - |
レカネマブ投与による臨床症状の悪化抑制効果 (CDR-SB) | 2023年 | 27 % | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.16 |
レカネマブ投与による日常生活機能の悪化抑制効果 (ADCS-MCI-ADL) | 2023年 | 37 % | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.16 |
アルツハイマー病治療薬レケンビの日本承認日 | 2024年 | 2023年9月25日 日付 | Eisai Value Creation Report 2024 p.11 |
アルツハイマー病治療薬レケンビの中国承認日 | 2024年 | 2024年1月5日 日付 | Eisai Value Creation Report 2024 p.11 |
アルツハイマー病治療薬レケンビの韓国承認日 | 2024年 | 2024年5月24日 日付 | Eisai Value Creation Report 2024 p.11 |
レケンビ® EUでの承認取得 | 2025年 | 2025年4月 なし | Eisai Value Creation Report p.31 |
レケンビ®のグローバル承認状況(2025年5月時点) | 2025年 | 44 国と地域 | Eisai Value Creation Report p.29 |
米国におけるレケンビ®の当事者1人あたり年間社会的価値 | 2024年 | 37,600 ドル | Eisai Value Creation Report 2024 p.47 |
社会的インパクトの社会への還元比率目標 | 2025年 | 60 % | Eisai Value Creation Report p.57 |
社会的インパクトの当社製品売上としての還元割合 | 2024年 | 約4 割 | Eisai Value Creation Report 2024 p.47 |
米国におけるレクンビ®の年間価格設定 | 2025年 | 26,500 ドル | Eisai Value Creation Report p.57 |
「レケンビ®」の社会的インパクト(米国)目標 | 2025年 | 800 億円 | Eisai Value Creation Report p.17 |
レクンビ®の米国における2030年度の社会的インパクト | 2025年 | 1.8 兆円 | Eisai Value Creation Report p.57 |
認知症との共生社会実現に向けた戦略 | 2025年 | 認知症エコシステムの構築 なし | Eisai Value Creation Report p.30 |
データプラットフォームによるソリューション開発 | 2025年 | THEORIA(セオリア) | Eisai Value Creation Report p.35 |
「のう KNOW」のグローバル活用実績 | 2024年 | 55 ヵ国以上 | Eisai Value Creation Report 2024 p.22 |
エコナビスタ株式会社の完全子会社化 | 2025年 | 100 % | Eisai Value Creation Report p.29 |
BBMによる確定診断に向けた承認取得 | 2025年 | PET/CSFからの置き換え なし | Eisai Value Creation Report p.32 |
米国におけるPCPアプローチの開始 | 2025年 | 開始 なし | Eisai Value Creation Report p.32 |
認知症領域における価値創造のビジョン | 2025年 | 創薬と非創薬の両輪で切り拓く未来 なし | Eisai Value Creation Report p.30 |
認知症治療の将来像 | 2025年 | 認知症を「治療可能な病気(curable disease)」とする なし | Eisai Value Creation Report p.30 |
がん領域における新薬創出の歴史 | 2025年 | 40 年 | Eisai Value Creation Report p.3 |
「レンビマ®」の適応がん種数 | 2025年 | 5 適応 | Eisai Value Creation Report p.37 |
2025年度目標:レンビマ®による年間貢献患者数 | 2025年 | 90,000 人 | Eisai Value Creation Report p.38 |
臨床試験における投与患者数 | 2025年 | 10,000 例 | Eisai Value Creation Report p.37 |
トランスレーショナル リサーチを基盤とした新組織体制の始動 | 2025年 | Deep Human Biology Learning (DHBL) なし | Eisai Value Creation Report p.45 |
難治性がんの治癒を目指す創薬への挑戦 | 2025年 | 難治性がんの「治癒」をめざす なし | Eisai Value Creation Report p.39 |
レンビマに続く新規プロジェクトの推進 | 2024年 | MORAb-202, BB-1701, E7386 | Eisai Value Creation Report 2024 p.37 |
グローバルヘルス領域でのSDGsへの貢献 | 2025年 | 顧みられない熱帯病(NTDs)の制圧 | Eisai Value Creation Report p.3 |
NTDsに対する取り組みの戦略的位置付け | 2025年 | 未来への先行投資 なし | Eisai Value Creation Report p.42 |
WHOとのパートナーシップ締結 | 2025年 | 2010年に締結 なし | Eisai Value Creation Report p.42 |
DEC錠の累計供給量(2025年4月現在) | 2025年 | 25.2 億錠 | Eisai Value Creation Report p.41 |
リンパ系フィラリア症を制圧した国数 | 2025年 | 8 カ国 | Eisai Value Creation Report p.11 |
リンパ系フィラリア症(LF) 社会的インパクト実績 | 2025年 | 4780 億円 | Eisai Value Creation Report p.24 |
2025年度 DEC錠無償提供の社会的インパクト目標 | 2025年 | 5,200 億円 | Eisai Value Creation Report p.40 |
スーダンでのマイセトーマ治験の実施 | 2025年 | DNDiと実施したマイセトーマ患者様を対象とした治験 | Eisai Value Creation Report p.43 |
インドにおけるLF患者との共同化活動 | 2025年 | 8 人 | Eisai Value Creation Report p.43 |
財務戦略の基本方針 | 2025年 | 持続的な株主価値の最大化 なし | Eisai Value Creation Report p.52 |
2024年度 営業利益の実績 | 2025年 | 544 億円 | Eisai Value Creation Report p.16 |
2024年度の研究開発費(知的資本) | 2025年 | 1,716 億円 | Eisai Value Creation Report p.56 |
2024年度の営業活動に関わる人的資本投資 | 2025年 | 1,299 億円 | Eisai Value Creation Report p.56 |
2024年度の生産活動に関わる人的資本投資 | 2025年 | 185 億円 | Eisai Value Creation Report p.56 |
2022年度 ESG EBIT | 2023年 | 3,299 億円 | エーザイ株式会社 Eisai Value Creation Report 2023 p.34 |
エーザイ環境経営ビジョンの策定と重点分野 | 2024年 | エーザイ環境経営ビジョン | Eisai Value Creation Report 2024 p.76 |
温室効果ガス排出量 Scope 1+2 削減率 | 2025年 | 51.6 % | Eisai Value Creation Report p.17 |
再生可能エネルギー導入率(外部購入電力) | 2025年 | 98.7 % | Eisai Value Creation Report p.70 |
2024年度に策定されたグローバルHRパーパス | 2025年 | 社員一人ひとりのエナジーを解き放ち、組織のシナジーを生み出し、社会的インパクトの最大化に貢献する なし | Eisai Value Creation Report p.46 |
人件費投入1割増による5年後のPBR向上率 | 2025年 | 13.8 % | Eisai Value Creation Report p.56 |
女性管理職比率1割改善による7年後のPBR向上率 | 2025年 | 2.4 % | Eisai Value Creation Report p.56 |
育児短時間勤務利用者1割増による9年後のPBR向上率 | 2025年 | 3.3 % | Eisai Value Creation Report p.56 |
2025年度目標:多様性確保に向けた女性活躍の推進 | 2025年 | 15 % | Eisai Value Creation Report p.25 |
女性取締役比率の目標 | 2025年 | 30 % | Eisai Value Creation Report p.66 |
2025年度目標:社員のエンゲージメントの向上 | 2025年 | 90以上 % | Eisai Value Creation Report p.25 |
なでしこ銘柄2025 | 2025年 | 選定 なし | Eisai Value Creation Report p.74 |
健康経営銘柄2025 | 2025年 | 選定 なし | Eisai Value Creation Report p.74 |
hhc理念に共感した社員の割合 (2024年度) | 2025年 | 95 % | Eisai Value Creation Report p.8 |
企業のガバナンス体制の形態 | 2025年 | 指名委員会等設置会社 なし | Eisai Value Creation Report p.61 |
ガバナンス体制の基本構造 | 2025年 | 経営の監督と業務執行の明確な分離 なし | Eisai Value Creation Report p.60 |
取締役会の構成(2025年6月18日現在) | 2025年 | 11 人 | Eisai Value Creation Report p.60 |
取締役会議長の選定方針 | 2024年 | 社外取締役より選定 なし | Eisai Value Creation Report 2024 p.64 |
指名委員会の構成(2025年6月18日現在) | 2025年 | 3 人 | Eisai Value Creation Report p.60 |
報酬委員会の構成 | 2025年 | 100 % | Eisai Value Creation Report p.63 |
現CEOの経営トップとしての在任期間 | 2024年 | 30年以上 年 | Eisai Value Creation Report 2024 p.68 |
hhcガバナンス委員会の構成(2025年6月18日現在) | 2025年 | 7 人 | Eisai Value Creation Report p.60 |
サクセッションプランの情報共有頻度 | 2025年 | 2 回 | Eisai Value Creation Report p.63 |
サクセッションプランに関する累計議論回数 | 2025年 | 16 回 | Eisai Value Creation Report p.66 |
サクセッションプランにおける外部評価の活用状況 | 2024年 | 社外の第三者(複数)による候補者の客観的評価のヒアリングとディスカッションを実施 該当なし | Eisai Value Creation Report 2024 p.68 |
認知症領域における脅威:薬価引き下げ圧力 | 2025年 | 各政府の薬剤費削減策の推進に伴う薬価引き下げ圧力の高まり なし | Eisai Value Creation Report p.27 |
2023年4月のクラウドプラットフォームへの不正アクセス | 2024年 | 発生 なし | Eisai Value Creation Report 2024 p.72 |
2023年6月のランサムウェア被害の発生 | 2024年 | 発生 なし | Eisai Value Creation Report 2024 p.72 |
リスクテイクに関する設問別スコア | 2024年 | 78 ポイント | Eisai Value Creation Report 2024 p.51 |
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